- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988105058644
感想・レビュー・書評
-
たいへん面白かった。副題は「説法する寅次郎」といったところか。
話を面白くする要素が盛り沢山。遊び人が慕われる賢者に早変わり、遺産相続で揉める諏訪家、出戻りの知的な女性、カメラ好きな放蕩息子、とその親父の坊さんとの確執、東京へ飛び出した恋人を追いかける田舎の娘。そこにおいちゃんおばちゃんの恋愛譚やら労働者・博のタコ社長への反乱なんかも絡んできて、てんやわんやの大騒ぎ。竹下景子、中井貴一、杉田かおると俳優陣も豪華でお上手。
なんといっても寅次郎の坊さん姿が笑えてくる。設定だけでも面白いが、意外に深いことを言ってのけるから油断ならない。「煩悩が背広を着て歩いているような男ですからな、寅は」と御前様が言っているように、仏の道には向かないかもしれないけれど、人の道のスペシャリストではあるのだよなあ。
大学の授業料を使い込むのは放蕩息子の王道行為。『炎上』でも似たようなシーンがあった。中井貴一が結構ダメダメな学生やってて、妙な仲間意識が芽生える。
本作はマドンナの方から迫られてびびってしまうパターン。竹下景子の袖引っ張りと上目遣いをくらったらたいていの男は何も考えずに食いついちゃうんだろうけれど、いらんことをまた寅次郎は考えてしまうのです。柴又駅のホームで上手に恋愛できない寅を目の当たりにするさくらの表情がたまらない。
ラストで諏訪家にパソコンがやってくる。もぐたこタタキなるゲームをやるためにプログラムを打ち込んだり、博が説明書を読みながら満男に指示を出している場面は、懐かしい気持ちになった。うちにあった初期のパソコンも同じようにしてパチンコとか麻雀やってたなあとか、手書きのプログラミング表が壁に貼ってあったなあとか。パソコン、因島大橋開通など、さりげなく時事ものを忍ばせるのが山田洋次。
7月25日追記:柴又駅のラストで寅次郎を問い糾すさくらが袖を引っ張るときの力の入れようと朋子の袖引っ張りの対比。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さくらの夫・博の亡父の三回忌に備中を訪れた寅次郎。そこで寺の和尚と娘・朋子に出会う。 シリーズ第32作