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- / ISBN・EAN: 4527427647664
感想・レビュー・書評
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原作は既読だが、ラスト五分に震えて、何かがこみ上げた。
原作にない改変、ラスト五秒に救われ、涙があふれてきた。
娘を連れておじいちゃん家にお泊まりの妻に思わず電話をかけた。
本当は声が聴きたかったくせに
「いまDVD観て、これから風呂はいるとこ。楽しくやってるよ」
なんて他愛ない話をして数分で切った。涙声をかみ殺しながら。
一人でのびのび過ごすはずだった週末が台無しだ。
母と女と少女のあいだで揺れ動く、儚げな輪廓の菅野美穂が最高。
そして、友人みっちゃんを演じる小池栄子が素晴らしい。
お母ちゃん役の夏木マリもいい。
漁村に唯一の美容室「パーマネント野ばら」
母の経営するその店に娘を連れて出戻ったなおこは恋をしている。
嫉妬に駆られて亭主をひき殺しそうになったみっちゃんも、
椅子からずり下ろされラーメンを頭からかぶったともちゃんも、
来るお客すべてにパンチパーマを当てているお母ちゃんも、
パンチパーマを当てられチ◯コの話ばかりしているおばちゃんも、
山でなにかを埋めているばあちゃんも恋をしている。
女はみんな恋をしている。
下世話な笑いの中に切れ味鋭い真理と切なさが時折まぎれる西原理恵子の漫画を、吉田大八マジックとでも言うべきユーモアと叙情性と美しさで見事に映像化。
漁村つながりか、一瞬シシリアン・マフィアの抗争かと思うイタリア映画のようなシーンがあったりもする。
JA主催の温泉バス旅行に出かけるお母ちゃんたちは、ポン・ジュノ監督の『母なる証明』を思わせるが、あながち偶然ではないかもしれない。母は強し、女は強しである。
停電で飲み屋から飛び出してきた、田舎のプロムクイーンのような格好のみっちゃんと、チェーンソーで電柱をなぎ倒す本田博太郎演じるみっちゃんの親父とのツーショットはあまりにもシュールで笑ってしまう。
だが、この親父こそ実はこの映画の象徴的存在だろう。
あそこまで振り切ることができたら幸せなのかもしれない。
江口洋介のキャスティングを知った時「ちょっとポップ過ぎやしないか」と不安になったが杞憂だった。
彼があんなに繊細で色気のある俳優だったとは。
江口洋介だったからこそ、あそこまで胸に迫るものがあったと今ならば思える。
「デートしゆう、海で」
こう言ったあとの小池栄子と夏木マリの視線の交わし合いが本当に素晴らしい。
ともちゃん役の池脇千鶴も義父役の宇崎竜童もはまっていた。
家族も友達もパンチパーマのおばちゃん達もみんな優しい。
その優しさゆえに切なさが増す感じは『ラースと、その彼女』に通じるものがある。
『桐島、部活やめるってよ』が抜群に良かったので観たのだが、あらためて吉田大八監督の凄さを思い知った。
そして初めて奥寺佐渡子という脚本家を意識した(アニメ映画『時をかける少女』『サマーウォーズ』の脚本家だった)。
映画『パーマネント野ばら』
僕以上に、女性は感じるものがあるのではないだろうか。
感想を聞いてみたい気もするが、すこし怖くもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年公開作品。なんだか面白いような怖いような作品。キャストが、いいです。私の好きな役者さんたちが、ちゃんと役を演じているなあと思いました。とことん男運のない女性たち、どうにもならないダメな男たち。でも、寂しくて男に縋りつこうとする女たち。時代設定は昭和なのかなあ。土佐弁が、なんだか味があります。ストーリー展開にピッタリです。昔観た「祭りの準備」を思い出します。登場人物みんなが心に闇を抱えている感じ。蛇足ではありますが、ミヤ蝶美さんと町野あかりさんのパンチパーマが似合いすぎです。笑いました。
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Amazonプライム視聴。
菅野美穂さんの自然で静かな演技、
夏木マリさんの際立った個性、
小池栄子さんの大きさ、
池脇千鶴さんのちょっぴり薄幸な感じ、
全ての人が素敵でした。
パーマ、きつめにあてたくなる。
人は現実と狂気の狭間に在るものだな。 -
~☂~ わたし狂ってる・・・? ~☂~
吉田大八監督の作品です。
この監督、面白い作品撮りますね。
「わたし、狂ってる?」って言った時の菅野美穂が
それはそれは良かった。
あたしなんか思わず ”うん” って頷いちゃって
しまった!ここは頷いちゃいけないんだと思うほど
入り込んでました。
脇を固める俳優陣もすばらしかった、特に小池栄子。
そして、
パーマネント野ばらに集まるお下劣なおばちゃん達の
インパクトは絶大
笑いながら観ているうちに落とされるという作品でした。
よかった。 -
パーマネントのばらで繰り広げられる下世話なオバサンたちの下ネタ話、
男運のないけれど、だれかを愛さずにはいられない女友達、
別れた夫とのあいだにできた娘、
今は別の人と暮らす母親の元恋人など、
いろんな人々とのやりとりのなかで過ごす日常。
そんな日常の中で恋人と二人きりになった時の管野さんの表情がいい。一児の母親の顔ではなく、あどけない少女のような顔になる。
怒涛のラストは悲しみが半端なく押し寄せてきて、観終わったあとはしばらく茫然としてしまいました。
「忘れん坊やなぁ。平気、何べんでも話して」
「そんなんやったらこの町の女はみんなくるっちゅう」
傷つけられながらも懸命に生きる人たちの姿は痛々しいながらも、強く温かい。池脇さんと小池さん演じる友人たちが管野さんに向ける言葉の一つ一つと表情がとてもよかったです。 -
こわかった、、、、。
原作より映画の方が好きです。
夏木マリさん、盆暮れパーマ似合いすぎ。 -
野ばらの言葉の響きからかわいらしい映画を想像していたら全然違った。前半、田舎の下世話なおばちゃんたちに、これを劇場公開したのか…と度肝を抜かれた。前半できれいなのは菅野美穂と江口洋介のシーンだけ。これが後半に効いてくる。切ないラスト。池脇千鶴はこの映画にとても合っている。それから、小池栄子がすごくすごくいい。
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港町のパーマ屋を舞台に、
女達の恋と傷つきを、
どぎつい台詞で愛しいものに仕上げていくのは、
さすが西原理恵子原作という感じがする。
静かで、でもどこか壊れそうな色調の、
様々な光の結晶が美しく、
夢の中の電話ボックスは、
非常に胸に迫る。
しかしなぜ?と疑問を抱いているうちに、
怒涛に畳み掛けるラスト。
そうだったのか。
これは深い喪失の物語だったのか。
はらはらと涙が落ちて、
余韻でさらに泣けた。
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吉田大八監督作品は、
いずれも肌にあう。私好みなのだろう。
そして大好きな女優小池栄子は今作も実に味がある。
夏木マリは言わずもがな。