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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4547462070272
感想・レビュー・書評
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政治性、サスペンス性、芸術性、人生の機微。映画が持ちえる様々な面が無理なくうまく融合した、しかも、ものすごく私好みの作品でした。
ソ連から米国へ亡命したバレエダンサーのニコライ。彼が乗った飛行機は、あろうことか、祖国ソ連に不時着してしまう。
彼に気づいたKGBのチャイコ大佐は「裏切り者」の彼を当然許さず、米国にはばれないように重傷を負った彼を拘束するが、すぐには強制収容所には送らないし、殺さない。世界的名声のあるニコライは、ソ連の素晴らしさを世界にアピールするプロパガンダにしばらく利用できるから。
チャイコは、かつて黒人差別とベトナム戦争に傷ついて共産主義の平等思想に惹かれて米軍国からソ連に亡命したアフリカ系アメリカ人でタップダンサーのレイモンドと、その妻でロシア人のダーリャをニコライの監視役としてつける。
そして、ニコライにかつての古巣キーロフ劇場で踊るように命令する。
けれど、ニコライはそれに従おうとしない。監視役のレイモンドはニコライを諌めようとするが、彼自身、KGBに利用されて使い捨てられた過去を持っていた。理想とは違ったソ連の不自由さに常々絶望していた彼は、同じく亡命経験者でありダンサーでもあるニコライといつしか心を通わせる。
ニコライ、レイモンド、ダーリャの三人は、ニコライのかつての恋人ガリーナの協力を得て、アメリカ大使館へ逃げ込もうと計画するけれど…。
冷戦下のソ連という緊迫した舞台で、一見対照的でありながらも親和性を持つ二人のダンサーの人生が交わったことで事態が動いていく構成、逃げようとする三人が何度か危機に陥る手に汗握るスリリングな展開、主演を務めた本物のダンサー二人による見事なダンス・シーンが複数あることによる見せ所の多さ。
よく作り込まれていると思います。
とはいえ、冷戦期真っ只中の1980年台前半に制作された冷戦をテーマにした作品ということもあり、観る前に想像した以上に政治色が強くて、「自由の国アメリカが不自由の国ソ連を負かす」というアメリカ目線での勧善懲悪面が強く押し出されている点は否めない。
作中でソ連のプロパガンダを非難しているようで、同じ作品の中でアメリカもしっかりプロパガンダをしている点では、いつの時代もプロパガンダ合戦はなくならないということなのだと思います。
現実に、ニコライを演じたミハイル・バリシニコフはソ連から米国への亡命者だったそうで、リアリティを出すだけではなく、アメリカ側に少なからずプロパガンダの意図がなかったとは言えないのではと考えてしまいます。
でも、安定感のあるバリシニコフによる、冒頭の「若者と死」のモダンバレエも、キーロフ劇場にてかつて恋人の前で亡命ロシア人作曲家の音楽に合わせて自由への渇望を示すように踊る姿も、ダップダンサーであるグレゴリー・ハインズ演じるレイモンドと二人で踊るモダンなダンスシーンも実に見事で、魅入ってしまいます。
特に二人で同じ振り付けで踊る様は、調和がとれて美しいだけでなく、バレエとタップという二人の基礎の違いがわかってとても興味深い。
ダンスに興味がある人には特にオススメの作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1985年制作、旧ソ連からアメリカに亡命したバレエダンサーと、アメリカ軍から脱走しソ連へ亡命したタップダンサー。あと6年待てば、ソ連は崩壊したのに、と思うのは21世紀にこれを見ているからですね。撮影地にソ連も入っているらしい。ソ連の体制をゆる~く批判、というか否定?した内容なのに、よく撮影を許可したなと思う。KGBのチャイコ大佐は間抜けに描かれているし。
最大の見どころは、ミハイル・バリシニコフのバレエと、グレゴリー・ハインズのタップダンス。とても素晴らしい。ミハイルの体はしなって、力強い。ハインズの足からは魔法のリズムが生まれる。
