母たちの村

監督 : ウスマン・センベーヌ 
出演 : ファトゥマタ・クリバリ  マイムナ・エレーヌ・ジャラ  サリマタ・トラオレ 
  • エスピーオー
3.75
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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4988131907084

感想・レビュー・書評

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  • 偉大な小説家にして、アフリカ映画の始祖、センベーヌ・ウスマン監督が描く、深刻な問題に美しい映像で迫った名作。

    アフリカの監督が描くアフリカの社会問題、これ以上の本物は無いだろう。

    色彩感豊かな映像美に魅せられてしまうが、本編はもの凄く深刻な内容を持続的な緊張感の元に表現しきっている。実に素晴らし過ぎる。

    アフリカの一部の国々で今なお「女性器切除」という重大な人権侵害が風習として続けられている。これは医師の手で行われようが何だろうが、女性から性の喜びを奪うものであり、女性の人間の尊厳に対する冒涜であり、最悪の性的虐待/児童虐待である。多くの場合、医師では無い「割礼師」によって行われるそれは出血多量による死すらもたらす。
    死なずに済んでも、女性にとって夫婦生活は苦痛でしかなくなり、出産にも大きな障害を引き起こす。
    どういう事かと率直に述べると、男性の陰茎に当たる女性の陰核を切除し、膣口を経血を輩出する小さな穴を残して閉塞するのである。
    男性も陰茎を切除され性の喜びを奪れたらどうなのかと考えを巡らせるべきである。
    今日のMTFの性別適合手術に於いても陰茎は切除されず、陰核にされる。

    本編はこの問題を告発し、これに抵抗する女性達を描いている非常に重厚な映画だ。しかしまた、封建的な家父長制と男尊女卑がまかり通る村だが、そこに暮らす人々やその文化には敬意が貫かれている。

    「女性器切除」を恐れた幼い少女4人が、本編主人公となる、ある家庭の第三夫人に助けを求める。彼女達の中には姉をこれで亡くした人もいるなど、彼女達は幼いながらにその恐ろしい実態を知っていたのだ。この奥さんは自分の娘を「女性器切除」から守り抜いた実績があったのだ。そしてこの第三夫人が「お姉さん」と慕う第一夫人もまた、腹が座っていて良い。

    第三夫人は利口で迷信を巧みに利用し、自宅に「結界」を貼って「割礼師」の侵入を防ぐ。
    それでも、少女4人のうち一人は拉致され、「女性器切除」の犠牲となり亡くなってしまうが、村の女性達に「女性器切除」反対の声が広まる。

    村長はじめ村の封建的な男達は女性達の知識の源であるラジオやラジカセを女性達から取り上げ、焼き払う。

    「国連平和維持部隊」に従軍し、上官たちによる給料のピンハネと闘ってそこを除隊させられた雑貨屋さんは男性で初めて、女性達の側に立つ。更に彼は「幼児婚」に反対する明確な意見も持っていた。

    この雑貨屋さんはまるでイージーライダーの青年法律家の様に、村長の指示で村人に虐殺されてしまう。
    しかし、最後には兄の命令で主人公である、第三夫人を鞭で打っていた旦那さんも、フランス帰りの村長の長男も女性達の側に立つ。

    虐殺された雑貨屋さんも、フランスで働いていた村長の長男も広い世界を知っていたのだ。

    「本編は『女性器切除』をイスラム教と結びつけてイスラム教への偏見を助長している」という意味の事を言う人が居るようだが、その人は本編を見ていない筈だ。本編では繰り返し「こんな事はイスラム教の教えには昔から無い」とハッキリ言っている。

    特典映像も是非ご覧いただきたい。この問題を扱う日本の女性団体の専門家のお話が伺える。
    詳細は書かないが「女性器切除」を「女子割礼」と文字表現するのは事実を覆い隠す事になると言う事。
    男児に対してしばしば行われる「割礼」とは全く異なり、女性の性機能の根幹部分を喪失させてしまうからだ。こんな恐ろしい事が21世紀の今日まだ続いている。

