パプリカ [DVD]

監督 : 今敏 
出演 : 古谷徹  林原めぐみ 
  • ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
3.86
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  • (516)
  • (522)
  • (53)
  • (14)
本棚登録 : 2793
感想 : 504
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4547462041579

感想・レビュー・書評

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  • これはもう神話のレベル。

    冒頭から悪い夢を見ているような映像の連続。
    けっしてマイナスの意味ではなく、恐怖感があるわけでもない。
    あの夢特有の脈略のなさ、意味不明なようでいて何となく繋がっている感じが見事に具現化されている。
    そう思っていたら本当に夢のはなしだった。

    夢を共有する装置「DCミニ」を使ってサイコセラピーをおこなう謎の女性、パプリカ。
    その「DCミニ」が研究所から盗まれることにより事件に発展していく。

    筒井康隆の小説をもとに、今敏監督がアニメーションの手法を駆使して映像化。
    純国産、和風でサイバーパンクをやるとこんな感じになるのかぁ、なんて最初のうちは面白がって観ていたが、物語が進むにつれ圧巻、とにかく凄いの一言。

    昔、よく通っていたミニシアターに掛かっていた『パーフェクトブルー』を観て、度肝を抜かれた。
    そこで初めて今敏という作家を知り、当時多少なりとも持っていたアニメーションに対する偏見は吹き飛んだ。
    『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』も観て、押井守作品あたりにも手を伸ばすようになった。

    随分長いあいだ観逃していた『パプリカ』
    『千年女優』で繰り広げられる、時間と空間を超越するかのようなアニメーションにしかできない表現に目を奪われたが、それをさらに追求し押し進めた映像と音楽と言葉の洪水。
    全身で、第六感を含めたすべての感覚で受けとめる面白さ。
    筒井康隆の原作は未読だが、これが文章でどのように表現されていたのかがとても気になる。

    ヴィム・ヴェンダース『夢の涯てまでも』 押井守『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』 宮崎駿『千と千尋の神隠し』などでみられる主題や表現が、今敏『パプリカ』では群を抜いて際立っている。
    終盤なんかは『ヱヴァンゲリヲン』から『エヴァンゲリオン』へ遡って、さらに『ウルトラマン』を突き抜け、イザナギとイザナミの国造り神話の域に達している気がする。

    あまりに圧倒的で能書きばかり垂れてしまったが単純に面白い。
    メジャー街道を走り大衆の支持を得ながらも、明るさの中にどこか、ゆるやかな崩壊や閉じた楽園など「陰」の雰囲気を感じさせる宮崎アニメ。
    対して、一般的にはマニアックなポジションで特殊な題材を扱いながら、狂気の表現にもラテン系の能天気さがある「陽」の今敏作品。
    これはあまりに個人的な見解だろうか(もちろんどちらも好きですよ)。

    「アニメ」に淫することなく表現の一手段として進化、深化させてきた今敏監督の新作が、もう永遠に観られないのかと思うと残念でならない。
    想像もし得なかった世界を、もっともっとみせてくれるはずだったのに。

    『パプリカ』を観終わったあと、渡辺謙が出演しているハリウッド映画『インセプション』が急に気になり始めた。
    あちらはいったいどうなっているのだろうか。
    近いうちに観てみようと思う。

    • kwosaさん
      円軌道の外さん!

      こちらにもコメントありがとうございます。

      アイドルオタク、ストーカー、ブログ、ネカマ、なりすまし......
      まだ一般...
      円軌道の外さん!

      こちらにもコメントありがとうございます。

      アイドルオタク、ストーカー、ブログ、ネカマ、なりすまし......
      まだ一般的認知度が低かった時代に『パーフェクトブルー』は、望月峯太郎(当時)の漫画『座敷女』と共にかなりの衝撃でした。

      今敏監督作品はアニメーションという範疇を越えて、どれも映像作品として抜群に素晴らしいです。
      そのなかでも『パプリカ』はさらに凄い!
      ぜひぜひ観てください。
      そして円軌道の外さんの感想をきいてみたいなぁ、って思っています。
      2013/05/03
    • 円軌道の外さん

      こんばんは!
      連休明けですが
      元気してますか?


      いやぁ〜分かります(^O^)


      『パーフェクトブルー』は
      当時こ...

      こんばんは!
      連休明けですが
      元気してますか?


      いやぁ〜分かります(^O^)


      『パーフェクトブルー』は
      当時これをアニメでやっていいのかという衝撃と、
      アニメだからこそ成立したんだという
      納得がない混ぜになって
      「スゴいアニメ作品があるねん!」って
      周りのみんなに
      宣伝しまくりましたもん(笑)

      それとkwosaさんが
      「座敷女」を知っていたなんて
      嬉し過ぎます!

