大地〈第1巻〉 (1953年) (新潮文庫)

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  • 「大地(一)」パール・バック著・新居格訳、新潮文庫、1953.12.28
    374p ¥440 C0197 (2018.10.15読了)(2018.10.04借入)(1991.02.15/69刷)
    以下は読書メモです。

    読み始めました。
    中国の清の時代の物語のようです。歴史の本を読んでもその頃の人々の暮らしはどのようなものかはわかりませんが、小説ならよくわかります。
    主人公は、大地主から土地を借りて農業を営んでいる父親と息子です。父親は年老いて、息子が家事も畑もやっています。お金がないので、普通の家からの嫁取りは出来ないので、地主の家の奴隷を一人貰い受けることにしました。婿の名前は、王龍、嫁となる女の名前は、阿蘭です。
    王龍の父親が、地主の黄家に頼んで、美人でない年頃の奴隷を、と頼んで、貰えるようになった。
    どのような女かは、もらい受けに行って会うまではまったくわかりませんでした。会ってみると、美人でも不細工(アバタとみつくち)でもない、地味で無口な女でした。連れて来た日は、親戚を数人呼んで祝いました。
    王龍は家事をしなくてもよくなりました。阿蘭は口数は少ないけれど、何も考えていないわけではありませんでした。
    家の中ですることがなくなると、王龍と一緒に畑で働くようになりました。子供ができたけれども、産むときには、自分ですべての処理をしてしまいます。黄家にいる間に色々学んできたのでしょう。
    王龍も博打はせず、堅実に生活しています。少し生活にゆとりが出てきたようです。
    4節まで読みました。

    18節まで読みました。半分ぐらいです。
    王龍が結婚して男の子が二人、女の子が一人生まれ、生活も順調だったのですが、4年目に旱魃がやってきました。食べ物がなくなって、日に日に餓えてゆく場面では、読み進むのがしんどくて、止めたくなってしまいました。土を食う状態にまでなってきました。餓死寸前のところで、土地を買いに来た男たちに家財を買ってもらって、家族で南に行くことにしました。
    南に下る途中で、列車があることがわかり、列車に初めて乗りました。列車の中で情報を集め、南の町についたところで、蓆を買って住むところを作り、公営食堂で安く食事を提供してもらいました。慈善家が食べ物を提供してくれているのだそうです。日々の暮らしは、奥さんと子供が街角で物乞いすることと、王龍が人力車を借りて日銭を稼ぐことで何とかしのぎます。お金がたまるわけではないので、帰るめどはありません。
    富裕層に対する反発をあおる人たちが出てきて、暴動が起こり? 富裕な家に人々がなだれ込んで、略奪を始めたどさくさで王龍は、まとまったお金を手にして、故郷に帰還できました。帰る途中で、畑や田んぼに蒔く種や農機具、農耕を助ける牛などを手に入れました。留守にしているうちに家は荒らされていましたが、応急処置をして、農作業を開始しました。年々雇人を増やし順調に豊かになっています。
    でも豊かさによる危機が…。

    読み終わりました。話の展開が極端に動いて、漫画並みに面白い!なぜ今まで読まなかったのだろうと、…。
    王龍は、文字の読み書きができないので、取引のときに肩身の狭い思いをしてきました。そこで、長男と次男を学校に行かせることにしました。寺子屋的な感じです。
    王龍が住んでいるあたりを今度は洪水が襲ってきました。自宅は小高いところにあるので、水没はまぬかれました。
    農地は、水没したのでやることがありません。
    やることがないので、茶館へいって、お茶を飲んで時を過ごしたりしています。そのうち、二階で女と遊べることを覚え、溺れていきます。そのうち身請けすることにしました。お金に糸目もつけず、いくらでもつぎ込んでいます。このままでは身の破滅、と思っていたら、水が引いた畑を見て、夢から覚めたように猛然と働きだしました。話の展開に感心させられます。
    長男は学者に、次男は商人に、三男は百姓にと予定していたのですが、長男・次男はほぼ予定通りに行きましたが、三男はうまくゆきませんでした。三男も学校へ行きたがったので、行かせました。その後、軍人になると言って家を飛び出してしまいました。
    3番目に生まれた子供は女の子で、障害児でした。大きくなっても唯にこにこしているだけです。王龍が、ずっと自分で面倒を見ています。4番目の子は、飢饉のときに生まれたので、阿蘭が自分で処置してしまったようです。王龍には、死んで生まれたと言っていますが。5番目が二卵性双生児で、三男と次女です。次女は、商人に嫁がせました。
    父親と妻と土地の管理を任せていた陳さん(事故死)が相次いで亡くなりました。自分も年老いてゆきます。自分の棺を用意してもらって、というあたりで終わっています。

    中国の農民は、旱魃、洪水、イナゴ、匪賊、と多くのものに苦しめられながら生きてきたんですね。王龍は、旱魃・洪水には、食糧やお金のたくわえで対処します。イナゴには、被害を最小限にできるように対応します。叔父が匪賊の仲間だったので、叔父のわがままを許しておけば、安全でした。最終的には、阿片を与えて無害にしました。阿片は高価でしたが、入手できます。
    物語では、あまり人名が出てきません。王龍の子供たちは、長男、次男、三男、長女は白痴の娘、次女は、二番目の娘、という感じで、名前が出てくることはありません。叔父・叔母・父親、等も名前が出てきません。戸籍制度みたいなのはなかったのでしょう。