お話的には旧ソ連、冷戦時代末期のアメリカ側のおとぎ話、といった印象。
また二人の女優の若き日の姿を見られたのはよかった。
タップ・ダンサーの恋人役のイザベラ・ロッセリーニと、バレエダンサーのソ連時代の恋人役のヘレン・ミレンだ。
ヘレンはドラマ「第一容疑者」で最近知ったのだが、この映画公開時は40歳。美しい。イザベラは公開時33才。役の上では若い通訳で、いかにもソ連体制下で生きている垢ぬけない少女といった趣で演じていた。この映画で映画女優としてのキャリアを始めたとあった。そうなのか。さらに、イザベラは次の年の「ブルー・ベルベット」がとても印象に残ってるのだが、なんとイザベラの役には当初ヘレン・ミレンが候補になっていたようだ。さらにヘレンはこの白夜の監督とこれが機で結婚し続いている。
あとは音楽。最後に流れる「セイ・ユー、セイ、ミー」。ライオネル・リッチーの曲でたぶん同時代的に耳に入っている。検索するとリッチーはコモドアーズのメンバーでもあったことが分かった。そうだったのか。
またミハイル・バリシニコフは1948年、旧ソ連ラトビア生まれ。1974年にアメリカに亡命。映画を地で行っていたわけだ。1977年の「愛と喝采の日々」にも出ていた。ここではあまり踊りの印象は強くは受けなかった。主役じゃないからか。 この「白夜」の踊りの振り付けが、素晴らしいんだろう。
といろいろ、おもしろいことが分かった映画だった。
本作の撮影はフィンランド、イングランド、スコットランド、ポルトガル、ソビエト連邦で行われた。
原題:WHITE NIGHTS(白夜)
1985アメリカ
2022.1.24BSプレミアム -
ホンモノのダンサーが出ていたそう(下の解説を見よ)で,なかなかステキな踊り溢れる映画でした。
設定がアメリカに亡命したソビエト人(ロシア人)と,ソビエトに亡命したアメリカ人とのふれ合いということなので,なんとも不思議な設定です。
ロシア人はちゃんとロシア語を話していてくれたのでよかった。ときどき変な映画があるからね~。
《NHKプレミアムシネマ》の解説を転載
米ソ冷戦の時代、自由を求めソ連からアメリカに亡命した世界的なダンサーと、アメリカからソ連に亡命した黒人タップダンサーの友情と亡命をめぐる脱出を描くサスペンスドラマ。実際にアメリカに亡命したバレエ界のトップスター、ミハイル・バリシニコフと、タップ界の名手グレゴリー・ハインズが共演、圧巻のダンス・シーンが話題となった。ライオネル・リッチーの主題歌「セイ・ユー、セイ・ミー」はアカデミー歌曲賞を受賞。 -
うわッ!イエジースコリモフスキが準主役で出てるぅ!!!あっじゃあ『アベンジャーズ』のあのシーンはこの映画へのオマージュだったのか???
と、驚いてしまった『ホワイトナイツ 白夜』。旧ソ連からアメリカに亡命したバレエダンサーが、飛行機事故の不時着からまたソ連に戻ってしまい、アメリカ人タップダンサーと出会い脱出しようとする……というお話。
主演はミハイルバリシニコフ。彼は実際にソ連から亡命したバレエダンサーで、脚本も彼とタップダンサーのグレゴリーハインズのためのアテ書きだそう。ちなみに他に私が知っている亡命したバレリーノは『ダイハード』なんかに出てたアレクサンドルゴドゥノフで、バリシニコフとゴドゥノフはラトビア時代からの盟友だったらしい。
オープニングのバレエ、ジャンコクトーの『若者と死』のシーンがとてもカッコいい。続いてバリシニコフの恋人役で、ボンドガールになるマリアムダボが一瞬だけ登場。その後の旅客機の不時着シーンまでの流れは最高だった。
しかし、その後何度も披露されるダンスシーンが退屈で、とてつもなく眠くなる。バレエもタップもダンス自体はとても良い!最高!だが、ハリウッドの娯楽サスペンス映画と組み合わせたせいか、食い合わせが悪いというのか中途半端で、全体的にどうも退屈な映画になってしまっていると思う。
バレエは当然芸術作品で、ロシア、フランスなどでは歴史も長く地位が高いけれど、歴史の浅いアメリカだとエンターテイメントとして発展してきたにすぎないらしい。そしてアメリカと言えばミュージカルの国。この映画もダンスのミュージカル映画的なつくりになっていて、それが退屈な原因なのかもしれない。
