善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

監督 : フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 
出演 : ウルリッヒ・ミューエ  セバスチャン・コッホ  マルティナ・ゲデック  ウルリッヒ・トゥクール  トーマス・ティーメ  ハンス=ウーヴェ・バウアー 
制作 : ガブリエル・ヤレド 
  • アルバトロス (2011年10月17日発売)
4.19
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感想 : 287
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4532318008479

感想・レビュー・書評

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  • ★★★ HGW XX7 ★★★

    真実を言ってる人間は、言葉を変えて表現しようとする
    嘘をついている人間は、同じ言葉を何度も繰り返す

    冒頭、学生相手に秘密警察の将校ヴィースラー大尉が
    淡々と述べていたが・・・異議あり!

    真実は言葉を変える必要はない

    だいたい嘘つきはよく喋る
    嘘の上塗り、語るに落ちるじゃないか

    こうやってヴィースラー大尉に楯つくと
    あたしの名前に×が付けられ
    盗聴の対象者となるのかな

    とにかく覗きと盗聴は悪趣味だ

    ラスト
    ポスティングのバイトをしているヴィースラー
    には親しみを感じた

    あれって健康的なバイトだ
    いつかやってみたい
    1時間でいい
    真夏はイヤだ

  • 冷戦末期の東ドイツ。冷静に反体制派を追い詰めてきたシュタージ局員ヴィースラーは、演出家と女優のカップルを監視するうちしだいに感情移入し、彼らを守るために危険を冒すようになる…。
    ヴィースラーと女優クリスタが差し向かいで語るシーンは2つあるが、言葉をうらぎる意思を伝えあうウルリッヒ・ミューエとマルティナ・ゲデックの演技は圧倒的だ。
    それにしても、壁の崩壊まで生き残った演出家と監視者は、冷酷な体制に立ち向かったある種の英雄という位置づけを獲得することができるけれど、生きのびられなかったクリスタの存在は、この政治史の中でどのような位置づけを得るのだろうか。
    彼女は、体制側だけでなく反体制派である同じ演劇人の男たちからも「政治に巻き込まれる」べきでない存在とみなされている一方で、政治的でない女性とみなされるからこそ、容易に権力者によって性的対象とされる。それはまさに権力と必死に交渉しながら生き抜く闘争なのに、彼女は私的な問題としてひとりで解決せねばならない。そして政治的忠誠心ではなく恋人への性的忠誠を裏切ったことにより、自らを死に追いやることになるのだ。
    そのとき劇作家が問題のタイプライターで書いていたのは、東ドイツにおける文化人の自殺という「政治的問題」だった。だがクリスタの自殺は、文化人の自殺という政治的な問題のひとつにカウントされることはないだろう。
    この、政治的に対立する男たちの間で性的忠誠心を試され犠牲に追いやられる女というエピソードは、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』の中にも出てくる、ある意味では定番の悲劇だ。女たちは、男たちの間の対立と連帯の物語を彩る、美しい悲劇として挿入され、実際のところ二重に性的に搾取され続ける。「善き人」たちが奏でるソナタが隠すこの暴力と沈黙にどう抵抗するのか。

  • 恋人たちのストーリーを垣間見ることで、仕事マシーンだった彼の世界に色が着いて行く。その過程の演技に脱帽。目の表情が序盤と終盤で大きく変わる。

    ドラマの登場人物に感情移入するのと同じだろうか。交代の時間が来てもヘッドホンを話し難く、名残惜しそうな様をみせるシーンがとても印象に残っている。
    そういう作り込みが丁寧で、瞬きする間も惜しいくらい喰いついて観ていた。

    言うまでもなく、ラストシーンの一言は鳥肌物。
    これほど美しい映画に生涯何本出会えるのだろう。

  • かなり良い映画だと思いますが、あまりに悲しい話で私には辛かったです。予備知識があれば見なかったかも。

    東西分裂時代の東ドイツが舞台で、恋愛関係にある劇作家と女優が反国家的ではないかと目を付けられ、盗聴され監視されるが、盗聴している優秀なスパイの男が次第に劇作家と女優に同情してしまい…というストーリー。

