明日、君がいない [DVD]

監督 : ムラーリ・K・タルリ 
出演 : テレサ・パーマー  ジョエル・マッケンジー  サム・ハリス  クレメンタイン・メラー  ゼイヴィア・サミュエル  フランク・スウィート  マーニ・スピレーン  シャールズ・ベアード 
  • アットエンタテインメント
3.77
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本棚登録 : 573
感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4529264125701

感想・レビュー・書評

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  • ある日の高校。一見、なんの問題もなさそうに過ごしている高校生たちにも人生に関わるような悩みを抱えてその日をサバイブしていたりします。親にも相談できず、教師もサインに気づかない日常はもはや監獄にいるかのようです。アドベンチャーゲームのように、別人格に乗り換えていく撮影手法は新鮮でした。悲劇が起こる2:37の場面はショッキングですが、なによりこの作品が若干21才の俊英の手によるものというのも驚きでした。そんなムラーリ・K・タルリ監督がその後、作品を作っていないのはどういうことでしょうか?

  • まるで辻斬りのような映画だったなあ。

    監督は当時19歳。
    友人の自殺や自身の自殺未遂の経験を元にこの映画を作ったという。
    映画製作の経験はなかった。
    二年の制作期間を経て出来上がった彼の「想いの結晶」は世界中に届けられ、各地の映画祭で絶賛されるものになる。
    そして、うちのDVD デッキにも届いた。

    高校のトイレの個室で誰かが大量の血を流している。
    それは誰かは分からない。

    とある高校生達の一日と彼らへのインタビューで構成されている。
    彼らは口々に自分の「悩み」を語る。
    共感できるのもあれば出来ないものもある。
    でもみんな自分のことでいっぱいいっぱいだ。

    観る人は「犯人」を予想するように彼らを見る。
    「どうして?」「なんで?」「誰が?」

    でもこれはミステリー映画ではない。
    19歳の男の子の
    「俺(ら)の痛みを体感しろ」
    との圧を感じる。

    最後のほう「誰か」が自殺するシーンの「真相」が明かされる。
    ホラー映画も鑑賞し、グロいシーンも割りと平気な私がとても辛かった。
    観た後もしばらくその場面を忘れられないほど。

    『ひとりでも自殺者が減ってほしい』

    そう監督は語っていたそうだ。
    ヤフー映画に載っていたこの監督の作品はこの一作のみ。
    言いたいこと言い切っちゃって、称賛も浴びまくっちゃったからかな。

    落ちてるときに見ないほうがいいかもしれません。

  • ハイスクールを舞台に、六人の男女が抱える苦悩を描くドラマ。

    ある日の午後、学校のトイレで誰かが死んだことを暗示させるシーンからこの映画は始まる。しかし誰が死んだのかは明らかにされない。次に、場面はその日の朝へと逆戻りする。そこからハイスクールの生徒である六人の、午後へと至る半日が克明に映し出される。カメラの視点は六人の主観を絶え間無く行き来し、独白形式のインタビューも挿入される。観客達は自然と、「この六人のうちの誰が死ぬのだろう」と考えるようになるだろう。

    六人はそれぞれ深刻な悩みを抱えている。妊娠、失恋、いじめ、身体障害、同性愛などだ。どれもかなりヘビーなものであり、多感な高校生たちは瞬く間に精神を擦り減らしていく。誰が死んでもおかしくないような状況を目の当たりにして、観客の頭はフル回転する。誰が自殺するのに相応しいのか?と。「他の五人に比べたら失恋は弱いかな」「近親相姦で妊娠したら生きていけないだろう、こいつかな」「ゲイがばれたらそりゃ辛いよな」

    だが、六人は誰も死なない。兄の子を身籠っても、失禁する障害があろうとも、皆しぶとく、したたかに生きる。

    一人、脇役の女の子がいる。主役の六人にはもちろん入っていないし、インタビューもない。それゆえ内面が描かれることがない。そもそも登場回数が少なく、劇中での存在感はほぼ皆無だ。しかし、少ない登場シーンから察するに、彼女はとてもいい女の子だ。主人公の一人に寄せる恋心は純粋で、いじめられっ子にも優しい言葉をかける。主人公六人組のような問題も悩みも抱えていないであろう、普通の子だ。

    しかし自殺するのは彼女だ。しかも、何も理由が示されることなく。

    物語のつくりとしては確かにアンフェアかもしれない。六人だと思っていた主人公が最後の最後で一人増えたようなものなのだから。これでは誰が自殺するかなど予想できたはずがない。その通りだ。ただ、この映画はミステリーではない。若者を描いたドラマとしてこの作品を見ると、この真実には大きな示唆があるのではないか。

    あれだけ葛藤していたはずの六人は誰も死んでいないのだ。ある人間は偽善ぶって、ある人間は抵抗を諦めて、それでも器用に逃げ道を作りながらしゃあしゃあと生き続けている。反面、死んでしまったケリーの悩みは何一つとして明かされない。ただ自殺という結果が無機質に提示されるだけだ。そんな理解不能で唐突な自殺に、視聴者達は戸惑うだろう。「死ななければならない理由」をあれだけ赤裸々に吹聴している生徒達は死なず、黙して語らなかった純朴な少女は死ぬことになった。自殺するとはそういうことなのかもしれない。

