週刊 東洋経済 2009年 6/13号 [雑誌]

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  • テレビや新聞業界が軒並み赤字に転落する中、これらのビジネスモデルを支えていた「広告」も変化の潮目を迎えている。ネットメディアやウェブサービスの台頭に伴い、テレビや新聞に対する生活者の需要が減った結果、大手マスメディアに広告を打っても、その効果が得られないのではないかと企業が考えるようになった。それが、今の広告不振を生み出している。

    この号では、これまで大手ナショナルクライアントに精を出していた電通が、中小企業の広告代理を死にものぐるいで手がけている様子が描かれている。いわゆる「ロングテール」の収益を取りに行くモデルで、マス広告が効力を発揮していたころには思いもよらなかった「地べたをはう営業」にほかならない。こうでもしないと収益を確保できないという必死さがひしひしと伝わってくるとともに、広告業界も構造改革を迫られているのだなと痛切に感じる。

    現在広告で成功を収めているモデルとして、リクルートとヤフーの取り組みが挙げられている。この2社は、広告関連の利益率で電通より上だ。だが安穏とはしていられない。「どぶ板営業」と「購買につなげやすいメディア」を有するリクルート、ウェブ上でほかの媒体の追随を許さない圧倒的なページビューを稼ぎ出すヤフーでも、これまでの成功体験を捨て、多角化や新たな収益モデルをたてないと、これまで以上の利益は稼げないフェーズにさしかかっているという。広告業界はこれまでの成功体験をかなぐりすて、読者とクライアントの両方から信頼を得るモデルを作りださなければならない。

    4マスへの広告出稿の減少に対して比較的上り調子といわれるネット広告も、実は曲がり角が差し迫っている。ネット広告を届ける先に、本当に広告を見てほしい読者がいるのか、対象に情報が届いているのか、など、広告出稿主がこれまで以上にROI(投資利益率)をシビアに見積もってくるからだ。純広告の効果が薄れ、タイアップ記事を読者が退ける今、それを収益の糧とするネットメディアも変化していく必要がある。

    一方で、ネットやマスメディアなどを効果的に使い、広告効果を最大化する「クロスメディア」や、商品のブームを作りだす「戦略PR」を選択する企業が増えているという。広告を広告として見せていても、生活者には響かない。これに気付いた企業が、少ない予算でリーチを取る働きかけをしている。ユニクロのウェブマーケティングの一環である「UNIQLOCK」は、メディアを動かすプロモーションの代表例になっている。

    この時代、何においてもみずからが変化をしていかなければ生き残れない。ネット広告業界で働く自分にとって、「明日は我が身」の地殻変動が起こっていることは確かだ。

著者プロフィール

東洋経済新報社(トウヨウケイザイシンポウシャ)


「2022年 『就職四季報 優良・中堅企業版2024年版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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