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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4988104044761
感想・レビュー・書評
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※※ラストまでネタバレしています※※
若い刑事の村上(三船敏郎。若くてビシッとしていて目がギラギラしてる!)が、満員バスで7発の銃弾が入ったコルト拳銃を摺られた。
時代は戦争直後、復員してから刑事になった村上は自分のコルトで事件が起きないかと気が気でない。
そしてスリ担当刑事の協力のもと、女スリのお銀に行き着く。拳銃はとっくにお銀の手元にはないが、村上は「せめてヒントだけでも!」とお銀を付け回す。道も、パスでも、店でも、朝から晩までだ。ついにお銀は「まったく今日はなんて一日だろうね、刑事にあと付け回されてさ」と観念し、”ピストル屋に売った”と教える。ピストル屋は場末をうらびれた姿でさまよっていれば声をかけてくるのだという。寝っ転がったお銀の目には、久々に見る満天の星空が広がっていた。
村上は薄汚れた姿で闇市をうろつく。そしてついにピストル屋からの接触があった。村上はピストル屋を預る女を確保するが、肝心の売人には逃げられてしまう。
その責任から上司の中島警部に辞表を提出するが、中島は辞表を破り捨て、ベテラン刑事の佐藤(志村喬)を紹介する。
(この中島警部は村上を叱るのではなく、処分を覚悟する村上に「ぼさっと突っ立ってったってしょうがないから捜査に行ってこい」「君は自分のコルトにこだわりすぎだ。もっと大局を見ればピストル屋の元締めを逮捕できたのに」「君の不遇は君のチャンスだ、なぜこの事件を担当させてくれと言わないのだ!」と叱咤激励する。良い上司だ)
村上と佐藤は捜査を進め、拳銃売人元締めは本多という男だとわかる。そして野球好きの彼を探すために後楽園球場を張る。(←このときの対戦は巨人対南海で巨人の4番は川上だった。本当の試合の映像を使ったのかな?)
村上と佐藤は、本多を呼び出し放送によりおびき出して逮捕する。そして村上のコルトを買ったのは遊佐という若い男だと判明する。
遊佐の家を訪ねた二人は彼の姉から、もともとおとなしかった遊佐は戦地から復員したその電車で全財産の入ったバックを盗まれてすっかり世に絶望してしまったのだと知る。そして村上は、自分も復員の電車でバッグを盗まれたのだと話す。
そして遊佐にはダンスホールでレビューを踊るハルミという女のところに通っていたと知る。
ハルミから話を聞こうとする二人だが、ハルミは「あの人はそんな人じゃないし私は何も知らない、私何も悪いことしてない!」と声を上げて泣く。多感な娘の扱いに村上は困るのだった。(←情熱的刑事も、多感な娘の感情には不慣れなんだね)
その晩村上は佐藤の家で食事をともにする。狭い狭い家には女房と三人の子供。
「自分のコルトのせいで、遊佐を犯罪者にさせてしまうのではないか」と心配する村上に、ベテランの佐藤は「君は犯人にまで責任を感じるのか。そんなものは作家に任せておけば良い。刑事にとっては助かった被害者の喜ぶ顔こそが褒美だ、犯人のことなんか考えていられるかい」という。
戦争に行き、やっと帰ってきたのに全財産を盗まれた村上と遊佐。
だが遊佐は絶望して犯罪者になり、村上はそれならばこそと刑事になった。
「君は若いんだ。その…あきらめーる?じゃなくて…」
「アプレゲール、戦後派ですか」
「そうそう、遊佐とは違って君こそがその、あ、あぷれげーるってやつだよ」
そしてついに、コルトを使った強盗殺人が起きてしまう。
出張帰りに妻の死体を見つけた夫の嘆きの前に村上はどうしようもない。
使われた銃弾は2発、コルトに残った銃弾は5発。一度やってしまったら次もきっとやるだろう。
遊佐は野良犬から狂犬になったのだ。
村上と佐藤は再度ハルミを訪ねる。ハルミと母は、父を亡くし貧乏の底で苦労してその日を暮らしていた。ハルミは「悪いのは社会よ!復員してきてバッグを盗まれた遊佐さんじゃない!」と反発するが、村上の「すべてを社会のせいにすればいいわけではない!俺だってバッグを盗まれた!だからといって人を傷つけていいのか!」という言葉に泣き崩れる。
