シラノ・ド・ベルジュラック (1951年) (岩波文庫)

  • 1951年7月5日発売
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  • ロマンチスト。芥川の内供。英雄。「哲学者たり、理学者たり、/詩人、剣客、音楽家、/はた天界の旅行者たり、/打てば響く毒舌の名人、/さてはまた心なき――恋愛の殉教者――/エルキュール・サヴィニャン・/ド・シラノ・ド・ベルジュラックここに眠る、/彼は全てなりき、而して亦空なりき」
    道化。「俺の生涯は人に糧を与えて――自らは忘れられる生涯なのだ」しかし、その弱点こそ彼を高貴たらしめている所以でもある。
    3幕7場は「ロミオとジュリエット」の2幕2場に比肩しうる。ラストは、彼の不羈がよく現れていて強い。
    難点は二点。
    1.甘ったるすぎるか。ミュッセの「戯れに恋はすまじ」と読後感が似ている。何作も続けて読むのは「甘いものほどとりすぎるとすぐに飽きが来る、/そして胸が悪くなるほど見るのも嫌になる」だろう。だが、「十九世紀におけるロマンティシズムに対する嫌悪は、鏡に自分の顔が映ってないといって怒るキャリバンそのままである」と考えれば納得できる。それにところどころに感じられる(あくまでロマン主義の枠内だが)アンニュイは、スパイシーであり、この作品が世紀末の作品であることも示唆していると思う。
    2.1幕が難ありだろう。まず、人物が多すぎる。せめて、冒頭の「人物」で、登場人物の役割くらいは付しておいて欲しい。相関の把握にさえ手間どる。そして、動きに欠ける。戯曲においては、致命的。人物が躍動してこその演劇である。そんなわけで1幕はシラノの舞台の場を除いて改変するか、いっそなくてもいいのでは。

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著者プロフィール

エドモン・ウジェーヌ・アレクシ・ロスタン(Edmond Eugène Alexis Rostand)
1868年4月1日 - 1918年12月2日
詩人・劇作家。マルセイユに生まれる。1890年、2歳年長の詩人ロズモンド・ジェラールと結婚。そのときの代父はルコント・ド・リール、後見人は、アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)。1891年長男モーリス、1894年に次男ジャンを得るが、モーリス(Maurice)は、後に作家。ジャン(Jean)は、後に生物学者となる(藤田嗣治の作品に『ジャン・ロスタンの肖像』"Portrait de Jean Rostand" がある)。
29歳で書いたコクラン主演の『シラノ・ド・ベルジュラック』が大当たりし、翌年レジオン・ドヌール勲章叙勲。その後、『鷲の皇子』(サラ・ベルナール主演)で再び大成功を収め、わずか33歳でアカデミー・フランセーズに選出される。第一次世界大戦で従軍を志願したが健康上の理由でかなわず、地方の前線を視察後戻ったパリでスペイン風邪をこじらせ逝去。

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