抒情的人生処方詩集 (1952年)

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  • 【続・人生処方箋】
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    怠惰の魔力

    早朝 湯槽の中でそれは始まる
    坐ったまま もう金輪際立ち上がる気がしない
    栓をひねって湯をとめるのも億劫
    体を流さなければならないのに ピチャピチャやるばかり
    湯が高くなる 自分の足指を見つめる
    まるでプラトン的真相を発見したかのように
    しかし それはああやまり 足指は普通よりいくらか大きいだけ

    まるで薔薇の香りをかいでいるように にっこりとほほえむ 
    そしてほほえめることに びっくりしている
    なにしろ なまけものなのだから でも ほほえんだからといって 体が擦りへるわけではない

    ああ 理性はそれでもまだズボン下をはいている!
    力も 頭も 全人格も
    旅行中だ いつまでだか 誰も知らない
    坐ったまま 自分を失業者のひとりに数えている

    食べているときも歩いている時も ねそべっていたり眠っていたり
    街をぶらつき 愚にもつかない一行を口ずさみ
    公園で菫とたわむれる
    まるで風っ栓のようにふわふわと吹き流されていく
    要請からの便りをこなごなにちぎって
    中になげすてて しばらく待っている
    風にはせめて その内容が分るのではないかと

    人間はこんなにも怠惰! しかも やることは山ほどある
    そして時計は周囲のポケットというポケットの中でカチカチ鳴っている
    ・・・(略)

    ・略歴

    ・大げさな言葉ぬきの悲歌

    ・鏡の中の心臓

    ・天才
    未来へ飛躍する人間は
    破滅する
    飛躍が成功しようが しまいが
    飛躍する人間は
    悲惨な目にあう

    ・レッシング
    彼は独立不覇で戦った
    時代に窓をひらいた
    独立不覇で度胸があることほど
    こわいものはこの世にない

    ・不信任投票
    ぼくらに信頼しろだって?
    ああ やはり御免だ!

    ・全面的に秋
    人は本当にただ
    歳月のように過ぎ行くためにのみ生まれてきたのだろうか?

    恋は昔がたり!

    ・気象のもやもや

    ・日曜日のささやかな説教
    ああ たいていの人間は
    無為になれない
    退屈は彼らを盲目にする
    するとそのようなことが起こるのだ

    もしも彼らが
    義務もない 目的もない 苦しみもない天国で暮らすことになったら
    最初のできごとはおそらく
    おたがいみな殺すことだろう

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