    国の援助がないと活動できない時代の女優の選択した行動とその結末があまりに悲し過ぎました。

    東西統一してからのラスト十数分が素晴らしく、この十数分で救われましたが、最近はあまりに悲しい映画は見なくなっているので久しぶりに堪えました。

  • DVD
    ーーこのソナタを真剣に、本当に真剣に聴いた人は、決して悪人にはなれない。

    反逆者の芸術家における5つのパターン、という論文が出てくる。科学的根拠をもとに、ひとつしかない真の幸福を求める。
    ドライマンもパターンを使う。たとえば、ネクタイの象徴する意味。最後まで中産階級から抜け出せない大臣の描写が面白い。
    ドライマンもヴィースラーも確かに東側の人間だったのだろう。しかし彼らはソナタを聴いてしまった。詩を読んでしまった。

    二人にとって真の幸福とはなんだったのか、それが知りたい。

  • スノーデンはいつの時代にもいる。
    観終わった瞬間に最初にそう思った。

    「国家」 対 「人としての尊厳」

    いつの世も、その戦いに多くの人が挑み、大半は敗北。
    それでもこの映画のように、歴史には決して残らないが、無名で無言の戦いがきっとあったはず。

    勇気とは違う何かに突き動かされる。
    ほんの一握りの人かもしれないけど。

    スノーデンは民主主義の行き過ぎに戦いを挑んだ。
    ヴィースラーは社会主義の行き過ぎに戦いを挑んだ。
    二人とも、その行動を誇ることなく、ただただ人としての尊厳を一番に置き、「孤独を選び」その戦いに挑む。

    そんな風に、現実社会とリンクしました。

    最後の1分間。
    これを観るためだけに、2時間がある気がする。
    ホントにいいラストでした!!

  • 良かった。ラストの落とし方もとても良かった。
    あなたの気がつかないところで、誰かがあなたのことを想っている。とても静かに見守っている。そういうことを気付かせてくれる。生真面目さゆえに持ち合わせた男の不器用な繊細さは心揺さぶるものがある。

    誰かのために何かをしてあげたい、気持ちを伝えたいという思いは、どんな創作物にも存在する一面だ。だからこそ芸術・創作活動は常に時代に翻弄されてしまうもので、それに関わる人々の様々な想いが直に伝わってくる。いつか、私も、誰かのためにソナタを届けられたら、と思う。もしかしたら届かないかもしれない、届けられないかもしれない。でも届くかもしれない。この映画を見ると、そんな一縷の希望を信じたくなってしまう。

  • 愛と理想を持ち、虐げられながら戦う芸術家と、

    体制の行使に生きてきた主人公のコントラストが、

    より一層、主人公の孤独を際立たせて、途中から可哀想に思えました。


    管理され、虐げられている芸術家も気の毒なのだけど、
    管理してる政府側の主人公も、かわいそうに見えてしまう。


    ヴィースラー(主人公)は、芸術家たちに出会うまで、
    自分が孤独であることに気づいていなかった。

    「国家(体制)以外に、自分が愛するものを持っていないこと」に、気づいていなかった。

    (国家が、愛を捧げられる自分の理想と違うことに、気がついていなかった。)



    芸術家たち(愛や理想のための戦い)を知ることで、

    政府のために残酷で非情になれた人間が、変わっていく・・。



    事件の後、

    ヴィースラーが、自分の負ったリスクを、何年も淡々と受け入れて生きていくのに感動しました。


    彼は、恋人や家族を作るなどの、現実的な救いを求めない。
    でも納得しているのです。

    ここも、
    事件後に、芸術家がそういう救いを手に入れている姿と、対照的でした。


    最後、
    芸術家の行動によって、救いは目に見える形に。


    孤独な人間でも、尊厳を持って生きていけるし、幸せを見出すことが出来る。

    そう思わせてくれた映画でした。

  • 表情変えない、はげたつぶらな瞳のおじさん、何したいのかよくわからん。
    デリヘル呼んでる描写は笑えた。

    他の役もどういう思惑か、国という大きさがあるためか、ぴんとこず、何度も寝てしまった。。なんとか最後まで観る。

  • ベルリン旅行の復習をかねて観賞。すばらしかった。社会主義に忠実で優勝な役人であるヴィースラーと、西の文学に傾倒し芸術家たちと交流するドライマン。監視・盗聴する側とされる側。一見すると共通点などないような二人の男の物語。
    登場人物それぞれのキャラクターがリアルで、汚い気持ちも含めてわかるなあと思えるから、時代や国境を越えても人間の心理ってあまり変わらないのだなと思う。
    ラストシーンは秀逸。
    理想通り生きることは大人になればなるほど難しいけれど、大事なものは何か、を見失いそうになったら何度でも見返したい映画。
    そしてまたベルリンを歩きたい。

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