世界の名著〈第38〉ベンサム,J.S.ミル (1967年)

  • 中央公論社 (1967年発売)
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世界の名著〈第38〉ベンサム,J.S.ミル (1967年)の感想・レビュー・書評

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  • 自然権論などの現状肯定的理論に批判的立場から、ベンサムは本書で、快楽が正であり苦痛が悪であるという「快楽主義」に基づき、一人でも多くの人々の快楽を最大化する「最大多数の最大幸福」の原理、すなわち、功利主義こそ、立法者の従う唯一の原則であると説いている。

    ベンサムは、まず功利性の原理を説明している。第1章によれば、人間を支配しているのは、快楽と苦痛であり、人間のこれらへの従属を承認した上でその従属を思想体系の基礎と考えるのが功利性の原理である。この原理は、利害当事者の利益(快楽・幸福)を増大させるか、あるいは減少させると見える傾向によって、すべての行動を是認ないし否認する原理である。社会の利益とは、個々の構成員の利益の総計であり、また、個人の利益を理解せずに社会の利益を理解することはできない。第2章では、功利性の原理に反すると考えられている原理(禁欲主義・共感と反感の原理・神学的な原理)が退けられている。

    第3章によれば、快楽と苦痛の源泉には、物理的・政治的・道徳的・宗教的源泉があり、行為に拘束力を与える場合、それは制裁と呼ばれる。立法者は、快楽と苦痛の価値や種類を知らねばならない。第4章によれば、それらの価値は、個人の場合、強さ、持続性、確実性、遠近性という四つの事情に応じてより大きく、あるいは、より小さくなる(一定数の人々の場合、これに多産性と純粋性の事情が加わる)。第5章は、感覚、富、熟練、親睦、名声、権力など、人間が感じる快楽の目録を示している(苦痛には、欠乏、感覚、不器用、敵意、悪名などがある)。第6章によれば、快苦の量は、その原因に全面的に依存するわけではなく、ある程度その他の諸「事情」に依存する。そのため、例えば、健康、知識量、精神の強さ、性別、年齢、教育などの事情が検討されている。

    さらにベンサムは第7章で、「行為」それ自体と、行為に伴う諸事情を分類し、第8章では「意図」を同様に諸事情との関連で分類している。第9章では、「意識」(知性・認識能力)が果たす役割を考察している。第10章によれば、「動機」とは、ある形で作用する快楽や苦痛であり、動機には、それ自体として善や悪であるようなものは存在しない。動機の善悪は、その結果に基づいた判断である。快楽に対応する動機には、味覚、性的欲望、好奇心、金銭的関心、親睦、名声などがある。〔第11章以降は、訳者による要約がある〕

    本書の実践的な目的は、このように新しい道徳論に立脚しながら、特に犯罪に対する制裁の網の目を整備することで立法者が社会全般の利益を目指すことだったのであろう。快楽・事情・行為・意図に関する叙述は、細微にまで至り、ベンサムが自覚しているように無味乾燥とも言えるが、人間分析としてはそれなりに面白い。少なくとも本人は、喜々として取り組んだのではないかろうか。

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