    世界には解説付きの自殺が溢れている。「あれが決定的な要因だ」「その時のそれが原因で彼は命を絶った」「もしこれに気付けば、彼は自殺することもなかっただろう」

    違うだろう。確かに、私が君の自殺を納得するためには丁寧な注釈や長々しい解説は必要かもしれないが、君自身は自殺を決意した時に注釈も解説も必要としなかったはずだ。ましてやそれを誰かが知ったような顔をして語ったところで、真実など見えるはずがない。

    分かるものではないし、分かるはずもない。それでいいのだろう。残るのは『明日、君がいない』という無味乾燥で取り返しのつかない事実だけだ。

  • 原題:2:37 (2006年) ※日本公開 2007年
    収録時間:99分

    コロンバインに雰囲気が似てるなぁと観始めて思った。
    モキュメンタリー調な感じ。
    この映画は邦題も素晴らしくハマってると思う。
    初めに概要で6人の内の誰か1人が自殺するというのを前提に…というのを読んでいたから、ちょっと予想しながら観ていたのだけど、まぁ見事に外しました。
    というか、6人じゃないよね、7人だよね。
    そりゃ当たらんよ…ということは置いといても、他の6人の方が側から見れば自殺の動機にもっともらしい背景があるのだけどね。
    ゲイが理由で差別されたり、兄からの近親姦。からの妊娠、生まれつき尿道が2つあって粗相をしてしまうが故にイジメられ…等など、中々ヘビーな背景を持ってる人達が揃ってるわけだけど、自殺したのは彼らに優しく声をかけていた女の子だったんだよねぇ。(主要キャラじゃない)
    辛い辛くないの基準は本人が決めるっていうのは大前提だけど、「無関心」「孤独」これが理由だったのかなと。
    自分の存在意義ってなんだろう…って事だよね。
    マーカスが最後の方で「助けを求めてくれてたら、何かできたかもしれない」的なことを言ってたけど、あんた話途中で遮ってましたやん(苦笑)。
    逆にメロディだったかな?は初めの方で「友達や親は居るけど何かあっても話せない。話しても全ては理解されないから」と言っていたから、もしかしたら他にも理由があったのかも?
    いかにも自殺しそうな人よりも、そんな兆候を一切見せないような人が自殺するっていうのは結構リアルだなと思った。
    ただ、性被害を受けてる人ってもっと露出しない服装(不自然なくらい隠す)するんじゃないかとか、尿道が2つある子も何か他に工夫の仕方があったんじゃないかとか疑問点はいくつかあったかな。(見るべきところはそこじゃないんだけど)。
    でも弱冠19歳でこんな映画を作るは素直に凄いと思う。

  • 【あらすじ】
    オーストラリアのある高校でPM2:37、誰かがトイレの中で自殺しているらしいところから始まる。物語は同日の朝から主要人物のインタビューを交えて語られる。

    【主要人物】
    ・マーカス:尊敬する父と同じ弁護士を目指す一方、好成績を強いる父に怯えている節が。当日は右手を負傷している。
    ・メロディ:マーカスの妹。優秀な兄に比べ親に期待されていないことに悩む。当日は朝から号泣している。
    ・ルーク:スポーツ大好き典型的マッチョ。オタクやガリ勉を軽く見ている。当日朝はセルフ。
    ・ショーン:最近カミングアウトしたため、学校でも家でも孤立。当日はマリファナ。
    ・サラ:ルークと付き合い、彼を心から愛し、結婚を夢見る。皆自分らカップルに嫉妬していると思う。当日も美に気を使う。
    ・スティーブン:イギリスから引越してきた。片足が短く尿道が2つある障害があり、意図しない尿漏れを起こす。当日も周囲からからかわれている。

    【以下ネタばれあらすじ】
    メロディが号泣していたのは、おそらく前日マーカスにレイプされたため(その際マーカスは右手を負傷)。しかも妊娠検査薬で陽性が出てしまった→たまたまトイレで吐いていたサラ(拒食症か?)はそれを目撃、自分が愛しているほど自分に愛を注いでくれないルークがはらませたのでは?疑惑、つい友達にメロディ妊娠をもらす→その友達経由で知ったマーカスはメロディに激怒。

    一方ゲイであることをルーク含む体育会系からあざ笑われるショーンは、トイレでルークに詰め寄る「お前もゲイじゃないか!」→そう、実はルークとショーンはある意味そういう関係であり、サラに全力で愛を注げないのはそういう関係だったからである。ちなみに朝のセルフはそういうHPを見て致している。

    たまたま2回目の尿漏れを起こし、代えのズボンがなかったスティーブンは彼らの言い合いを聞いてしまう→ルークに鼻パンチされる。その後、自殺したのは主要人物ではないケリーだった。

    何という痛ましい作品でしょう。ネット上のレビューを見ても評価がまっぷたつな感じです。

    インタビューで6人全員が口にする言葉「どんなに親しい人にも話せないことがある、理解されない悩みがある」(的な意味のセリフ)