    また本件を遠い外国の物語として良い訳でも無い。つい最近まで、日本でも、旧優生保護法により、障がいのある方々やハンセン氏病患者の方々に「強制不妊手術」が行われていたではないか。また戸籍上の「性別変更に生殖能力の喪失」が求められて来た。これもまた最悪の人権侵害、性的虐待であった。こうした事柄に同じ文脈が読み取れるのだ。

    アメリカではFTM男性が女性器も温存し、シスジェンダー・ゲイの男性との同性婚を行い、遺伝的繋がりのあるお子さんを設けている例もあるのだ。

    本編は

    「どんな人権侵害にも、あなたがたとえ最初の一人でも、勇気をもって、No!と声を挙げるべきだ。」

    と言っているのだ。本編は世界中の理性と良心を励ましている。

    是非とも、再プレス重版をお願いしたい。

  • 泉荒巻東

  • 西アフリカの小さな村。
    カラッと晴れた空、日焼けした地面、色とりどりの着物、いつもきれいに掃除された村。なんだか白昼夢のような世界です。
    この村で、女性器切除の風習廃止のため、村人たちと闘うひとりの母のお話です。

    お清めと称して幼女のクリトリス、大陰唇、小陰唇を切除したり縫い付ける儀式…。
    アフリカ連合54ヶ国中、38ヶ国で今も行われる、2000年以上続く伝統だそうです。これで死ぬこともあるし、SEXの都度大変痛いようです。女性の奔放なSEXを封じるためでしょうか。

    母コレはラジオで他国の女性は割礼していないことを知りました。
    コレは儀式から逃げてきた少女たちを匿う決意をします。
    男たちは総ての女性からラジオを取り上げました。
    見せしめとして村人たちが見守る中、コレは夫に鞭打たれ、夫婦泣きながら耐えます。
    鞭打を止めさせた傭兵さんはその夜村人たちにリンチされ殺されます。
    狭いコミュニティの風習を否定すれば村八分か殺されるのです。
    そして無知な母親に無理やり割礼に連れてかれた少女がまたひとり死にました。
    尊厳と誇りをかけたコレの闘いに、やがて村の母親達が賛同し、何かが変わるという明るい予感の中、映画が終わります。

    カラッと晴れた大地と、終わりの無い陰湿な風習に苦しむ女性の対比が、諦めに似た苦しさで胸に迫りました。

    美しい大地と人間賛歌、変われるんだという明るい予感で映画が終わって良かったです。
    〔080824鑑賞〕

  • 見ていてつらい・・・
    それが続くが最後は勝利する。
    突き抜ける。

    流れは変わる。
    変わりようのない歴史が変わった。

    ひとりの人の叫び、たくさんの命の犠牲があって歴史が変わった。

  • アフリカ映画。女子割礼という深いテーマの作品。母親の強さは当然見どころなのだが、異文化を持ち込んだ男性の存在も大きい。やはり古い慣習を壊すのは、「異」なのだと思う。

  • 解説:

    アフリカの各地に今も残る女性の割礼(性器切除)という因習を巡ってとある村で巻き起こる騒動を通して、アフリカ社会が抱える問題を浮き彫りにしたヒューマン・ドラマ。

    監督は「チェド」のウスマン・センベーヌ。

    西アフリカのとある村。

    ある日、この村の女性コレのもとに4人の少女が逃げ込んできた。

    彼女たちはこの村に古くから伝わる割礼を拒否し、コレに保護を求めたのだった。

    自身も割礼の後遺症に苦しんできたコレは、少女たちを保護すると決心する。

    しかし、伝統に真っ向から逆らうコレの行動は男たちを困惑させ、村に大混乱を引き起こしてしまう…。

  • やっぱり伝統を変えようとするのは難しいな。

  • FGM(女児の割礼)についての作品。アフリカや中東地域の多くの国で未だ行われている伝統的/宗教的儀式。

    しかし、それは女性の健康をより危険なめに晒すことなり、出血が止まらないせいで命を落とす少女も多くいる。(映画でもあったように)
    そして成長した後も、セックスの際に激しい痛みを伴う。(これも映画であった)

