シークレット・サンシャイン [DVD]

監督 : イ・チャンドン 
出演 : チョン・ドヨン  ソン・ガンホ  チョ・ヨンジン  キム・ヨンジェ 
  • エスピーオー
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988131908258

感想・レビュー・書評

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  • イチャンドンの映画は『ペパーミントキャンディ』『オアシス』を観て、とても面白くてすごく好きになりました。韓国映画四天王の中だと一番好きかもしれない。

    『ペパーミントキャンディ』はちゃんと娯楽要素もある、韓国の現代史もの。続く『オアシス』は問題作というかかなり衝撃でした。こちらは聖痴愚や佯狂者的なラブストーリー。
    その中で心に引っかかってたのが、牧師さんが出るシーンで。韓国はキリスト教大国だけど、イチャンドン監督の宗教観ってどうなんだろう?と。
    そう思っていたら、『シークレットサンシャイン』はその問いに対する監督のひとつの回答のような内容でした。

    『オアシス』を観た少し後、大人計画の番組をやっていて。松尾スズキが舞台『ファンキー!』について語ってるのを観て、考え方がかなり近いなと感じました。
    もうひとつ、Switchインタビューの松尾スズキの回で私が印象に残ってるのは、「子供の頃に神様恐怖症だった」と言ってたこと。これは、「神様は自分を常に見ていて、自分のこれからの行動が全て読まれていると思っていた。だから神様に予測されないように、変な動きをしていた」というもの。それは『シークレットサンシャイン』の内容とちょっと重なる。
    だから、イチャンドンと松尾スズキって、表現方法に違いはあれど、けっこう似てるような気がしてます。

    それと、私がよく思う「意味の解体」。「劇的なるものを疑う」とか。
    以前、エリックロメールの『緑の光線』を観て、感銘を受けました。娯楽作品、起承転結のある普通の映画も大好きだけど、「なんにもない」けれど面白い映画はすごくって。
    『シークレットサンシャイン』も、一般的な起承転結からはだいぶ外れてる。内容自体は劇的だけど、映画は劇的な書式に沿ってない。そして、現実世界は不条理なものだから、リアルに感じます。

    リアルさという面で言うと、イチャンドン監督は女優さんをブスに撮るのがすごく上手い。もちろん女優なので、ちゃんとお化粧をすると美人だし、演出上そう撮ってるシーンもあるけど、そのへんにいる女性としてリアルに撮ってると思う。
    普通の韓国ドラマで私が気に食わないのは、韓国で流行っている美人顔の女優さんばかり出てるからなのも理由のひとつです。

    良い映画は色んなジャンルが混ざってることが多いですが、この映画では恋愛も大きい要素。先程書いた「常に見ている存在」、それがソンガンホさん。

    監督インタビューも読んだけど、とても良かった。影響を受けた監督として、ジョンカサヴェテスとイングマールベルイマンの名前を挙げていました(そういえば、ベルイマンと言えば「神の沈黙」三部作だわ)。

    以下引用
    「最近作られた映画には、観客を限定した作品が多いと思います。例えば、作家映画や芸術映画、映画祭で観られるような映画は、作り手が観客を限定し、理解できる人だけが理解できるようになっている気がします。その理解できる枠もだんだん小さくなっているようで、内輪の分かり合える人だけが意思の疎通を図っているような気がしてなりません。映画を全体的に見ると、両極化しているような気がします。今言ったようなごく一部の限られた人たちだけが理解できる映画と、もうひとつは娯楽として消費されてしまう映画、そのふたつに分かれてしまったような気がしてなりません。私は、映画というのはどんな形であれ、観客と意思の疎通を図る、きちっと観客と向き合うものだと思います。特定の観客を対象にするのではなく、どんな観客とも出合って欲しいと思っています。もしかしたら、観た時にすこし窮屈な思いをしたり、違和感を感じる映画であっても、そういう風に思うことが心の通い合いのスタートですから、多少関わりづらい印象があっても、全ての人に映画館に足を運んで観て欲しいと思っています。」

  • 信仰の話ではないでしょ、これ? 信仰は、当て馬でしょ? それがわからないなら、この映画もわからないんじゃないの?

  • 突き抜けている。凄まじい。

    事前に何の情報も入れなかったので、あらすじすらほとんど知らないまま観たが、結果的にその方が良かったと思う。初見はできるだけ情報を入れず、先入観を持たずに観るのが個人的にはおすすめと思う。

    唯一無二の映画。

  • あのね、この映画はすげーよ?
    ライムスター宇多丸のタマフルで「はじめて胸をわしづかみにされる映画体験をした」と紹介されてましたが。
    あまりのリアリティというか、現実に自分も初めて、映画を見ていてディスプレイから目から反らしたくなりました。

    「救いはあるのか」っていう映画です。宗教すらも破綻してしまった先に救いはあるの?っていう。想像を絶する現実っすね。不条理な世界かもしれないけど、それでも、生きる。その意志の中に救いはあるのかもしれない。

    これを超える映画にはまだ出会ったことないなぁ。

    でもいきなりおすすめもできないけど。(笑)破壊力ありすぎて。
    死ぬまでには観てほしい映画です。

  • 人を裁くは神か他人か、被害者か。
    人を救うは神か他人か、被害者か。
    二度目観るのは辛いけど深く深く考えさせられる。

  • 長い。評価が高かったのでレンタル。
    交通事故で夫に死なれたピアノ教師(39歳)が
    密陽(題名の由来)に息子とやってくる。

    恋愛もの、と思ったら犯罪もの、さらに宗教物へ。
    個人的には合わなかった。

  • チョン・ドヨンの鬼気迫る演技には度肝を抜かれたが、あまりにも救いのない映画に観る気力がなくなるのも確か。言いたいことはわかるのだが、映画として楽しめるかは別問題。