    ただこのインタビューで気づくのは、彼らの悩みは話せば(視聴者である我々に)理解できる悩みということです。確かに彼らの体験は痛ましいし、のほほんと生きている私には心から理解はできないであろう。しかし、もし彼らのうちの誰かが自殺したら、あーなるほどそういう訳でね、と視聴者として推測できる。

    しかし非常に悲しいのは、結末で実際に死んだケリーの悩みは絶対に理解できないし、推測すらできないということです。登場人物たちも、視聴者である我々も、完全にケリーが蚊帳の外で無関心だったし、ケリーはインタビューで心の内を全く語っていないからです。

    実際に同じ体験(身近な人の自殺)をすると味わう喪失感を描いているところがとても悲しい。この置いてけぼり感は異常。

    監督は「この映画を観て、1人でも自殺を思いとどまってくれる人がいたら」とのこと。ケリーもただ一言でも何かを語ってくれたら、私は理解できなかったかもしれないけれど、彼女の後の行動が変わったかもしれない。
    主要人物6人のように生きていてくれたかもしれないというメッセージを作品から考えました。

    しかし名作ではあるが、何度も観たくはならない重い作品です。

    ※2006年3月-2011年1月までやってたブログより転載

  • 原題は、「2:37」
    2時37分に誰かが自殺しまう。

    誰が自殺したのか。色んな悩みを持った人が登場するけど結局死んだ子は、それをまったく顔に出さない笑顔の素敵な女の子だった。

    泣きながら手首を切るシーン。コップから水が溢れるように、溜め込んだ感情が血として流れてるみたいで痛くて痛くてつらかった。

    この映画を観ていた人はきっと彼女を気にもとめてなかった。つらさが伝わってこなかったから。

    つらいとき泣いてしまう人がいる。怒ってしまう人もいるだろうし、叫ぶ人もいると思う。でも、笑ってる人もきっといる。その人が孤独だとはきっと思わない。

    これは映画の中で完結する話ではなくて、観ている私たちに向けられた作品です。

  • 映画製作の知識も何もない青年が親友の自殺と自身の自殺未遂経験を元に、僅か19歳で撮りあげた渾身の一作。 これはもう思い入れがハンパじゃないから正当な評価なんて出来ないよ。悩みながら高校に通ってた18歳の頃に観て救われたというか、生きてていいんだって教えられた本当に大切な一本。人それぞれ特別な映画ってあると思うけど自分にとってのそれ。デビュー作故にまだまだ粗削りで『エレファント』の模倣なのは明らかだし、大人からしたら幼稚でわがままなただの子供に見えるかもしれない。でも、それでも言いたい《ありがとう》と。この感謝の気持ち死ぬまで忘れたくない、生涯BEST。

  • なんてことのない、とある高校の一日。
    いつもの当たり前の光景。
    そんな中、一人の生徒が自殺を図る。
    2時37分、その生徒が自殺した時間である。
    物語はその日の朝から始まる。
    主要な登場人物たち6人の日常が交互に描かれていく。
    果たして、誰が自殺を図るのか、そしてその自殺の理由とは。

    そのような謎解き要素を含み、物語は進んでいくが
    まさにラストで我々は驚愕する。
    そう、所詮我々の考え、そして期待など陳腐なものだと。
    ある意味、人間の本質というものをしっかりと捉えた作品だろう。
    誰もが理解できず、そして理解する。そんな物語だ。

    撮影の手法的にはガス・ヴァン・サントのエレファントを
    彷彿とさせるものだというのは一目でわかる。
    この物語を紡ぐにおいて、最良の手法だろうと。

  • 成績優秀なマーカス(フランク・スウィート)と妹メロディ(テレサ・パルマー)など、一見悩みとは無縁そうに見える6人の高校生たち。しかし、時間が経つにつれ、それぞれが誰にも言えない悩みや問題を抱え、今にも押し潰されそうになっている現実が明らかになってゆく。そして、午後2:37、1人の生徒が自殺を図り…。

    排泄器官の障害により虐めを受けるスティーブン(チャールズ・ベアード)、ゲイであることを公言して以来差別されるショーン(ジョエル・マッケンジー)、スポーツ万能でモテモテだがショーンと肉体関係にあるルーク(サム・ハリス)、ルークの恋人だが彼の心を掴みきれず悩むサラ(マルニ・スパイレイン)、妹を強姦した実体験をテーマに論文を提出する優等生のマーカス、その兄の子を身ごもるメロディ、この6人を中心に事件のあった午後2:37までを振り返るのですが、いずれも問題を抱えた人物なので「誰が自殺するのか」という興味と緊張感が途切れません。真相はミステリーとしてはアンフェアですが、製作者の意図を強く感じる良作だと思います。

  • ちょっと衝撃だった…。いきなり生徒の自殺シーンから始まり、自殺した生徒は誰なのか?6人の生徒の1日を振り返りながら探る展開。6人それぞれ悩み抱えてる中で最後はお前かよ!?と…。誰か気づいてやれなかったのか?声をかけられなかったのか?事が起きてからでは遅すぎる。現実は突然やってくる。

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