晩春 [DVD] COS-021

監督 : 小津安二郎 
出演 : 笠智衆  原節子  月丘夢路  杉村春子  青木放屁  宇佐美淳  三宅邦子  三島雅夫  坪内美子  桂木洋子 
  • Cosmo Contents
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4582297250413

感想・レビュー・書評

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  • 「紀子三部作」ともよばれる三本のうち一本目にあたるのが本作。ちなみにややこしいのがこの三本に「早春」(1956) は入っていないということ。英題には「秋日和」(1960) をLate Autumnなんて訳してしまったのまで存在しているのでさらに面倒くさい。ただ最近やっと「小津=原節子」ではなくなってきたので区別はつきやすくなったが。ちなみに「小津=笠智衆」であることはどうがんばっても否定出来ない(苦笑)

    前回鑑賞したのは今回鑑賞したのと同じ映画館でFive Japanese Divasと題したシリーズにおいて。その頃はまだ小津作品の初心者といった様子で、独特の微妙に長い間や、筋には関係ないと思われる余計な台詞、俗にいうImaginary Lineを無視したカット割りといった小津作品固有のなにかに、どこか船酔いの様な違和感を感じつつ観ていたことをなんとなく思い出しながら観ていた。ただ今回の会期中にその船酔いもすっかりなくなってしまったが(笑)

    三宅邦子が家族の外の人として描かれていたことをすっかり忘れていて、意外な感じがしたのも事実。やはり小津作品は固定キャストが多いだけにそれぞれ1回ずつ観ただけでは頭のなかで整理がつかなくなってくる。

    最初のクレジットにて桂木洋子の名を見つけ、「おっ!」と反応できるようになったのはこの2回の鑑賞の間に木下惠介監督の「肖像」(1948) と「日本の悲劇 」(1953) がはさまっているため。ただ期待に反して彼女の登場場面は残念ながらごく短く…。

    本作は「風の中の雌鶏」(1948) が世間受けしなかったのをうけてその翌年に作成されたという時間軸を通してみてみるとさらにまた感慨深い。世間には小津作品を時系列に従って俯瞰して彼の心理的な移り変わりを推察するのが好きなファンもいるらしいが、今の自分はまだその域には達していない。その域に近づくためには発表年順に全作品を再鑑賞してみないとならないのかも。んー、重い課題だ。

  •  強がって大丈夫なフリして娘を送り出すお父さんがいじらしい。

     お嫁には行きたくない。お願いだから、お父さんといっしょにいたい。…と言う娘。公開当時の娘を持つお父さんの心を鷲づかみ?
     正直、今の感覚としては理解しづらい。
     だったら入り婿をもらえばいいじゃん? と言ってみたくなる

     大きな瞳の原節子の眼ヂカラは本当にすごいと思う。
     キャラ設定としては気立てのいい優しい心のおっとりしたお嬢さんなのだと思う。だけれど、あの瞳がひとにらみするだけで、なんだか内に魔女的な何かを秘めてるような気がする。
     何を考えているかわからないと思う。

     小津安二郎作品はカメラの構図がすごく面白い
     清水の舞台を、手前側から撮る作品をはじめてみた。ふつうは京都市街が見えるように奥側から撮ることが多いと思う。
     また柱の間から人物を撮ったりと面白い。
     これらが新鮮で面白いと感じるのは、現代の映画などの映像作品の手法が確立されていて、その教科書を大きく外れる映画がないからだろうと思う。

  • 原節子さんが美しい!

  • 紀子の感情の揺れ、父親の感情の揺れが、演技だけでなくお部屋のカットからも伝わってくる。映画ってすごいなと思います。

  • 秋刀魚の味と同じ話。

  • 父と娘、お互いを想い合う気持ちがよく描かれていていい映画だった。
    京都への旅行の最後の夜、このまま父といたいという娘に、そうじゃない、結婚するだけじゃなく、そこからふたりで幸せになっていくんだと諭す父。いつでも親は子の幸せを願っているんだよな。当たり前なんだけど、ついつい忘れがちになっているかもな。
    紀子が三つ指をついてこれまでのお礼を言い、父が幸せになるんだよ、と応えるシーンでは涙が出てきた。

    紀子を送り出したあと、居酒屋でアヤと酒を酌み交わすシーンもよかった。自分が結婚すると嘘をつかなければ紀子がお嫁に行くと言わないだろうと。それを聞いたアヤがおでこにキス、そのときの驚いた顔がなんともいい。