    割礼を施されることが、結婚のための条件。割礼を受けていない女性は社会から差別される。

    社会を変えるなんて、やはり容易ではない。むしろ、不可能に近い。

    だけど、コレのような女性が立ち上がり、内側から変化をもたらさないと始まらない。

    最後に傭兵が、村人に村を追い出されたシーンに恐怖を覚えた。
    あのあと、殺されてしまったのか・・・。

    この一本の映画に、宗教・伝統・差別・男と女など様々な社会要素がぎっしり詰まっていると思います。
    本当に、本当に、観る価値がある映画です。

    この映画を観る前に、割礼についての一般知識を予習しておいた方が
    映画が楽しめると思います。

  • 女子割礼について描かれた映画。
    伝統に立ち向かう女性の姿が印象的だった。映画の質としては、あまり良くなかったように感じたが、テーマの興味深さを加えて星4つ。

  • 疑うことのできない恐ろしさ。伝統の束縛。
    命を奪うような儀式から逃げ出せない苦しさ。

    変えるべき伝統と、守るべき伝統があるとしたら、
    割礼は間違いなく前者だと、私は思うのだけれど。

    希望の見出せる終わり方が唯一の救い。

  • 女性割礼に向かい合い、かつ、地域の持つ寛容な伝統も描く、考えさせられる映画です。
    個人ブログに書いています。
    http://gceiga.blog11.fc2.com/blog-entry-2.html

  • 社会に当然のこととして染みついている慣習。それを、その社会の中の人が声をあげて変えていくこと、きっと本当に困難なことなのだろうと思う。この映画に出てくる母たちを尊敬します。

  • この映画のテーマは、女性の割礼です。

    西アフリカのある村に住むコレおばさんのもとに
    突然、4人の少女が逃げ込み、訴えながら彼女の足にしがみつく。
    少女は割礼を嫌がり、モーラーデ(保護)を求め逃げてきたのです。

    モーラーデーとは家の入口に縄を引くことで、そこに逃げ込めば
    何人の力も、法の力も及ばない避難所という意味。

    コレおばさんは、村全体を敵に回すことだと分かりながら、
    少女を引き受け、最後まで守り通した。

    そして周囲の女性もコレの考えに賛同していく。。。




    現在は割礼=宗教儀式のようなイメージを持たせるのではなく、
    FGM(female genital mutilation・女子性器切除)と呼びなおすことで、
    その暴力性を指摘し、廃絶の必要性を訴えています。


    歴史は、2千年前・・・4千年前エジプトから伝わる慣習で
    アフリカ、中近東、アジアの一部などで行われています。
    主に生後1週間から初潮前の少女に施術されている。。。



    FGM(女子性器切除)には、主に3種類あります。


    1.クリトリデクトミー : クリトリスに傷をつけるまたは、切り抜く、切り取る。

    2.エクシジョン : 1に加えて小陰唇を削ぎ取る。

    3.陰部封鎖 : 1と2に加えて大陰唇外を切り開き縫合し、尿と月経のための小さな穴を開ける。

    1は少なく、2が一番多くされています。3は、FGM全体の15%程度だが、
    スーダン、ソマリア、ジブチなどの国では8〜9割がこの形態。



    映画でも清潔でない小さな刀で麻酔もなくされている。

    死に至ることもあり、尿道の閉塞、不妊、分娩ができなくなるような
    後遺症も多発する危険な行為。
    映画のシーンでも出てきますが、大人になっても性行為を行うたび
    血が出るほど指をかんでいなとたえられないほどの激痛を伴います。

    しないと結婚ができないから。割礼することで清められるから。
    性感を減じ女性に貞節を守らせる。女性器はけがれたもの。
    という一方的な理由から続いている。




    監督、キャストはもとよりスタッフまでアフリカ勢で作られている。
    主役のコレ・アルド役の女性は、本来のお仕事はテレビ局勤務、
    そして実際にFGMを受けているとのこと。


    「FGMは無害で、女性の貞操を守ってくれるし宗教的価値もある」
    とする人々からの反対は根強く残っている。



    WHOの調査によると
    地球の人口が60億人
    アフリカの人口が8億人
    その半分、4億人が女性。
    その中で1億3千人以上がFGMを受けている。

    今日1日でも世界のどこかで8千人が、

    FGM(女子性器切除)を受けている。




    私たちの感覚からすると到底想像ができない事実だ。

    男性優位社会の中、女性の社会的地位が低く自立が
    認められていないため強制的に従わされている。


    この映画の最後に流れる歌が大変印象的でした。




    女性たちは生命を生む

    女性に敬意をささげよう


    女の子が生まれたら

    ぜひ教育を与えなさい

    立派な花嫁になるために

    ぜひ学校にやりなさい

    昔から言われてきたことがある

    でも割礼のことは書かれていない

    それは書かれていないのだ。


    ------------------------------------------------

    女性の大切な身体、いたわっていますか?我慢してませんか?


