Dear Pyongyang - ディア・ピョンヤン [DVD]

監督 : ヤン・ヨンヒ 
出演 : ドキュメンタリー映画 
  • video maker(VC/DAS)(D)
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4571169961748

感想・レビュー・書評

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  • 北朝鮮・在日コリアン問題は重いテーマだという認識が少し変わった。国家や主義・思想は違えど家族の絆は変わらない。それにしてもヤン監督のアボジとオモニは素敵だ。

  • 在日2世の女性監督梁英姫が、愛すべきアボジとオモニの姿を10年にわたって撮影しながら取り組んだ長い長い宿題。

    在日2世(3世)が身をもって知る世界情勢やいま身を置く環境と、朝鮮総聯に人生をささげた両親の金日成思想との溝は、ひとつの「家族」のなかにあってとてつもなく大きい。
    生まれ育った大阪市生野区から30数年前、祖国・北朝鮮へと渡った3人の兄たちとの距離もまた、断絶ではないにせよ「家族」にとってはあまりにも遠い。
    自分の知らない親戚や父の同朋たちに至ってはほとんど異邦人にひとしかったであろう。しかしそんな彼らと梁監督との間を埋めるものが、万景峰号であり、大きな段ボール箱いっぱいに詰めた仕送りであり、アボジとオモニの思想そのものなのである。

    「この海は私たち家族を隔てるものなのか、つなぐものなのか」梁監督は船上で自問する。
    アボジとオモニにとって、それは家族と祖国をつなぐ海かもしれない。否、それは家族と祖国をつなぐ海でなければならない。かれらにとっての祖国、すなわち朝鮮統一と国家社会主義の栄耀はいまだ実現されていない。しかし実生活から隔てられているからこそ、目に見えない、手にできないからこそ信ずるべき目指すべき地なのである。彼らが夢見た祖国は実現しそうにないと、彼ら自身もまた気づいている。
    国籍をコリアにしたいと告げた梁監督にアボジは「今の仕事にさしさわるなら仕方がない」と言った。「しかし、おれは(北朝鮮)国籍は変えへん」とも言った。彼は日本でも生まれ故郷の済州島でもなく、彼の祖国の土になるであろう。

    半世紀を経て尚、私たちは世界中に数々の宿題を残したままでいる。21世紀、チェンジやらサステナブルを唱える前にもう一度みんなで見直す必要のある現実があることを忘れてはならない。

  • 「スープとイデオロギー」からのこの映画。
    2005年のだからまだお父さんもお元気で北朝鮮に渡った長男もまだ存命。
    このお父さん、コピーにもあるように憎まない愛すべきキャラクター。
    オモニも若くてほんとによく笑う明るくて若い頃は綺麗だったんだろうなと思わせる風貌。
    北朝鮮総連の幹部?収入はそこで得ていたのかな。
    北朝鮮の息子たち、そしてその親戚たちにも毎月お金とものすごい量の物品を(文房具、カイロ、服等)送っていたけど。
    このアボジのなんかのお祝いパーティー(古希?)が北朝鮮のどこかのホールで盛大に行われていたけど、それも彼らの送ったお金から支払われていたとなると、監督も言ってたように複雑だよね。
    まぁ、自分たちがこの息子たちの人生を変えてしまったという気持ちからの贖罪をこめての送金&物品だったのかな。
    アボジもオモニも数奇な運命だよ。
    でも、あの済州から逃れて日本にたどり着いた韓国人もたくさんいるんだろうな。
    そしてこのイデオロギーに支配されるその2世たちも。
    いろいろ考えさせられた。

    Dear Pyongyang 2005年 107分 WOWOW
    ドキュメンタリー映画
    監督 : ヤン・ヨンヒ

    父は3人の息子たちえを、彼らが見たこともない「祖国」へ送った。

    憎らしくも愛おしい。

  • 2006年 日本
    監督 梁英姫(ヤン・ヨンヒ)

