雨月物語 〔菊花の約〕(石田彰朗読CD)

著者 :
  • Beepa うずらっぱ
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 4560271560017

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代の小説「雨月物語 」の一編「菊花の約」の現代語訳を、声優の石田彰さんが朗読したもの。

    義兄弟の契りを交わした、清貧で知られる播磨の儒学者「左門」と、主君を失った出雲の侍「赤穴」。
    訳あって出雲に帰る赤穴は、重陽の日に左門のもとを訪れ、再会することを約束した。
    約束の日。
    左門は赤穴を待ち続けるけれど、いくら待っても彼は来ない。
    夜も更けた頃、ようやく赤穴は約束どおり、左門のもとに現れたけれども、なんだか様子がおかしくて…。

    様々な「義」を主題とした話なのだけれど、狂おしく赤穴を待ち続ける左門や、左門との約束を果たすために壮絶な手段をとってまで彼に会いに行った赤穴の姿には、それはもはや、友情ではなく恋では…?と思わずにはいられませんでした。
    特に、終盤の左門の過激な行動は、一途な恋以外ではとうてい説明できない気がする。

    あれ、実はこの話、隠れ同性愛の物語なのかしら…。いや、まあ、そういう、直接的な表現は一切ないので、私の思い違いかな…。(ちなみに私は、いわゆる「腐女子」ではありません)
    でも、重陽の菊の花って、仏花によく使われるから、なんだか死を連想させる花でもあるし、色によっては花言葉が…だし、やはり、悲恋の話の暗喩?
    妄想が止みません…。

    何はともあれ、抑揚を抑えながらも柔らかさと落ち着きのある石田さんの朗読は、とても見事です。
    あくまでも一人での「朗読」なのだけど、地の文や、登場人物たちそれぞれの台詞が、微妙かつ絶妙に異なるトーンで読まれていて、すんなりと物語の世界に浸れます。
    声の響き方が、これまた、物語のどことなく妖艶な雰囲気にぴったり。

    そして、脚本家の原田徹一さんのお仕事も見事です。
    現代人では読み下すのもなかなか一苦労の江戸時代の古文を、耳からでも十分わかりやすい平易な現代文に訳し、名作をスムーズに楽しめるようにした技量。
    なおかつ、原本にはない、ちょっとした場面をラストシーンに加えることで、余韻と哀切に満ちているとともに、考えさせられる物語へとグレードアップさせていること。
    実に素晴らしいです。

    古典名作のハードルを下げて楽しませてくれる、良い作品ですね。

    • 地球っこさん
      hotaruさん、はじめまして。
      いつも素敵なレビュー、楽しく拝見させていただいています(*^^*)
      古典名作は気になるものの、なかなかハー...
      hotaruさん、はじめまして。
      いつも素敵なレビュー、楽しく拝見させていただいています(*^^*)
      古典名作は気になるものの、なかなかハードルが高くて手に取れませんでしたが、現代語訳の朗読CDならば、スッと物語の世界に入っていけそうですね♪
      それがまた石田彰さんの声なんて!雨月物語の妖艶な雰囲気と絶対ぴったりなはず、そして間違いなしの朗読なんでしょうね。
      チャレンジしたかった古典に触れることが出来、大好きな石田さんの魅力溢れる声が聴け、これは一石二鳥の朗読CD、とても聴いてみたいです♪♪
      2018/05/26
    • hotaruさん
      地球っこさん、はじめまして。
      こちらこそ、いつも地球っこさんのステキなレビュー、楽しく拝見させていただいています。
      古典名作って、本当にハー...
      地球っこさん、はじめまして。
      こちらこそ、いつも地球っこさんのステキなレビュー、楽しく拝見させていただいています。
      古典名作って、本当にハードル高いですよね…読みたいと思って図書館で借りても、8割方読みきれずに返却する日々です…。
      朗読CDは初めてだったのですが、家事をしながら聴けるので、自然と聴き終わっており、とてもいい経験でした。
      2018/05/26
    • hotaruさん
      長文を書くとフリーズするので、小分けですいません…。
      石田さんの声、なんとも魅力的でしたよ〜。機会がございましたら、是非お試しください
      長文を書くとフリーズするので、小分けですいません…。
      石田さんの声、なんとも魅力的でしたよ〜。機会がございましたら、是非お試しください
      2018/05/26
  • ブク友さんのレビューを読んで、朗読という形なら難しそうな雨月物語に入っていけるかも……と。更に更にそれが石田彰さんの声とならば、間違いはないはずと聴いてみました。
    まずは、とても聴きやすい石田さんの朗読に、はぁ~とため息。もちろん、このため息の意味は感動したときに思わず出る大きな吐息のことですよ。
    朗読は、読み手があまりにも感情を込めてしまったり、物語の中に没頭してしまうと、聴き手が置き去りにされちゃいます。そして読み手がヒートアップすればするほど、聴き手は物語に集中出来なくなっちゃいます。朗読って、結構難しいんですよね。そこは、やっぱり石田さんです。聴き手にとって心地良い、そして物語を想像する楽しみをちゃんと与えてくれます。
    ブク友さん、このCDを教えてくれてありがとう!