      ストーカーという言葉がまだなかった時代に
      あれを描いた先見性はホンマスゴいし、

      いまだにあのキャラクターは
      トラウマになってます(>_<)


      てかkwosaさんが
      そこまで言うなら
      『パプリカ』見ないわけにはいかないですよね(笑)

      なにとぞ
      あと少しお待ちを〜(汗)(^_^;)


      2013/05/07
    • kwosaさん
      円軌道の外さん!

      連休明けです!
      太陽のもとスポーツにいそしんだり、動物園を満喫したり、自分と嫁さん双方の両親と酒を酌み交わしたり、何故か...
      円軌道の外さん!

      連休明けです!
      太陽のもとスポーツにいそしんだり、動物園を満喫したり、自分と嫁さん双方の両親と酒を酌み交わしたり、何故か大量の肉を喰ったり......
      疲れています。

      大好きな本にも映画にも音楽にも触れていない。
      俺はもともとインドア派なんじゃー!
      失礼しました。
      充分楽しかったんですけどね。

      >当時これをアニメでやっていいのかという衝撃と、
      アニメだからこそ成立したんだという
      納得がない混ぜになって

      そう、僕もそう感じたんですよね、当時。
      そして、それを思ったとき「アニメとはこういうものだ、アニメとはかくあるべし」という自分の偏見に気づいたわけです。

      アニメって凄いですよね。
      実写では難しい題材や描写、シチュエーションやキャスティングの困難さ、その他諸々を乗り越えられる。
      そして新しい表現の可能性を無限に秘めている。

      しかし、そのことを理解し実現させようとする制作者が、いまどれだけいるのか。
      今敏監督の急逝が惜しまれるわけです。

      (望月ミネタロウもそろそろ読まなきゃなぁ、って思っています。)
      2013/05/08
  • 悪い夢。あのごちゃごちゃした夢の世界をアニメーションにしたの、凄すぎる。「千と千尋の神隠し」のシーン思い出した…森見さんの「宵山万華鏡」も。音楽と映像の完成度高いなー。人形怖いよー。

    今までに見た悪夢で一番はっきり記憶しているのが、帰宅したら母らしき人影が台所に立っている。
    声をかけるが、振り向いたのは人間大のからくり人形(茶運び人形)。どこまでも追いかけて来る人形に怯えながら母を捜して逃げ惑う…。カタカタカタカタ、、、

    本当に、日本人形のあの不気味さはどこから来るんだろう。

    DCミニ、怖いけど実在するなら使ってみたいような…筒井さんの原作も図書館にあれば借りてこよう。

  • 筒井先生が活躍してるのが良かったです。
     パレードは良いのだが、あの発狂したのが何回も何回も出てくるので、なんかまう「もう見た」的な感じが。
     パプリカがハンバーガー銜へるところが異常に印象に残る。
     

  • ★人の夢を共有したり摂り出せたとしたら★

    これってどうなんでしょうかね

    悪用されたら怖いよね

    しかも究極のストーカーっぽい

    でも、動物の夢は覗いてみたいな
    と思ったりしました。

    ストーリーは
    人の夢を共有できる最先端の
    技術「DCミニ」を巡り

    精神治療として開発したい者と
    夢を共有することに危険性を
    唱えている者との攻防という話。

    夢と言えば「明晰夢」
    自分のみている夢をコントロールし
    あんなことこんなこと出来るらしい

    ちょっと魅力的。

    しかし「明晰夢」は
    かなり危険という声もあるよ

    あたしはなんでもいいから
    おめでたい夢でもみて
    朝スッキリ目覚めたい

    これ本音

    あ!
    この作品の映像はお見事でした。

  • 筒井康隆だなって感じの猪突猛進で振り切った系豪腕SFアニメーションという印象(笑)。
    「夢」の世界だからこそ描ける、意識という束縛から解放された自由にハジけまくる描写が楽しくて魅力的。想像と創造がある一点で交わったような世界線が私は好きです。
    ただ現実の整合性とかを考え出すと…。そこは豪腕によるスピード感で覆い隠すというか気にさせない作りで、あるいは気にすると楽しめないので、やはりこの作品のスピード感とともに疾走し没頭するのがmuch betterと思われます。

  • 夢に入り込んで患者の治療を行う装置“DCミニ”が盗まれ、精神医療総合研究所に勤める若きサイコ・セラピストの千葉敦子は、“DCミニ”開発者の時田とともに島所長の元へと集まる。しかし、所長の島が突然、意味不明な内容の演説をとうとうと語り出す。“DCミニ”を盗んだ者たちによる夢の侵略が現実のものとなり始め……。
    「シネマトゥディ」より

    混乱雑多.
    眠っているときに見る夢は、いろいろな制約がとれて自由自在、というのを視覚化した感じ.に加えて、現実と夢がリンクして、最後には融合する.わけがわからなくなりそうだが、そこは分かりやすい印があって夢であるか現実であるか分かるようになっている.
    ただ、夢は自由自在でもあるけど、現実のトラウマや野心に囚われて苦しいものになったりもする.