佐藤は、遊佐の手紙から潜伏先の宿を察知し村上を残してそこに向かう。だが遊佐は刑事が自分をつけていることを知ってしまう。
村上が受けた佐藤の電話の向こうに響く2発の銃声、そして大雨の中倒れる佐藤。
遊佐の犯罪を直接知ったハルミは村上に「遊佐さんから明日の朝6時に大原駅で待つと連絡があった」と伝える。
村上は佐藤の回復を願いながら大原駅に向かった。
待合室にいる男たち。誰が遊佐だ?まだ若い男だろう。そして昨日の大雨から着替えていないだろう。そこでズボンと靴が泥で汚れた若い男と目が合う。
その瞬間、相手が刑事だと察知した遊佐は逃げ出す。
林の中逃げる遊佐と追う村上。コルトに入っているのは3発。そのうち1発は村上の腕を貫いた。だが追跡をやめない。めちゃくちゃに撃った2発は外れた。ついにすべての銃弾を使い切った遊佐に村上は飛びつく。村上に手錠をかけられた遊佐は倒れたまま慟哭する。まるで抑えたものが溢れ出たように。
そしてその脇を子供たちがわらべうたを歌いながら通り過ぎていくのだった。
佐藤は回復していた。佐藤を見舞った村上は「遊佐のことは他人事と思えない」とつぶやく。
しかしベテランの佐藤は「最初の事件は忘れられないのだろう。だがこの町では同じような事件が毎日起きている。君もすぐに慣れるさ」というのだった。
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白黒で画像もかなり悪かったのですが、三船敏郎のギラギラした目、志村喬の飄々とした安定感、そしてお銀やピストル屋の女やハルミといった、戦後の貧しさのどん底をなんとか生きている女達の生活ぶりは匂い立つようでした。
戦後の東京の様子もかなり長く映されています。
村上がお銀の跡をつけた戦後のゴチャゴチャした東京。
ピストル屋を探してうろつくドヤ街、闇市。
ハルミの働く劇場と、レビューの娘たちが汗にまみれて倒れ込む更衣室。
事件関係者の貧しい住まい。
そんななか満員で大盛況の後楽園球場。
おなじ「復員して全財産を盗まれ」て、野良犬のようだった二人だが、絶望して狂犬になるか、それならばこそ悪を捕えて生活を守る側になってやると思うか。
ベテラン刑事の佐藤は「どの事件も同じ」というが、村上は遊佐に対して持った同一感を保ち続けて行けるような、そんな強い眼差しでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
20本に1本くらいの割合で黒澤作品を観てます。時代劇よりも現代劇の方が最近は面白く感じる。『わが青春に悔なし』とか一般的な評価はそんなに高くないかもだけどかなり好き。黒澤さんの演出方法って今見るとわかりやすいんだけど、当時なんでこんな発想ができるの???と驚いてしまう。
現代劇でけっこう評価高いのが『野良犬』。ずっと観たかったから借りただけだけど、たまたま『リーサルウェポン』観てたらマータフがリッグスを自分の家に連れて行くシーンは『野良犬』の引用だと知ってタイミング的に面白かった。あと他に『トータルリコール』や『激突!』とか、それに色んな刑事もの、バディものの原点になってるみたい。
子どもの頃にドリフのコントを真似してたけど、刑事ものとかで考えてる時に部屋の中をうろうろするのもこの映画が元なのかも。
この映画で好きなのは、前半ミフネ演ずる新人刑事が街で潜入捜査?するところ。敗戦直後の日本をずーっとずーっと映しててびっくりした。なんでこんな発想になるのかと笑。黒澤が撮ってるから当時こんなだったってわかるんだけど……。しかも撮影班は本多猪四郎監督、これは黒澤明と本多猪四郎のバディムービーかい?隠し撮りなんかしてドキュメンタリー風にしてるんだとか。
野球場のシーンなんかこれまた後の刑事ものですごくよく見るやつ。川上なんか映っててほんとに記録映像。
盗まれた銃が人の手に渡っていくパターンの話。コルトポケットの装弾数は6+1発、ガバメントが7+1なので、のちの『リーサルウェポン』『ダイハード』のベレッタM92が15発ってほぼ倍になってるんだよなーと思う。
