- 本 ・映画
- / ISBN・EAN: 4523215038379
感想・レビュー・書評
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1990年フランス・イタリア合作映画。監督・脚本はルイ・マル。また、共同脚本(?)としてジャン=クロード・カリエール。主演はいい感じで年を重ねたミシェル・ピッコリ。その他に、ミル(ミシェル・ピッコリ)の娘役カミーユにミュウ=ミュウ、ミルの姪役クレールにドミニク・ブラン、ミルの弟役ジョルジュ役にミシェル・デュショソワなど。
ある日、一緒に暮らしていたミルの母が死んだ。ミルの家はボルドーワインを小ぢんまりと家族経営しているのだが、葬儀のために集まった親族連中は家や土地を売却しての遺産分配のことで頭がいっぱいだ。折しも1968年5月、フランスでは五月革命の嵐が吹き荒れ、全面ストの突入によって葬儀も執り行えなくなったまま・・・。
全体的にブラックユーモアに彩られた作品でしたが、それほどどぎついという訳でもなくスパイスのような感じで散りばめてあって、最後には家族愛のような温かみもあり、なかなか面白かったです。母の死によって、ミルと愛人(?)の家政婦さんの2人だけになってしまったのが、だんだんと親類などが集まってきて、しまいには大人数でのピクニックや飲めや歌えやの大騒ぎ、それに革命からの逃避行と、楽しいイベントが満載で、観ているこちらも喜劇として大いに楽しめました。
一方で、この映画のもうひとつの見所は、監督ルイ・マル自身の自省的な総括ともいえる脚本にあるでしょう。1968年5月、カンヌ映画祭における粉砕事件。フランソワ・トリュフォーとともに最も先鋭的であったというルイ・マルの言動は、その直後の五月革命の過激な行動に波及したといいます。さらにこうした政治行動は、ヌーヴェルヴァーグを担った映画人たちの主義・主張の相違を際立たせ、その瓦解を決定づけたともいいます。
ここで主役として描かれているのは、個人で細々とワイナリーを経営する年寄りな男性です。それがブルジョワジーと位置づけられ、五月革命の糾弾対象となってしまう。ストにより電気も止まり、葬儀も出せない。そして革命の主題であった世代間闘争やフリーセックスが話題にのぼる。まさに、かつて自らが主役だった世界の裏側で起きていた悲喜劇を、それがいかに迷惑千万で鼻持ちならない滑稽なものであったかを、ブラックユーモア満載のコメディタッチとして、自らを逆糾弾するかのよう描いています。まさに壮年にいたり当時の糾弾される側の年齢に至ったルイ・マルの、自らをネタにした凄みが伝わってくるかのようでとても面白かったです。
ワイナリーということで、緑いっぱいの自然を使った映像もとてもきれいです。そして、楽しげなBGMに、きれいな女優さんたち。楽しみが一杯に詰まっている作品でした。ドミニク・ブランがセザール賞最優秀助演女優賞を受賞したとのことですが、やはりあのバストのおかげでしょうね?(笑) -
パリでは学生たちの五月革命が進行し、ド・ゴールが国外逃亡し、ブルジョワ階級のミル一族はそれぞれの思惑の中でミルの母親の葬儀を行う。警官隊に殴られたアザを誇らしげに見せるピエール。それを鼻で笑うカミーユ。1968年の革命は流行に過ぎなかったのだろうか。何が起ころうとも黙々と墓堀りをする召使いに目を向ける一族の者はいなかったのだろうか。
爽やかな五月のピクニックの影に、ルイ・マルのとても強い自嘲めいた皮肉を感じてしまった。 -
かつてVHSでレンタルして観たのが忘れられない。時代の流れはどうであれ幸福というのはこうことをいうのだなと実感した。ステファン・グラッペリのヴァイオリンも忘れられない。切に再発売を希望。
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「五月のミル」の五月とは、フランスで起こった五月革命のこと。
そんな五月革命の最中、母親の急逝で集まったブルジョワ一家のてんやわんやの騒動を描いた作品。
母親の死、五月革命という状況下でありながら、繰り広げられる遺産相続バトルと恋愛バトルがすごい。そして滑稽。
登場人物の誰かに感情移入するっていうよりは、ブルジョワという種類の人たちを観察するって感じの作品。
(1989年 フランス)
コメントいただきありがとうございます!(^o^)
ははは。バスト勝負で言えば本当はドミニク・ブラン...
コメントいただきありがとうございます!(^o^)
ははは。バスト勝負で言えば本当はドミニク・ブランの女友達役であったロゼン・ル・タレクの方が良かったのですがね・・・。(笑)
BBの件、ご連絡いただきありがとうございます!m(_ _)m
それは何としてでも見ないと!(笑)
しかし、nejidonさんがそれを見て僕に報告しないと!って思われるとはいやはやお恥ずかしい、いや、嬉しい限りです。(笑)
必ず見ます!(きっぱり!)
「ルイ・マルの言動は、その直後の五月革命の過激な行動に波及したといいます。」
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「ルイ・マルの言動は、その直後の五月革命の過激な行動に波及したといいます。」
この時代の映画作家は、政治的に尖ってる人が多かったんですよね。
ルイ・マルの映画は、オレも何本か見てます。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)
そうなんですよ。まずは女優さんが脱いでいる映画を中心...
コメントいただきありがとうございます!(^o^)
そうなんですよ。まずは女優さんが脱いでいる映画を中心に観たいと思っています。(笑)
ヌーベルヴァーグ時代の映画作家たちは先鋭的な行動がそのまま時代の最先端であると自負する自信満々の人たちで、それがそのまま作品にも反映し活かされていて時代の熱い息吹を感じさせてくれるので、観ているこちらもそのパワーについ引き込まれてしまいます。
五月革命以後もそれぞれの路線で活躍し続けられておられて、やはり時代の大きな潮流だったんですね~。(^o^)