    物語は、2人の男の義を超えた純粋な愛の形とでも言うのでしょうか。
    この時代では『約束を守ること』の意味は、現代よりも重く尊いものだったように想像します。それでも、約束を守ることが命を捨てることに値するほどのことなのは、この2人の義兄弟、赤穴と左門の強く結ばれた絆だったからこそなのでしょうか。
    最後に原作にはない、左門から妹への手紙が読まれます。赤穴の信義に応えるべく、その原因となった人物、従兄弟の丹治への敵討ちを果たした後、行方不明になった左門。左門は敵を討ったけれど、赤穴は戻るはずもなく彼への想いは募るばかりです。遂には、彼を死に至らしめたのは不義の従兄弟ではなく、自分がした約束なのではないかと悩み苦しみます。左門は今、身体は生きながらにして、魂は彼岸で赤穴の傍らにいるかのようです。左門はこれからどうするのでしょうか。
    こればかりは聴き手であるわたしたちが想像するしかありません。

  • 雨月物語収録の『菊花の約』。義兄弟の契りを交わし、菊の節句に再会を約束。あるよんどころない事情から、その日の約束が果たせなくなります。侍は約束を果たす為に決断しました。魂は千里を走るとの云われを信じて。雨月物語は、小学生の時に子供向けの本を読みましたが、なぜ命がけで会う約束を守るのか、理解できませんでした。現代人として育った今もあり得ない話ですが、絆を大切にして誠を尽くす、約束の重さを感じて相手を裏切らない。日本人の美徳とされたものを極めた話だと思います。再会の場面は、怖いけれど哀しく忘れられないのです。

  • 新宮などを舞台とした作品です。

  • 気になる…!

  • 池波正太郎御大の『前髪の惣三郎』という短編小説(新撰組がモチーフの連作集の中の一編)を原作にした『御法度』という映画の中で、沖田総司が「『菊花の約』は男色の話だ」と言っていたのですが、まさしく、倒錯した妖艶な世界観を感じずにはいられませんでした。
    繊細な良いお声で拝聴する名作は、ひときわ哀切で、味わい深いです。
    とても誠実で端正な朗読なので、慣れない古典を活字で追うより、かえってイマジネーションが広がるくらいでした。

  • めっちゃめちゃ欲しい!! 勉強にもなると思うよw
    現代語訳だとは思うけどw

  • 【原作】上田秋成。朗読:石田 彰。 ===== 古典ホラー「雨月物語」の1篇「菊花の約(ちぎり)」の朗読。押さえた声の石田さんが淡々と読み上げます。
    原作の妖しく美しく哀しい感じがとてもよく表現されていたと思う。良作。

  • 未購入。聴きたいー。

  • 朗読なので割りと表情を消して語られています。
    女性のセリフも自然に聞かせる語りはさすがです。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。1734(享保19)年~1809(文化6)年。江戸後期の読本作者。歌人、茶人、俳人、国学者でもある。『雨月物語』は5巻9篇で構成され、1776(安永5)年に出版された。

「2017年 『雨月物語 悲しくて、おそろしいお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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