  • 私にとってアニメ映画で好きな監督はと聞かれたら、今敏監督一択です。だから、『パプリカ』も、もう繰り返し観ましたが、最近の読書記録更新&部屋の整理がてら改めて観ました。

    いやー、見事です。夢と現実、そして科学と魔法、もしくは狂気……こういう扱いにくいテーマに関して取り組んだものでこれだけ優れたアニメは他にないでしょう。精神医学書や現代思想の本を10冊読むくらいなら、この作品90分観た方が早い。それだけいろいろな含蓄が含まれています。

    最初のキッカケは平沢進および平沢曲(「白虎野の娘」)から入って購入したものですから、音楽が素晴らしいのは言うまでもないです。この作品で特筆すべきはやはり、「え!?そこ、行くぅ??!」っていう展開、登場人物の行き先・行動ですね。タンスの下に階段が、とか、まちなかの端っこに空間の割れ目が、とか。そして、その意外な穴が物語上重要な地点へとつながっているという。こういう持ってき方は凡人には思いつきませんよ。

    あと、初見だと通して観てもさっぱり訳が分からないでしょうが、細かいギミックが至る所に(しかもIQサプリ宜しく画面の小さい隅っこに)あって、この作品を理解するだけでなく、その先の展開を読む上での重要なメッセージが含まれていたりしますから、とにかく何遍も繰り返し注視して下さい。一遍見て意味不明だったからって放り出さないように!細かいワラワラした場面描写に惑わされないで!

  •  夢が現を呑み込んでいく様を見事に描写したSFアニメ。

     筒井康隆の著作が原作だが、内容はほぼオリジナルなので、原作未読でも観れるものになっている。今敏監督の最後の作品で、一言で言うなら「極彩色の悪夢」。全体に散りばめられた常軌を逸した映像や台詞に、恐れと笑いの両方を感じられるのだ。
     軸となるストーリーはあるが、事態が進むにつれてあってないようなものになってしまう。これは主軸が「夢」なのだから、確信犯的演出であろう。

     『ドグラ・マグラ』が気分がヘンになる小説の代表作なら、『パプリカ』は気分がヘンになる映像の代表作だ。あの美しくも恐ろしい凝った映像美は、とても言葉では説明できない。ぜひ生きている間に一度は観てほしいと思う作品だ。

     作品の裏話を知りたいなら、映画『パプリカ』公式ブログをどうぞ。

  • 事前情報なしで、音楽と映像に惹かれたので見てみました。

    夢を映像化すること、他人と夢を共有できること
    そんなまさに'夢'みたいな技術が、精神療法に実用されているという設定だけでわくわくしてしまいます。
    夢っていろんなことがごちゃまぜで、よく覚えていなかったりする
    こんなに科学が発達した中でも、無意識で行われる不思議な体験。
    現実と夢が混在する映像は、アニメーションだからこそ楽しめるものでした。

    「パプリカ」が夢の中で自由に動き回る様子は、とても胸が高鳴ります。
    映像、音楽にべったり浸れますので、多くのアニメを見すぎて飽きてしまったーという頃合いに一見するのがおすすめです!

  • エンドロールまでしっかり見てしまう。
    一人だけではモノづくりというのは成り立たないと、ベタな事をふと思ってしまった。

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著者プロフィール

今 敏(こん さとし)
1963年10月12日生まれ。北海道出身。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒。漫画家、アニメーション監督。大学在学中の1985年、ちばてつや賞を受賞し、漫画家としてデビュー。漫画作品としては『海帰線』、『ワールド・アパートメント・ホラー』、短編集『夢の化石 -今 敏全短篇』(以上 講談社・刊)、『OPUS』上・下巻、『セラフィム 2億6661万3336の翼』(以上 徳間書店/復刊ドットコム・刊)がある。
1990年以後、劇場用作品を中心に、美術設定やレイアウト担当としてアニメーションの世界でも活躍。1998年には、映画『パーフェクトブルー』で初監督。その後、2002年『千年女優』、2003年『東京ゴッドファーザーズ』、2006年『パプリカ』を発表し、世界各国の映画賞を受賞。また、2004年には、TVアニメ『妄想代理人』を、2007年には短編アニメ『オハヨウ』を制作。
2010年8月24日逝去。享年46歳。

「2023年 『今 敏 MANGA選集 3 海帰線 [ワイド版・生原稿ver.] KAIKISEN』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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