監督は『愛と青春の旅立ち』のテイラーハックフォード。『愛と青春の旅立ち』はとても良い映画だと思う。私も大好きで、何度も観てます。『トップガン』が嫌いな一因として『愛と青春の旅立ち』の存在があるからかもしれません。
ハックフォード監督はやはりドラマ映画の監督だと思う。この映画も出演者は最高だし(イザベラロッセリーニなど)、映像はとてもカッコいいけれど、サスペンス映画としてはつまらない……。途中で部屋からロープで脱出するシーンがあるが、ハシゴにロープを渡して屋上に脱出するのかと思いきや普通に下に降りてた。なら最初からロープを下に下ろせよ!!笑。
ラストも85年の映画らしく生ぬるい感じ。なら最初から一緒に脱出しろよ!そして街中でチェイスしろよ!!と思う(007脳)。スコリモフスキがウォッカを飲んでミスをするシーンも意味不明だった。まあスコリモフスキが出てるだけで面白いんだけど。
亡命したロシア人と、ベトナム戦争での脱走兵との友情と、これも寓話的な作品でありました。あとは、ふたりのダンスシーンを堪能するアイドル映画かと。
ライオネルリッチーの『セイユー、セイミー』ダサい。ダンスの練習シーンでけっこう長く流れていたルーリードの低音ボイスが、やたらと耳について離れない。 -
芸術と政治
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昔見たと思っていたら、初見であった。
当時、ライオネル・リッチーとフィル・コリンズのPVを何度も見てたから、勘違いしてた。
見てる最中、横田めぐみさんとかが頭に浮かんだ。 -
TVにて
バリシニコフが踊る姿を見るだけでも価値がある. -
B。
亡命が絡む話だったとは!
あっさりと話は進むけれど、リアルならこうはいかなさそう。
バリシニコフダンスがすごい。
昔レニングラードバレエの日本公演を見たとき、バリシニコフがいたと思ったのはなにか間違いだったか?バリシニコフの名前をこの時知ったと思ってたのだけれど。 -
踊れたらまた人生違ってくるんだろなあ
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「ミッドナイト・アート・シアター」にて。バシリニコフは名前くらいは聞いたことがあります。ま、映画としてはイロモノだろう、どうせ見せ場は踊りの場面ぐらいだろうなんて思ってたら、なんのなんの、スパイ映画として脚本がしっかりしてるんでビックリです。
ソ連を亡命したアメリカ人とアメリカへ亡命したロシア人。この2人の人間ドラマはなかなか見せますし、ラストのアメリカ大使館前でのつばぜり合い(?)の緊迫感もよい感じ。もちろんダンスのシーンも素晴らしいんですけど、逆にダンスとストーリーとどっちに焦点があるのかぼんやりしてしまった印象も。
西友のテーマ(笑)でお馴染みのライオネル・リッチーの「Say You Say Me」がこの映画の曲だったとは。 -
むかし深夜番組でTRFのSAMがオススメ映画として、このホワイトナイツを挙げていた記憶があります。いざ観てみたら、すこし馬鹿にしていた自分に反省。おもしろかった。ストリートダンスと正統派のバレイダンスのコラボレーションは必見。
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冒頭いきなりローラン・プティの「若者と死」が始まります。
何という緊迫感&臨場感でしょう。贅沢な映画です。
バッハの「パッサカリアとフーガ」BWV582をこんな風に踊るのですねぇ。。
これで抜粋版だというのですから、是非一度生のダンサーで全編を鑑賞してみたいものです。
バリシニコフ以上にこの作品を表現できるダンサーはいるのかしら?
(熊哲のレパートリーでもあるらしいけど、再演の予定はないのかな~。
ル・リッシュの映像なら手に入るかも。。。)
そして、ほんの一瞬、大好きな「ポギベス」の舞台が見れたことも嬉しかったです♪
スリリングなストーリー展開で、
バレエやブラックオペラに興味のない人でも十分に楽しめる映画です!
そうそう、ライオネル・リッチーの主題歌が懐かしすぎましたぁー!!
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