セリフにもあるアプレゲール、戦後派ってのがキーワード。『生きものの記録』の時に引っかかってたわからないとこが、このワードをはめると意味がわかってきた。
犯人とミフネは裏と表の関係性、ではそれを分けるものは何か?というのが黒澤のヒューマニズムなのかな。 -
Japan SocietyでのMonthly Classics、4月の選出作品として。
上映前のの紹介にて「今日4月1日がエイプリルフールだなんてことはおいといて、それより大事なのはこの日こそが三船敏郎の誕生日だということ!」と唱えてくれると会場内は異様な盛り上がりをみせる(笑) さらに盛り上げる材料として取り上げてくれたのは、80年台にJapan Societyが三船敏郎自身を招いてイベントを実施した時の写真。うら若きデ・ニーロやイザベラ・ロッセリーニがミフネと一緒ににこやかに写っているではないか!超貴重!!奇しくも今週Blue Velvet (1986) を鑑賞したばかりというのも手伝ってテンション上がりまくってしまった次第。
以前の鑑賞歴を追うと7年前のことらしく、お恥ずかしながらかなりの割合で記憶が飛んでいた…。その分楽しめたのでよしとするも、その理由はその7年間に積み重ねた邦画鑑賞歴からきているらしいことは明白。当時では反応できなかった名前の認識率が格段に上昇している。ぽろぽろと拾ってみると…
まず淡路恵子。1949年発表の本作が映画デビューだったらしく直近では三船との共演である「男はつらいよ 知床慕情」(1987) にてお見かけしていたからそれだけで感慨もひとしお。で、本作が映画デビューだったのはもう一人いてそれが千秋実、志村喬と合わせて本作では既に七分の三が共演していたことになり、宮口精二が本作より先に黒澤作品に出演していることをカウントするとあと三人を集めるのに本作から五年を要したことになる…というのは不毛な計算か。飯田蝶子にいたってはこの七年の間に小津作品等を通してミフネ本数を超えてしまっているはず。似たような話は千石規子にも当てはまるのだろうか、最近で記憶に残るのは「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」(2007) で彼女が登場するワンシーンで、彼女の出演歴はは二一世紀にまで突入してしまっている…。菅井一郎の認識度は溝口健二作品、木下惠介作品らを通して認識度は格段に上がっているし、三好栄子は本作が登場時点では映画出演歴はまだまだ浅かったという事実も目を引いた。スタッフ側では本多猪四郎の存在が大。この時点ではまだ彼の監督作品は世に出ていないのだから。
そんなこんなで、今年のミフネ誕生祝いはことのほかHappyな気分にて。 -
ストーリーより、戦後間もない時期をリアルに映し取った映像が面白い。
実際の闇市で隠し撮りしたとか。素晴らしい。 -
黒澤明監督 1949年作品
三船敏郎 志村喬
戦後の混乱期
人たちは うだる暑い夏で ギラギラしていた。
本当に暑いという感じがよく出ている。
踊り子の汗の描写が暑さを感じさせる。
雨もよく降る・・・。
暑さと雨・・・が、徹底して写される。
復員した
警視庁捜査1課の新米刑事(三船敏郎;当時29歳)が
混んだバスの中で
弾が7発はいったピストルをスラれた。
1課課長はスリ専門の捜査3課に相談にいけ という。
スリ課長は その身元がすぐさま割れる。
実に、アナログな ファイルなのである。
ピストルが盗まれたというのに、ずいぶんのんびりした展開。
スリのお銀につきまとい・・・
ピストルの闇市場を教えてもらう。
野球場は人でいっぱいである。
ジャイアンツ 16番川上 25番別所・・・
ゆったりした野球である・・・。
そこで売っているキャンデーが 20円。
三船敏郎はいう
『世の中には悪人はいない。
悪くなる環境があるだけだ。』
すると
コンビを組んでいる 志村喬刑事は言う
『羊がいる中で、オオカミのような悪いやつがいる。
犯人の心理分析は小説家に任せておけばいい。』
復員したときに 列車の中で、かばんが盗まれたといって
悪の道に走っていった遊佐(木村功)
ぬすんだ三船敏郎刑事の拳銃で 次々に 人を撃っていく。