    最後はりんごの皮をくるくると剥き、その皮がポトリと落ち、首をうなだれる。これにもグッと来た。

    静かな場面展開、音楽もとてもいい。

    途中、再婚話で父に対して不信感を持つ紀子の表情がそれまでの輝くような笑顔と打って変わって曇っているのが気になって仕方なかったが、その分、京都の宿での笑顔、そして最後の花嫁姿が美しく映えた。

    小津が原節子と組んだ最初の映画なのか。
    アヤ役の月岡夢路はきれいだった。原節子はけっこう独特な顔してるな。美人といえば美人だしおばさん顔といえばそんな気もする。

    wikiの「壷のカット論争」読んで、なるほど、そういう議論があったのかと知ったが、たしかに途中、単なるファザコンを超えたものを感じさせたな。とくに京都の最後、「このままずっとお父さんといたいの」というところでの真に迫った感じなど。壷のカットの前では小野寺のおじ様にひどいことを言ってしまったと述べていることから、再婚に対する悪いイメージが消えたことが伺える。そして「お父さんのこと嫌だったのだけれど…」で台詞は止まるが、そうすると父の再婚話しも受け入れることができたということではないか。

    この映画に限らず、「麦秋」でも「お茶漬の味」でも、鉄道が力強く走るシーンが出てきたと想うが、静的なシーンが多い小津映画において、この鉄道のシーンはとても動的でなにか活力のようなものを感じさせるなあ。

    お寺や日本家屋をモノクロでしっとりと撮影したくなった。

  • ちょっと甘ったるすぎるか。誰もいなくなった部屋のショットほど雄弁なものはない。小津安二郎のDVDをワンコインで手許に置けておつりが来るってのはすげえな。

  • 父親一人になってのラスト。観るに堪えないほどの寂しさ。笠智衆の意向で泣くべきところ泣かずに済ましたというが、泣いてもいいのではと思った。「女の子はつまらんよ」とか物凄く寂しい台詞もあったわけだし。
    でも、登場人物が泣くほどの寂しさを堪えるからこそ観る側が泣けるわけか、とも思った。
    笠智衆が泣いていようが泣いていまいが名作に変わりはなかったろう。

  • 『秋刀魚の味』とすごく似ている事に途中から気付く。森節子もいいけど岩下志麻もよい。脇役なのにびっくりするぐらい綺麗な人が映ってたりする。恐れ入ります。

  • 「わたし、お父さんと一緒にいるときが一番幸せなの」
    こんなこと言う娘(しかもとびきり美人)がいるかねーと思いつつも、嫁にいく娘と父の心情には現代と変わらぬ普遍性があり、「さすが小津安二郎だなぁ」とじっくり見入ってしまいました。その反面、昔の人はこんな風に周囲にすすめられて簡単に結婚しちゃうのかと、現代とは異なる結婚事情にしみじみ。

    こんな美人で気立てのいい娘と結婚する男はどんな奴だろうと思ったら、最後まで出てこなかったのでびっくり。トリッキーなこともやるんですね。

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著者プロフィール

1903年東京深川に生まれる。1923年、松竹キネマ蒲田撮影所に撮影部助手として入社。大久保忠素組の助監督を経て1927年、時代劇『懺悔の刃』で監督デビュー。以来1962年公開の『秋刀魚の味』まで、全54作品でメガホンをとり、サイレント、トーキー、モノクロ、カラーそれぞれのフィルムに匠の技を焼き付けた。1963年腮源性癌腫により死去。1958年紫綬褒章受章、1959年芸術院賞受賞、1962年芸術院会員。作品『生れてはみたけれど』(1931)、『出来ごころ』(1933。以上、松竹蒲田)、『戸田家の兄妹』(1941)、『晩春』(1949、芸術祭文部大臣賞)、『麦秋』(1951、芸術祭文部大臣賞)、『東京物語』(1953、芸術祭文部大臣賞、ロンドン映画祭サザランド賞、アドルフ・ズーカー賞)、『早春』(1956)、『東京暮色』(1957)、『彼岸花』(1958、芸術祭文部大臣賞)、『秋日和』(1960、芸術選奨文部大臣賞。以上、松竹大船)、『宗方姉妹』(新東宝、1950)、『浮草』(大映、1959)、『小早川家の秋』(宝塚作品、1961)ほか。

「2020年 『小津安二郎「東京物語」ほか【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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