- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988102353537
感想・レビュー・書評
-
アイルランドは日本からは遠い。その歴史の多くも知らない。IRAのテロがニュースになっていたのを知るばかり。長い戦いがその後も続いたのだろう。
映画を観なければ、このような体験はできない。
アイルランドについて少し勉強してみよう。
1920年代というから、およそ100年くらい前。
その頃は、世界中が「ヒトの命は軽い」と思っていた時代なのだろう。
簡単に殺す・・・ということだけでも、現代の自分たちにとって衝撃なのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次世界大戦が始まり、イギリスがアイルランドの懐柔をはかるためにアイルランド自治法案を決議したものの施行が停止され、業を煮やした独立派のアイルランド義勇軍がイースター蜂起を行ったのが1916年、本作品はその第一次世界大戦後の、アイルランドの独立派政党シン・フェイン党がアイルランド共和国の成立を宣言し、それに忠誠を誓った義勇軍の「激動の歴史と運命に引き裂かれる人々の悲劇」が描かれています。
山川出版社の『詳説世界史B』ではこの時期のアイルランドについては「アイルランドは、1922年、北部のアルスターをのぞいてアイルランド自由国として自治領となった。1926年と30年のイギリス帝国会議の決議によって、31年ウェストミンスター憲章が成立し、各自治領はイギリス連邦の一員として、王冠への忠誠のもとに本国と対等の地位をえた。しかし、アイルランドの独立派は37年に王冠への忠誠宣言を廃止し、独自の憲法を定め、エールを国名として事実上連邦を離脱した。」(308頁)と書いています。
もう少し詳しくこのあたりの歴史を述べると、アイルランドは17世紀半ばのクロムウェルによるアイルランド征服以来、イギリス領として支配され続けられました。土地はイギリス人地主に取られ、地味が豊かな土地はイギリス本国用の小麦が植え付けられ、アイルランド人達は小作人として彼らの大農場で働く一方、貧弱な土地でも育つジャガイモを主食として貧しい生活を送っていました。19世紀半ばに発生したジャガイモ飢饉(ジャガイモの疫病が大流行し、ほとんど収穫が上がらなかった)で多くのアイルランド人が餓死・もしくはアメリカへ移民した(この頃のアメリカ移民はドイツに次いで世界第2位)にもかかわらず、小麦は例年通りイギリスに輸出されていたそうです。アイルランド人も自由を目指して活動してきました。1828年の審査法(イギリス国教会信者以外はイギリスの公職に就けない)廃止と翌年のカトリック教徒解放法に尽力したオコンネルは高校世界史でも必ず出てくる項目です。また、自由党のグラッドストンもアイルランド自治法案を議会に提出しています。
1916年のイースター蜂起後、アイルランド義勇軍はゲリラ活動でイギリス軍を悩ませ(本作品で最も多くの時間を割いているくだりにもなります)、1921年のイギリス・アイルランド条約の締結につながりました。しかし講和条約の内容が「アイルランドがイギリス国王に忠誠を誓う連邦にとどまること」「北部アルスター地方は引き続きイギリス本国内にとどまること」など多くのアイルランド人にとって受け入れられませんでした。そしてアイルランドではこの条約を受け入れるかどうかで内戦状態となり、結局はデ・ヴィレラひきいる左派が選挙に勝利し、1937年のイギリス連邦からの離脱へとつながります。
本作品では医者を目指していた主人公デミアン(キリアン・マーフィー)が独立戦争へと身を投じ、多くの犠牲を払いながら勝利したのも束の間、上記の条約を巡り兄と対立をして・・・(以下映画の核心部分となるので省略します)。
本作品を見て、アイルランドの独立過程がよく分かったのもありますが、教科書のほんの数行の出来事(ないしは書かれていない事)は受験生にとっては「重箱の隅をつつくような内容」に思えるかもしれませんが、実は当時を生きていた人にとってものすごく重要なことであるということを改めて感じることができました。このことを忘れては血の通った歴史の授業はできません。映画の作品としても非常に見応えがありましたし、いろんなことで「いい映画」だと思います。 -
環境、立場によって容易に愛する人を殺せる人間。
どんな環境でも変わらない人って、いるのかな。
「あらすじ:アイルランド独立をめぐる人間のいざこざ。カンヌ映画祭パルムドール受賞作品」
http://www.youtube.com/watch?v=HeRdb0G9rSc&feature=player_embedded -
戦争を知らない自分が戦争を語ることは難しい。アイルランドの歴史にも明るくない。だからこそ見る価値のある作品だったように思う。
-
No.46 / 2o11
-
富山などを舞台とした作品です。
-
日本人て、この問題に疎いよね…
私もスペインに留学して色んな友達できるまで、きちんと分かっていなかった。
映画自体は、すごく考えさせられる…というか、なんだろう。
とても一言では言えない。
つらい、けれど観て良かった。 -
GWにみた。
-
アイルランドとイギリスの間にこんな関係があったなんて知らなかった。北アイルランド問題なんかは今でも英国最大の政治問題だとか。ホント20世紀って戦争の世紀だね。
-
2006年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。アイルランド独立戦争の歴史を描いた映画。最初はあまりに政治的、社会問題的な描写の連続に、映画の審査員はこういうのが好きだろうなと思いながら見ていたが、結局3回泣いた。「何故こんな酷い目にあわなければならないのか」と思って、涙が出てくる。歴史に翻弄される個人が描写される。
1921年、アイルランドとイギリスは休戦協定を結ぶ。アイルランドは自由国家としてイギリスから独立するが、イギリス国王に忠誠は誓ったまま、大英帝国領に留まる。IRAの幹部だった兄は、妥協だとしても独立を成果として認める。弟は絶対的自由を手にするまでゲリラ戦を続けると言う。かつては仲間だったアイルランド人同士の殺し合いが始まる。
19世紀の小説は主に個人史を描いたが、20世紀の小説は国家の歴史を描いた。監督のケン・ローチは歴史を語るために映画を撮るという。単純な政治的メッセージとフィクションである小説や映画が異なるのは、歴史に翻弄される個人を描いている点だ。大きな物語は死んだとポストモダニストが叫んでも、現代でも個人は、国家やイデオロギーの抗争によって翻弄されている。何故こんな目にあわなければいけないのかという悲劇を語り継ぐ姿勢は現代でも必要だ。
アイルランド独立の問題は、現代まで尾を引いている。