    在日2世のヤンヨンヒさん。
    両親は南出身だけど、北を選び朝鮮総連の幹部として魔の「帰国事業」を推進していた。
    お兄さん3人もその一環で北に帰り、ヨンヒさん本人は日本で大学まで出た。
    彼女が10年間自分の家族をムービーで撮り続けたもの。

    ヨンヒさん自身はアメリカでも暮らし、学び、北の過ちをすごく理解し、がゆえにアボジとの間に亀裂が生じていて、それをどう表現すればいいのかずっと悩んでいたのだと思う。

    両親は総連活動に人生を捧げていて、このフィルムの中でもあったけど、ご本人の誕生祝いを北でしてもらった時にスピーチで自身の総連活動に就いての総括をしていた。
    マジですか?
    55年活動して、頭では「間違ってた」ってわかってるのに(わかってるよね?)まだ総括する?自分の子供、孫を活動家にするのがこれからのやることやって言う?
    言わざるを得ない立場なんでしょうね。

    ヨンヒさんもナレーションで「違和感を覚えた」とか「逃げ出したくなった」とか核心をつかない言葉で逃げてるように感じた。
    でも、親だもんね。
    親が人生掛けてやってきた活動を非難するのは簡単だけど、それは彼らの人生を非難することであって、彼らの人生を否定することであって。
    娘としてはできないよね。辛い。
    この辛い思いを彼女はずっと抱き続けてきた。
    親子の縁を切ってしまうとか、自分の思いにふたをして知らんぷりするとかって逃げ道を行かずに少なくとも父親に疑問を投げて答えを待っていた。その点はえらいなぁって思う。

    アボジは最終的に娘が韓国籍に変更することを認めた。
    北のままだと仕事的にやりにくいからね。
    でも、アメリカ人や日本人と結婚することは認めてくれなかった。
    奥深い恨みつらみがあるんだろうね。

    終戦で日本人じゃなくなったアボジは苦労したんやろうね、日本では差別されて仕事もろくになく、かと言って南は軍事独裁国家で貧しく、その頃はまだどんどん南から日本に人が渡ってきていた時代で、アボジは南ではなく、北を選んだ。
    北が彼らに助けの手を差し伸べた。
    そして北のために生涯をささげた。
    この選択を責めることはできないと思う。

    途中で変更しようにも北に人質がいた。
    人質のために必死に日本でお金を工面して息子、親戚、友人のために仕送りをした。仕送りをされた息子たちはそのおかげで北の中ではましな生活を送ることができている。

    そんな彼らを責めることはできない。

    でも、彼らに映画「クロッシング」を観てどう思うのか、聞いてみたいという意地悪な感情が湧き上がってくる。

    むなしい。

  • 試写会@九段下の九段会館

    誰も一緒に行ってくれる人がいなかったので
    暑いし行くのやめよーかと思ったりしていたけど、

    結論:観に行ってよかった

    なかなか見ることのない北朝鮮に住む人の実情とかが
    見れるかなーと思って行ったんだけど、
    それもあったんだけど、
    それ以上によくできたドキュメンタリーで
    観て良かったと思います。
    ディア ピョンヤン

    というタイトルのこの映画、
    在日コリアン2世である女性が
    朝鮮総連の幹部として熱心に活動してきた両親(特に父)を撮った
    ドキュメンタリー。

    家族だからなのか、
    そのカメラの目線はとてもあたたかい。
    監督自身は生まれてから日本に住み、
    北朝鮮はとても母なる祖国とは思えない
    と言っている人。
    しかし家では祖国を批判する言葉は言えない
    らしい。