志村喬刑事は言う
『狂犬の目はまっすぐしか見えない』
といて、並木晴美(淡路恵子)をマークするのだ。
実は三船敏郎も 復員の列車の中でかばんを盗まれたのだ。
三船は言う
『確かに社会は悪い。しかし,社会が悪いからといって
悪い事をする奴はもっと悪い』
犯人を追いかける サスペンス刑事物語を
黒澤明監督がとっていたとは・・。、
三船の雰囲気が 実にまっすぐな青年を演じていて
好感が持てる・・若さがあふれ出ている。
混乱から 秩序への象徴化。 -
野良犬初見。三船敏郎と志村喬が同じ立場の仲間としてがっつり共演しているのはなんだか意外とあんまりないような気がしたので、ちょっと新鮮な気持ち。
演出がすばらしい。
転ぶとか歩く一つとっても、映画の中のリアリズムとはまさにこれ!というすばらしさ。
ドヤ街を流し撮りするみたいなシーンなどオーケストラのよう。後ろで箸が動けば前でバケツの中身をこぼし、人が振り返る。
言うまでもなくあらゆるドラマや演出の原型という感じ。 -
ギラギラしてて熱い。
若い三船敏郎も、戦後の貧困と復興が入り混じった東京の街も、夏の暑さも。
その中で、どっしりとした岩のような志村喬の風格は格別。
犯人を追い詰めたホテルで、色々な不運が重なっていくシークエンスが素晴らしい。
観る者に「嫌な予感」を感じさせるあの不穏な空気。
黒澤はサスペンス撮らせても一流だなと、うなってしまいました。
緊張感が張り詰めたシーンに、ピアノや童謡を使うといった演出も印象に残る。
三船敏郎って、若い頃あんなにイケメンだったのね。
(1949年 日本) -
新米刑事が、満員電車の中でスリにあうことから事件は始まった。すられたのは、拳銃、コルト。このコルトを使った事件が起きてしまい、刑事は自己嫌悪に苛まれながらも、犯人を追う。
この歳になって初めて、黒沢明監督作品を見た。日本人として恥ずかしい。
音割れがひどくて、日本語字幕無しでは到底聞き取れません。でも、内容も面白いし、緊迫してゆく空気が伝わってくる、良い映画でした。
白黒映画ばかり見ていると、カラーの色彩豊かな表現がされてる映画が恋しくなりますな、しかし。 -
(1949年作品)
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拳銃を掏られた刑事が、上司と一緒に捜査をしていき、犯人を捕まえるという話。主人公と犯人は、実は同じ兵隊であるという過去があり、同じように、戦争の帰りにバッグを盗まれて世間を憎んでいたという体験があった。その二人が、まったく真逆の人生を歩むことになるというのが面白かった。それ故に、なぜ上司の「犯人のことなんてすぐに忘れる」という言葉がしめくくりだったのかよく解らなかった。ちょっとしたシーン、最初の射撃場や、バーの風景なんかが伏線になっているのもまあ面白かった。
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60年後の現在からすれば、サスペンスもリアリズムも取るに足らないものですが、以降のテレビドラマなどがお手本にしているようなプロットです。
天国と地獄と同じく、貧困や生活の歪みなどが問題視されています。
いわゆる社会派と当時は呼ばれた映画なのでしょうか。
殺害現場のグロテスクさを意識的に避けたのでしょうが、そのために三発の弾丸の行方がボケてしまっているのではないかな。 -
2010年10月17日(日)、鑑賞。
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黒澤はサスペンスをとっても一流。手に汗を握るドキドキ感がたまらない。
<a href="http://d.hatena.ne.jp/yasyas/20041105">「野良犬」レビュー</a> -
三船演じる若い刑事の息遣いや汗の垂れる音、志村喬演ずる老練な刑事のじわじわと追い詰め、そしてラストの犯人との格闘に驚嘆。
終戦のバラック街や混乱をリアルに描いていて、時期が夏なのでとても「ギラギラ」した映画です。
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