    【目次】(なし)
    第一部 大地
    一~三十四

    王龍、阿蘭、黄家の女奴隷・杜鵑、兄・農恩、弟・農温(176頁)、蓮華、梨花、
    女奴隷、纏足、匪賊、辮髪、長衫(ツアンスアン)、褲子(クーツ)、後房、阿片、陰陽師、道教、道士、仏教、僧侶、殻竿、
    ☆誤植
    241頁、後ろから2行目、 匪族⇒匪賊
    ●土(37頁)
    時が来れば、彼らの家も、彼らの肉体もまた、土に帰る。すべてのものがこの土の上に生まれ、順を追って土に帰る。
    ●土を食べる(92頁)
    畑の土を掘ってきて子供らには食べさせたが、彼自身は食べる気がしなかった。この土を水にとかして、彼らは幾日かの間食べていた。―それは多少の栄養分があって≪観世音菩薩の土≫と呼ばれていた。
    ●神様(98頁)
    金持ちなんてやつの心は、神様の心と同じで、むごいもんだぜ。
    ●安徽と江蘇(115頁)
    王龍が生まれた安徽では、言葉が遅く、重く、喉から出てくるが、彼らが今住んでいる江蘇の都では、唇で―舌の尖端で、言葉をころがしている。
    ●纏足(261頁)
    纏足しないと、お嫁に行ったとき、かわいがられなくなるって言うんですもの
    ●結婚の儀式(276頁)
    熱くした酒を二つの杯へ入れてきた。二人はまず別々に口をつけてから、その酒を一つにして、また飲んだ―彼らが一体になったという意味だ。彼らはさらに御飯を食べ、それを一つにまぜてから、また食べた―彼らの生命が、一つになったという意味だ。これで儀式は終わった。
    ●阿蘭の誇り(278頁)
    「わたしは、みにくいでしょう。だけど、息子を生みましたよ。昔は奴隷でしたが、この家へ立派なあととりを残しましたよ」
    ●県知事(284頁)
    堤防がくずれた。それを知ると、人々は修築する費用を集めに、諸所方々をかけずりまわった。みんな、ぶんに応じた寄付をした。彼らは、その金を県知事へ託して、工事をすることにした。彼(県知事)としては、職権を利用して一家のために利益をむさぼる必要があった。彼は、約束どおりに、くずれた堤防を直さなかった。河は、さらに氾濫した。
    ●家庭の平和(296頁)
    王龍には、平和が味わえなかった。長男には嫁をあてがい、みんなの用をたすためには、十分に奴隷を買い、叔父夫婦には享楽するだけの阿片を与えているのだが、家庭には平和がないのだ。それは、叔父の息子と、彼の長男とが仲が悪いからだった。
    ●好鉄不打釘、好人不当兵(350頁)
    「昔から、好鉄、釘を打たず、好人、兵に当たらず、と言っているじゃないか」
    (釘にするのは屑鉄、兵隊になるのは人間のクズ)

    ☆関連図書(既読)
    「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    「日清戦争-東アジア近代史の転換点-」藤村道生著、岩波新書、1973.12.20
    「日清・日露戦争」原田敬一著、岩波新書、2007.02.20
    「李鴻章」岡本隆司著、岩波新書、2011.11.18
    「孫文」深町英夫著、岩波新書、2016.07.20
    「宋姉妹」伊藤純・伊藤真著、角川文庫、1998.11.25
    「中国の歴史(12) 清朝二百余年」陳舜臣著、平凡社、1982.12.15
    「中国の歴史(13) 斜陽と黎明」陳舜臣著、平凡社、1983.03.07
    「中国の歴史(14) 中華の躍進」陳舜臣著、平凡社、
    「世界の歴史(9) 最後の東洋的社会」田村実造著、中公文庫、1975.03.10
    (2018年10月16日・記)
    (表紙より)
    19世紀後半から20世紀初頭にかけて古い中国が新しい国家へ生まれ変わろうとする激動の時代に、大地に生きた王家三大の年代記。貧しく、わずかばかりの土地を大地主の黄家から借りて耕す王龍は、黄家の奴隷の阿蘭を嫁にもらうことになった。働き者の阿蘭を得たことがきっかけとなって王龍の運が上向き、子宝にも恵まれて多くの土地を手に入れ、ついには黄家の土地も買収してしまう。
    内容紹介(amazon)
    十九世紀から二十世紀にかけて、古い中国が新しい国家へ生れ変ろうとする激動の時代に、大地に生きた王家三代にわたる人々の年代記。

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著者プロフィール

(Pearl Sydenstricker Buck)
1892-1973。アメリカの作家。ウェスト・ヴァージニアに生まれる。生後まもなく宣教師の両親に連れられて中国に渡り、アメリカの大学で教育を受けるため一時帰国したほかは長く中国に滞在し、その体験を通して、女性あるいは母親としての目から人々と生活に深い理解をもって多くの作品を発表した。1932年に『大地』でピュリッツァー賞を、38年にはノーベル文学賞を受賞。また1941年に東西協会設立、48年にウェルカム・ハウスの開設と運営に尽力するなど、人類はみな同胞と願う博愛にみちた平和運動家としても活躍した。

「2013年 『母よ嘆くなかれ 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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