    自分は両親の思想とは違う、と思いつつ
    それでもやはりお互いを支えあう両親を慕っている

    どんな思想があってもそれは本当に暖かくて、思わず笑み。


    でも現実として
    マンギョンボン号に乗って監督の兄3人は北朝鮮へ「帰国」させたら、
    今のところ2度と日本には戻って来れなくなってしまった。

    北朝鮮はとても寒い。
    兄の子どもたちは学校で足が凍傷になってしまった。

    それを聞き、せっせと毎年ダンボール7、8個もの仕送りをする母。


    やはり、北朝鮮はものがないようで。
    同じ「ものがない」状態でも、
    ミャンマーは暑かったから果物もなって食べ物もあるし
    だらだらしてればよかったけど、
    寒いと食べ物もとれないし死ぬ危険もあるから大変だなぁと
    思う。

    しかもこないだ韓国に行ったとき、
    3月なのにかなり寒かった。
    東京の真冬より寒かった。
    ソウルはわりと北寄りだけど
    ピョンヤンはそれよりも北なんだから
    さぞかし寒いだろう。
    過酷だな。

    と、
    そういう事実を
    正確に、ありのままを
    私は本当に知れているのか?

    やっぱりまだまだ知らないことも多いし、
    監督の両親を素敵だとは思うけど、
    監督と同じように金日成万歳の思想にはひどく違和感を覚える。



    監督の父には、
    たぶん、
    北朝鮮に忠誠を
    「誓う」か「誓わない」か
    のどちらかしかなくて、
    北朝鮮が
    「正しい」か「正しくない」か
    という選択肢はないんだろうと思う。
    たぶんね。

    べつに、
    「正しい」か「正しくない」か、
    その人なりに吟味してから
    忠誠を誓うなり誓わないなりするのは理解できるけど、
    それがないのは、なんというか
    やはり、教育とか押し付けの生み出したものというような気がしちゃう。

    だって日本に戻って来れなくて自由に親とも会えない息子たちがいるんだよ
    電話もできないんだよ
    寒い中学校行って凍傷になっちゃう孫がいるんだよ
    これは現実なんだよ

    それなのに、
    金日成や金正日に忠誠を誓い続けるし、子どもにもそうなって欲しいと願えるのが
    私にとっては不思議でならないし、そらおそろしい。


    監督の冷静でバランス感覚のあるナレーションに救われます。


    「思想」が利害をもたらすのであって「人」が利害をもたらすのではない

    のかなぁ・・・


    とにかく色々考えました。


    ひとりでも観に行ってよかった。

    戦争はいやじゃ〜

著者プロフィール

著:ヤン ヨンヒ
大阪出身のコリアン2世。
米国ニューヨークのニュースクール大学大学院メディア・スタディーズ修士号取得。高校教師、劇団活動、ラジオパーソナリティー等を経て、1995年より国内およびアジア各国を取材し報道番組やTVドキュメンタリーを制作。
父親を主人公に自身の家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005)は、ベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞、サンダンス映画祭・審査員特別賞ほか、各国の映画祭で多数受賞し、日本と韓国で劇場公開。
自身の姪の成長を描いた『愛しきソナ』(2009)は、ベルリン国際映画祭、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭ほか多くの招待を受け、日本と韓国で劇場公開。
脚本・監督を担当した初の劇映画『かぞくのくに』(2012)はベルリン国際映画祭・国際アートシアター連盟賞ほか海外映画祭で多数受賞。さらに、ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位、読売文学賞戯曲・シナリオ賞等、国内でも多くの賞に輝いた。
かたくなに祖国を信じ続けてきた母親が心の奥底にしまっていた記憶と新たな家族の存在を描いた『スープとイデオロギー』(2021)では毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、DMZドキュメンタリー映画祭ホワイトグース賞、ソウル独立映画祭(2021)実行委員会特別賞、「2022年の女性映画人賞」監督賞、パリKINOTAYO現代日本映画祭(2022)グランプリなどを受賞した。
2022年3月にはこれまでの創作活動が高く評価され、第1回韓国芸術映画館協会アワード大賞を受賞。
著書にノンフィクション『兄 かぞくのくに』(小学館、2012)、小説『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA、2018)ほか。
本書のハングル版『카메라를 끄고 씁니다』は2022年に韓国のマウムサンチェクより刊行された。

「2023年 『カメラを止めて書きます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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