  •  なんだか、つらい話が多かったです。愛する夫を失い、再出発のために新しい街に来たものの頼れるのは自分だけ、その中で頑張ろうと思っていた矢先に最愛の息子が誘拐、そして殺されてしまう。そして、心の拠り所を失った彼女は宗教に救いを求め、安心できたのもつかの間、殺人犯にまた心を乱され、壊されていく。。その間、ずっとそばで支え続けていく男。
     生きるって、なんだろう。一度外れたレールはもう元には戻らないものなのかな。どんなに頑張っても悪いことが起こり続けてしまう人も、その人自身が悪いことをしてるわけでもなく、むしろなんとかしようと必死に生きているのに、なんともならない。
     人のことをあーだこーだいうのは人助けになる場合もあればお節介になる場合もある。どこまで人のことに干渉していいものか、わからない場合の方が多い。だから、周りに人はこんなにたくさんいてもあまり関わりを持たなくなってしまいがちだけれど、個人的には一人でなんでもこなすにはあまりにもやらなきゃいけないこと、知らなきゃいけないことが多すぎる気がして。信頼できる誰かとここを埋め合うことのできる人間関係をどれだけ築けるかって、生きてく上で割と大事な要素の気がしてます。
     誰を信用したらいいのかは、結局その人の目利きになるのかもしれないし、信頼関係を築くには自分がどれだけ信頼をしてもらえる人物になれてるか、その人の力になれるものを持っているのかにもよるかもしれない。
     損得勘定で人づきあいをするわけではないけど、経験上寄生みたいな付き合いは長続きしない。やっぱお互いがお互いを必要とするような共生関係を築くためには、誰かの力になれる自分でいることって大事だと思う。それは能力の問題というか、その人への興味ってだけでもいいと思うけど。メール一通、電話一本で元気にできることもあるもんね。^^
     昔、誰かに教わったこと。勉強なんかできなくてもいい。仲間を作るんだ。これが一番大事なんだ。そのときも浅いレベルではあったにせよ「確かに」と思ってた自分がいた。今は、心からそう思う。一緒に笑って困ったことも相談できる仲間がいること、それがどんなに心強く、自分を前に進ませてくれるものか。自分は、そんな仲間にずっと恵まれてここまで歩いてきた。本当に、いっつも感謝してます。
     ジーコやマイケルジョーダンの考え方で、好きな考え方がある。自分で決めるなら何をやってもいい、でも決めたことへの責任は全て自分が持つんだ。
     誰かに決めてもらうんじゃなく、自分で決めて、自分で取り組んで、たとえ失敗しても誰かのせいにしないこと。これも、すごく大事だと思います。だからこそ、本気で考える必要がある。ド真剣に何をするか、誰とするかを考えて、決めていく必要がある。
     今調子のいい人も、今調子の悪い人もいると思うけど、次に何が起こるかなんて誰にもわからない。そういう中で偶然にも運命にも同じ時代に生きているのだから、手ぇ取り合って暮らしていけるといいなと思ってます。

  • 見た直後はなんだかよくわからない結末だなあと思ったけれど、思い返すたびに、ああ、これがいちばんリアルな終わり方だなと納得。希望も絶望もない。逆に、幸福のほうへも、不幸のほうへも、同時に分岐している。
    チンピラの男が信仰を見出し、絶望した女性が神に挑戦する。その過程で見出された、独特の愛のカタチとは。

  • なんだろうこの全体に漂うミヒャエル・ハネケ臭は……不勉強にして韓国のキリスト教の影響力の大きさとかそういうものを知らずに観てしまったので、調べてみて恥じさせられたことを告白しておく。このようなある種キリスト教に真っ向から対決するような映画を撮った勇気は賞賛に値する。とは言え、妙な力みを感じないというかお話自体は淡々と進んで行く。ドキュメンタリー映画的というか……回想シーンを特に挟むこともなく、わざとらしい過剰な演出もなく、なんとなく「厭な空気」を全体に漂わせているあたりがそっくりなような気がしたのだ。まあ、私の映画に関する知識は本当に乏しいのでアテにしないで読んで欲しいのだけれど……ハネケほど極端なロングショットも長回しも使っていないので、これに関してはいつもながら頓珍漢なことを書いてしまっているかもしれない。韓国映画には疎いのでこれからもっと勉強しようと思った次第。力作。好きにはなれないけれど。

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著者プロフィール

【著者】イ・チャンドン(Lee Chang-dong)
1954年生まれ。1981年慶北大学校教育学部国語教育科卒。1987年まで高校の国語教師として教壇に立つ。1983年小説「戦利」が東亜日報新春文芸中編小説部門に入選。1987年『焼紙』、1992年『鹿川は糞に塗れて』の2冊の作品集を刊行、作家として高く評価される。本書『鹿川は糞に塗れて』で第25回韓国日報文学賞受賞。1993年より映画の世界へ。2003〜04年、韓国文化観光部長官を務める。長編映画監督作品として「グリーンフィッシュ」「ペパーミント・キャンディー」「オアシス」「シークレット・サンシャイン」「ポエトリー アグネスの詩」、村上春樹の原作による「バーニング 劇場版」がある。2023年、フランスのアラン・マザール監督によるドキュメンタリー映画「イ・チャンドン アイロニーの芸術」が日本で公開される。

「2023年 『鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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