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  • 現在でもアフリカ多くの国で行われている、女子割礼(女性性器切除)っていう問題を、私たち外側の目からではなく、当事者目線でとりあげた作品。
    割礼の知識(性器切除はどう行われるか、なぜ行われるのか、なぜ問題なのか)を事前じちょっとつけておくと、なぜこの映画が今、一部のアフリカの地域で見られるべきなのかがわかりやすいかと思います。
    ストーリーは西アフリカの小さな村で、ある日、4人の少女が割礼を嫌がり逃げ出して来るところからはじまります。
    古くからの伝統であり、反対することなど問題外であった割礼を廃止しようと、娘たちの為に立ち上がる母たち。
    前代未聞の動きに、村の男たちは困惑し大混乱となる中、母たちは娘たちのために、未来のために、諦めることなく、闘い続ける―。


    情報は武器ってよくいうけど、情報は部品のひとつでしかない。
    情報を得た上で、選択肢を見出して、その一歩を踏み出す。言うは易し、行うは難し。でも、母は強い。
    当事者にしか、変化はもたらせないね。


    アフリカで生まれた、アフリカの映画です。
    そして識字率の低いアフリカで、一人でも多くに見られるためにと、「アフリカ映画の父」が作った映画です。男性が撮ったってことに、またちょっと意義があるかと思います。
    映像は美しいけど、知らない世界すぎて、まるで舞台のようでした。

  • <割礼>
    宗教の通過儀礼に組み込まれてるけど、ほんとはただのこじつけ。
    「女性は産む機械」の言葉を思い出した。圧倒的な男性優位の社会。
    女に快楽はいらない。苦しんで子を産んで、死なせて苦しむ。それでも続く風習。

    <色>
    なんて美しいアフリカンファブリック!やかんもバケツも鮮やか!

    <ラジオ>
    「なぜ男たちはラジオを取り上げるの?」
    「私らの心を閉じ込めるためさ」
    女たちが世界とつながる唯一の媒体。
    その小さな箱からは抑圧された女たちの安らぎになる様々な情報があふれてくる。
    ラジオがないと眠れない――

  • よかった。説教じみたところもない。うそ臭いところもない。ふたつの現実の間で、人々は悩み、結論を出す。

    独特のリズムで、ストーリーが進む。いろいろなところに面白さが散らばっている。だから飽きない。重過ぎない。

    メディアの負う役割、意味、影響も考えさせられた。

  • アフリカの!しかも、男性監督が!この問題を映像にした事に意義のある作品。世界では、こんな事も現実に起きている。知ってほしい!

  • FGMの実態がよくわかる映画。女性の苦しみと強さが描かれていて、多くの人に見てもらいたい。自分はたまたま日本に生まれたから良いけれど、今日もFGMを受けさせられて死んでいく少女がいるのかと思うと心が痛む。これは伝統・文化の問題ではなく人権侵害の問題だと思った。DVDの特典解説がgood。

  • 女性器切除がしきたりになっている村での出来事を、中世の宗教劇のような構図、豊かな色彩の画面で淡々と綴っていく。貧しい、悲惨としばしば形容されるアフリカの豊かさ、一夫多妻の家族のリアルなありよう、文字を持たない人々の言葉や討論の豊かさ、そして言説が変革する社会。

  • これねー。良い映画だよ。考えさせてくれる映画とか、私に衝撃を与えてくれる映画は良い映画てゆう定義なんだけど、良い映画だったよ。
    割礼=伝統ではあるんだけど、果たしてそれを強要する必要はあるのだろうか?そこで立ち上がるママたち。伝統を重んじた結果娘を死なせてしまう母親。
    重たいけど、見るべき。
    伝統に固執することで可能性を失うことの重さとか恐ろしさがからっと伝わってくる

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