クォヴァディス〈中〉―ネロの時代の物語 (1954年) (岩波文庫)

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  • (2016.10.31読了)(2016.10.27拝借)(1977.08.10・第26刷)
    副題「ネロの時代の物語」
    中巻も第一章からはじまっているので原本も三分冊になっているものと思われます。第二十一章まであります。
    かみさんの本棚にあるのを拝借して読んでいるのですが、上巻は読んだ形跡があるのですが、中巻下巻はきれいで読んだ形跡がないのでどうやら上巻でギブアップしたようです。
    上巻もそうでしたが、中巻も読み進むのが大変で1日50頁ぐらいのペースでしか読めません。面白くないわけではないのですが、何故か時間がかかります。登場人物が上巻からさほど増えてはいないので、慣れてきたはずではあるのですが。
    使徒ペテロのほかにパウロも出てきて、キリストの奇跡や教えなどを説いています。キリスト教徒のよく読む本なのでしょうか、漫画版も出ています。活字版で読むのが苦手な方は、漫画版がいいかもしれません。
    「クォ・ヴァディス1」藍真理人著・シェンキェヴィチ原作、女子パウロ会
    「クォ・ヴァディス2」藍真理人著・シェンキェヴィチ原作、女子パウロ会
    「クォ・ヴァディス3」藍真理人著・シェンキェヴィチ原作、女子パウロ会

    リギアを奪い取るためにリギアたちの隠れ家に踏み込んだヴィニキウスは、リギアの護衛ウルススに深手を負わされてしまいます。そのヴィニキウスは、リギアに手厚く看護され、回復してゆきます。キリストの教えに影響されてゆくヴィニキウスにリギアの心惹かれてゆきます。リギアは、神への愛を優先するために、男への個人的愛を恥じてヴィニキウスの前から姿を消してしまいます。
    傷がいえたヴィニキウスは自宅へ戻りますが、主のいない自宅では、奴隷たちが勝手気ままに過ごしていました。ヴィニキウスはいったんは怒って使用人の奴隷たちを震え上がらせますが、キリストの教えを思い出し寛容に納めます。
    使徒パウロがあいだに立ち、リギアはヴィニキウスと幸せな結婚へと向かうはずだったのですが、皇帝ネロの詩作のために街の大火事を目の当たりにした迫力のある描写が欲しいと、ローマの街を焼いてしまいます。
    ヴィニキウスは、リギアの安否を確かめるために燃え盛るローマの街へ飛び込んでゆきます。リギアは無事だったのでしょうか。

    ●怒りを(35頁)
    私たちはクリスト教徒です。心に怒を持つのを許されていません。
    ●差異の除去(64頁)
    ローマの平和とローマの支配は善いものであり、人間の区別は正当であって正義に敵っている。にも拘らずこの教は、ヴィニキウスの理解する限り、あらゆる秩序あらゆる支配を破壊してあらゆる差異を除去しなければならないであろう。そうなれば少なくともローマの威力と支配はどうなってしまうか。ローマ人が支配を放棄したり、従属している幾多の民族を自分たちと平等に考えたりする事ができようか。
    ●ローマの終り(81頁)
    私には、あの人々の教が始まる場所に、ローマの支配は終り、ローマは終り、生活は終り、敗けたものと勝ったもの、力のあるものと貧しいもの、主人と奴隷の区別も終り、官職も終り、皇帝も法律も世界の全秩序も終わって、そのすべての代わりにクリストと、それまでなかったような愛と、人間的な又我々ローマ人の本能に反するような善意が到来するということはわかります。
    ●愛に罪はない(149頁)
    主の中に且つ主の栄の上に愛し合いなさい。あなた方の愛には罪はないのだから。
    ●都の炎上(189頁)
    皇帝自身がトロヤ滅亡の自作の詩を読んで、自分は一度も焼けている都を見たことがないと云ったのです。プリアモスを羨ましがり、それを幸福な人間だと呼んだのは、特にあの王が父祖の都の炎上と壊滅を見ることができたからだというのです。
    ●世界を支配するもの(195頁)
    世界を支配するのが噓ではなく真理であり、憎しみでなくて愛であり、罪でなくて善であり、不信でなくて信仰であり、復讐でなく憐みであることを私が欲しないとすれば、私はどういう人間だということになるだろう。
    ●三百年したら(197頁)
    二百年か三百年したら世界全体がこれを受容れるだろう。人々はユピテルを忘れ、他の神々もいなくなってクリストだけになり、他の神殿はなくなってクリスト教の教会だけになるだろう。
    ●火(209頁)
    火が無かったとすればアイスキュロスはその作の「プロメテウス」を書かなかったでしょうし、同様に戦争がなかったとすればホメロスは「イリアス」を書かなかったでしょう。

    ☆関連図書(既読)
    「クォヴァディス(上)」シェンキェヴィチ著・河野与一訳、岩波文庫、1954.03.05
    「ネロ」秀村欣二著、中公新書、1967.10.25
    「神の旅人 パウロの道を行く」森本哲郎著、新潮社、1988.05.20
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「新約聖書福音書」塚本虎二訳、岩波文庫、1963.09.16
    「新約聖書入門」三浦綾子著、光文社文庫、1984.11.20
    「新約聖書を知っていますか」阿刀田高著、新潮文庫、1996.12.01
    「イエスの生涯」モーリヤック著・杉捷夫薬、新潮文庫、1952.10.
    「イエス・キリストの生涯」三浦綾子著、講談社文庫、1987.11.15
    「ナツェラットの男」山浦玄嗣著、ぷねうま舎、2013.07.24
    「死海のほとり」遠藤周作著、新潮社、1973.06.25
    「イエスの生涯」遠藤周作著、新潮社、1973.10.15
    「キリストの誕生」遠藤周作著、新潮社、1978.09.25
    「イエス巡礼」遠藤周作著、文春文庫、1995.12.10
    (2016年11月2日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    傷ついたウィニキウスを一心に看護するリギア。神への愛に身を捧げる人たちの中にあって、それぞれの心に重大な変化が芽生え、やがて幸福の予感が二人を包む。しかし、ネロの気紛れからローマの街は一面の火の海にのみこまれることに…。
    (本の帯より)
    名だたる暴君ネロの下に旧文化の保持者として廷臣ペトロニウス、新宗教の開拓者として使徒ペテロとパウロを点出した大時代の絵巻。

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