吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲 (F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション) [DVD]

監督 : F・W・ムルナウ 
出演 : マックス・シュレック  アレクサンダー・グラナッハ  グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム  グレータ・シュレーダー 
  • 紀伊國屋書店
3.67
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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4523215036009

感想・レビュー・書評

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  • <私的ホラー映画祭㊳>
    これは怖い。まず、ノスフェラトゥの無駄に長い爪が恐ろしい。そして黒い馬車は、森を駆けて行くとネガが反転する。すごい。

    棺桶を自分で馬車に乗せ、ふたを閉めて船で移動するところなど、吸血鬼なのに案外、律儀である。そして力の源が棺桶に入っている土、という設定も素晴らしい。




    【ストーリー】
    F・W・ムルナウ監督の演出。
    不動産屋の使いトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーはカルパチアの山々を馬車で伯爵の元へ向かい、トランシルヴァニアに向かう。宿屋では日が暮れると危険と警告を受けます。次の日に馬車で伯爵の城に向かいますが橋のたもとで馬車は引き返してしまいます。
    黒ずくめの馬車が迎えに来ます。異様な効果で有名なネガ反転のショットはトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが黒ずくめの不気味な馬車で伯爵の城に向う時にワンショットありました。
    伯爵の城に着きます。食事にて伯爵の前でトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが指を切ってしまうとこをしっかりとクローズアップショットで強調されて描写されていました。翌日、手紙を書くトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー。夜になります。不動産契約書を見る伯爵。この後で伯爵の決めゼリフがいい。トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーの奥さんの写真を見て「君の奥さんの咽は美しい」なんて言ってます。
    深夜、トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーを襲う伯爵。ここで遠く離れていても思いが通じる描写がありました。奥さんのエレン/ニーナがトランシルバニアの城にいる夫トーマス・ハッターのことを虫の知らせを感じて思い、それが通じてオルロック伯爵=ノスフェラトゥから護ったことになったからです。まわりの人から見れば奥さんのエレン/ニーナは紙一重の危ない人ですけど。
    城にてトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが昼間の伯爵=ノスフェラトゥはどこにいるか発見するとこもなかなかの描写。棺桶で眠っているのですが閉まったフタの割れ目から顔が覗いているとこが強烈。
    城から出発する伯爵=ノスフェラトゥ。伯爵=ノスフェラトゥは棺桶の発送等は全部自分でやっていました。城から脱出するトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカー。
    棺桶は船に積み込まれます。その船はヴィスボルク/ブレーメンの街へと向かいます。ブルヴァー博士/ヴァン・ヘルシング教授の食虫植物の講義。ライバル・キャラの紹介といったとこです。
    不動産屋のノック/レンフィールドは直接コンタクトしたわけではないのにいつのまにか伯爵=ノスフェラトゥのしもべとなっていました。
    伯爵=ノスフェラトゥのケースは遠く離れても思いが通じるコインの裏ということかもしれません。
    海岸で夫トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーを待つ奥さんのエレン/ニーナ。手紙が届きます。
    棺桶を積んでバルト海を航海中のデーナーテール号。乗客と船員は次々と死亡して船長と1等航海士の2人だけとなります。船にて1等航海士の前で棺桶から姿を現すシーンも1922年の製作と思えばなかなか強烈でした。直立したままの不自然な動きでゆらりと立って動きがあるのは長いかぎ爪のある手だけというものいい。ムルナウ監督は人間の目は動きのあるとこに引きつけられるということがもわかっているようです。
    船長がただ1人残り船の操舵輪に身体を縛りつけます。伯爵=ノスフェラトゥは船上を歩き横切ります。

    デーナーテール号がブレーメンに入港します。船倉から出る伯爵=ノスフェラトゥ。これがハッチが自動で開いてそれから出てきます。異様な感じがします。
    トーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーも陸路で戻ってきます。
    伯爵=ノスフェラトゥは街についてからも自分で棺桶を持って行動していました。ドアを開けないでオーパーラップで家に入ります。
    そういえば自分の家はすでもこの街に買ってあったのか。筋が通っています。
    棺桶には呪われた土が入っていて吸血鬼の力の源だそうです。
    ペストだと街に告示がなされます。ネズミの使い方はペストを表しているそうです。
    エレン/ニーナは黒い服が多い。具合の悪いエレン/ニーナを心配してトーマス・ハッター/ジョナサン・ハーカーが教授を呼びに行った隙に伯爵=ノスフェラトゥがエレン/ニーナの部屋にやって来ます。ここがクライマックスのシーンです。
    ドイツ表現主義の光と影を使った手法となっています。

  • アメリカのアマゾンからリマスタリング版を購入しました。今から90年も前の映画なのに、ここまで画質がきれいなのには感嘆するしかないですね。
    さて、映画ですが、同じドイツ表現主義の映画といっても、「カリガリ博士」の場合は美術が素晴らしかったのに対して、こちらはなんといっても撮影技術がとんでもなくすごい。この時代にここまでいろんなテクニックを駆使できた事実には驚嘆あるのみ。作り手に想像力、イマジネーションがあれば、どんなハンディキャップも跳ね返すという好例でありましょう。
    それにしても、この映画におけるバンパイアというのは「疫病」の象徴なんですね。以後のドラキュラ映画のテーマはみな「永遠の若さ」「不死」であったりするのに、これはそうではない。そこのあたりもひじょうにユニークであると思いました。

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