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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4988104044716
感想・レビュー・書評
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28歳で戦病死した山中貞雄監督の作品を観てから、「戦争と映画」についてふと考えています。戦争映画ではなく、戦争と映画…戦争と芸術と言ってもいいかもですが、そのことについて。今なら朝ドラ『エール』の古関裕而さんもそう。
それで木下惠介の『陸軍』を観ようと思ったけど、お店で思い直して黒澤明の『一番美しく』を先にレンタル。どちらも1944年と太平洋戦争末期の映画です。
黒澤さんが戦争についてどういう感情を抱いていたかはよくわからないけど、同世代の映画監督たちも戦争に行く中(山中貞雄、親友の本多猪四郎、木下惠介…他多数)黒澤さんは行ってないから、後ろめたいような気持ちはあったのではないかと。特に『夢』を観てから、私が感じるのはそのぐらい。
これまでに私が観た黒澤作品は、最も古いものでも1946年の『わが青春に悔なし』なので、全て戦後のものでした。
大戦中の映画だから当然検閲があって、戦意高揚映画。私たちは戦後の教育しか受けてないし、その価値観の中で生きている。だからとんでもない内容だったらどうしよう…と一抹の不安もありました。
ストーリーは軍需工場の話。兵器に使う光学機器(つまりはレンズ)工場で働く女生徒たち。これはニコンの工場でロケしたそうなので、レンズを研磨する機械などは本物かと…けっこう貴重な映像です。
ジャンルは一応青春映画で、お国のために増産がんばりましょう!という内容。タイトルどおり。これはお手本、マニュアルとかチュートリアル的になっています。
これだけだとただの戦意高揚映画だけど、彼女たちはすごく頑張る。なぜなら、男性は兵士として前線に送られていく、彼らのためにもっと頑張らなくちゃならない。増産目標値が当初は男性工員より少なく設定されていて、男性ほどお国の役に立てていない…私たちは何をやってるんだ、もっと働かせて欲しい。と、増やしてもらう。
そうすると、過労でストレスが溜まるし、病気や怪我で脱落していく子もいて、悪循環になって生産量が落ちていくんですね。
それで、観ているこっちは過労の女の子たちを見てものすごく切ない、悲しい気分になってくるんです。戦意高揚映画なのに!笑
これは、この映画がきちんとリアルに作られているからだと思います。そういう映画は戦意高揚映画にもなるし、反戦映画にもなる。
映画というのは基本的にウソですね。ウソの集積です。例えばゴジラ、あんなもん実際に存在すると思って観に行く人はいないでしょう。でも大ヒットした。それはウソの中に真実があるからです。原爆や大空襲に遭った恐怖、その感情は紛れもなくホンモノだった。
この映画でも、工場や寮の周りの大人たちはみんな優しくて良い人たちばかりで、それはウソでしょう。マニュアル映画で、「こんな風に戦争に耐えて美しく生きましょう」という内容だから。
でも、女の子たちを働かせすぎて過労になるという部分は真実で、リアルなんです。
数年前の過労自殺事件も記憶に新しいし、働き方改革と言われている今観ると、より感じるところが多いように思います。働きたいと言うのは女の子たちからなので、日本人の忖度文化とか自己犠牲の精神とか、色々なことを考えさせられる。
「『死ぬくらいなら会社辞めれば』ができない理由」という本があるそうで、併せて読むと面白いかもしれません。国家、会社、学校…全てに通じるんじゃないかな。
話は戻って、最初に私が観ようと思った木下惠介監督は、この映画を「黒澤作品の中で最も秀逸な作品」と言っているそうです。というわけで『陸軍』に続きます。
映像テクニックで言うと、ジャンプカット(と言っていいかわからないけど…)や3段階ぐらいでアップにする手法などが使われていて面白い。
他の作品で言うと、スローモーションや第四の壁破りなどあって、のちの作品に影響を与えている。ヌーヴェルヴァーグよりものすごく早い…。
スローモーションはペキンパー、そしてみんな知ってるのはターミネーターとか。3段アップはヒッチコックやスピルバーグもやってたような。(以前『ギャングオブニューヨーク』や『グエムル』のスモークについて『七人の侍』って書いたけど、あれはやっぱり『蜘蛛巣城』でした。さらにその前にやってるのはチャップリンの『独裁者』。)
主人公の矢口陽子さんは黒澤さんの奥さん。名前だけは知ってたけど、お顔を初めて見ました。
軍歌の『元寇』を歌うけど、日清戦争直前に作られたそうです。(知らない人もいるかもだから一応書くと、神風の由来が元寇。)
しかし、東宝のDVDはちゃんと字幕がついているからほんと良いです。昔の映画は音声が聞き取りづらい、言葉使いや単語も古いからわかりにくいことが多いけど、字幕なら一発で理解できる。特に黒澤作品は聞き取りづらいと昔から言われていたそうなので、余計に。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
軽はずみな気分で観るもんじゃない、と思った。申し訳なくなった。
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日本が戦争をしていた時期に作成された映画。戦時中という事情で予算が縮小、検閲された内容がありありと伺えます。戦争は表現の自由さえ奪うのです。戦意高揚、国威発揚の為の映画といっても言い過ぎではないように思えます。
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国策映画であり、戦意高揚の意図もあったのでしょう。
時代がそうだったのでもあるのでしょう・・・・、三四郎の検閲があまりに厳しかったこともあるのでしょうか・・・・。
戦時期に、このような作品を残すこと、やはり責任を問われなければならないだろう。この映画を観て、奮起して戦争に加担した(銃後の乙女として)少女たちがいたかもしれない。
撮るべきであったかといえば、撮るべきではなかったかも知れない。
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