悪人 スタンダード・エディション [DVD]

監督 : 李相日 
出演 : 妻夫木 聡  深津絵里  岡田将生  満島ひかり  樹木希林  柄本 明 
  • 東宝
3.62
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本棚登録 : 2670
感想 : 588
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104065643

感想・レビュー・書評

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  • 事件は冒頭で起こり、後は、自首するか、捕まるか、逃げるかという流れ。落とし所をどうすると見ていると、被害者と加害者の親の生き様が描かれ、ラストに向けて交錯させるのが作者の上手いところでしょう。ただ、映画では、それほど成功はしていません。妻夫木と深津は、それぞれが持つ孤独と閉塞感をすごく上手く出しています。地方に暮らす選択肢のない人生がやりきれません。

    • トミーさん
      吉田修一いいですよね。大好きです。
      吉田修一いいですよね。大好きです。
      2020/05/15
    • myjstyleさん
      最近では「国宝」が良かった。物語を語るのが上手な作家さんですね。
      最近では「国宝」が良かった。物語を語るのが上手な作家さんですね。
      2020/05/15
  • 映画の予告を見て、人を殺めた若者が苦悩する映画・・・
    そんな何とも陳腐な先入観しか持てずにずっとスルーしていた。
    観始めるとそんな一面もあるけれど
    その先入観が薄っぺらだとすぐにわかった。

    誰かにとっての最悪な人が
    あなたには最愛の人でした。

    そして誰かの最愛の人が
    あの人の最悪の人だったりもするのでした。

    人は単純に善人と悪人のレッテルは貼れない。
    二面性を内包しつつ更に十重二十重に折り重なって生きている。
    そのカオスが人間の群れの正体か。

    主人公はいるものの大きく誰かに偏ることなく
    均等なウエイトで描かれていると思いました。

    誰かに重きを置いてしまうと関係に善悪が付いてしまう。
    人間の持つ二面性がテーマのこの作品には
    均等さがポイントなのかもしれない。
    浅い感じが残るのはこの方法の副作用なのだろうか。

    妻夫木の、柄本の、樹木の、深津の・・・
    様々な人々の、様々な思いが、交錯している映画でした。

    音楽も良かった。

  • 土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、長崎の外れのさびれた漁村で生まれ育ち、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
    佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代(深津絵里)は、妹と二人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日。
    そんな孤独な魂を抱えた二人が偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。
    だが祐一にはたったひとつ光代に話していない秘密があった。彼は、連日ニュースを賑わせている殺人事件の犯人だったのだ……。
    数日前、福岡と佐賀の県境、三瀬峠で福岡の保険会社のOL・石橋佳乃(満島ひかり)の絞殺死体が発見された。事件当日の晩に佳乃と会っていた地元の裕福な大学生・増尾圭吾(岡田将生)に容疑がかかり、警察は彼の行方を追う。
    久留米で理容店を営む佳乃の父・石橋佳男(柄本明)は一人娘の死に直面し、絶望に打ちひしがれる中、佳乃が出会い系サイトに頻繁にアクセスし、複数の男相手に売春まがいの行為をしていたという事実を知らされる。
    そんな折、増尾が警察に拘束されるが、DNA鑑定から犯人ではないことが判明、やがて新たな容疑者として金髪の男、清水祐一が浮上する。
    幼い頃母親に捨てられた祐一、をわが子同然に育ててきた、
    祐一の祖母・房枝(樹木希林)は、彼が殺人事件の犯人だと知らされ、連日マスコミに追い立てられていた。
    一方、警察の追跡を逃れた祐一は光代のもとへ向かい、佳乃を殺めたことを打ち明ける。光代はその事実に衝撃を受けるが、警察に自首するという祐一を光代は引き止める。
    生まれて初めて人を愛する喜びを知った光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かうのであった。
    やがて地の果てとも思える灯台に逃げ込んだ二人は幸福なひとときを迎えるが、その逃避行が生んだ波紋は被害者の家族、加害者の家族の人生をも飲み込んでいく……。
    いったい誰が本当の“悪人”なのか? それが、一番のテーマです。
    被害者の女性は、ナンパされた旅館の女将の息子と加害者の二股をかけていた。
    加害者の祖母に言葉巧みに健康食品を売りつけた男。
    被害者をナンパした軽薄な旅館の女将の息子。
    底の浅い正義感で被害者、加害者家族を裁くマスコミと世間。
    彼らに罪は、無いのか。
    加害者と彼を愛した女は、同じ種類の孤独と閉塞感を感じていた。どうしようもなく惹かれ合った彼らを責められるだろうか。自首しようとした加害者を引き止めた彼女は、悪人なのか。見た人に重い問いかけを突きつける問題作です。
    加害者の孤独な男を丁寧に内に秘めた孤独感を持った不器用に愛を求める人間として演じた妻夫木聡、加害者をひたむきに愛する女性を丁寧に自然体で演じた深津絵里、柄本明さんや樹木希林さん、加害者を幼い頃に捨てた母親を演じた余貴美子さんなど、素晴らしい演技を見せてくれます。
    ヒリヒリするような切ない映画ですが熱い感情を呼び起こす映画です。

  • 妻夫木聡も柄本明も、名前を聞けばぱっと顔が思い浮かぶ
    けれどこの映画の中で彼らは見たことのない顔をしている

    光代の首を絞める祐一
    レンチを握りしめ増尾ににじり寄る佳乃の父

    目の前にいる人に抑えられない感情を全力で伝えようとしている時、皮膚は赤黒く、真似ようとしても真似できない表情になる
    このシーンを見た時に「あぁ、劇場に観に行けば良かった…」と後悔した
    あの表情を大きなスクリーンで見たかった
    「泣くな!」と怒鳴られ、それでもこらえきれず泣く宮崎美子の演技も見ていて涙するほどすばらしかった

    祐一の目の前で佳乃が増尾の車に乗り込み、去った後のあの音
    ざわざわと不吉な音を立てる胸、馬鹿にされた、なめられてる時のいやーな気持ち
    あの金属音が鳴って、この不穏な気持ちとこれだけマッチする音があるのか、と驚き、妻夫木聡の顔筋の動かし方に感心した
    振り払おうと一瞬試みるも、振り払えずまた同じ表情に戻る
    たった一瞬の間に浮かんだ考えがあの表情に全て出ていた


    この映画を見ている間、「それでも」という言葉がずっと頭から離れなかった
    性格の悪い女、それでも親にとっては大事な娘
    ぱっとしない暗い青年、それでもお年寄りの世話をする優しい孫
    見ているだけで胸くそが悪くなる大学生、それでも金は持っているぼんぼん
    産まれた土地から離れていない地味な女、それでも幸せを求め本気で祐一を愛する女
    この映画の登場人物だけじゃない、すべての人が抱えている「それでも」という矛盾
    恋人だけでなく、親や友達に対して誰しも「それでも」を抱えているのではないだろうか
    人を愛するということは、その矛盾も含め丸ごと受け入れることなのかもしれない
    祐一は人殺しなのだと改めて口にしながら、祐一が見せてくれた光を思い出した光代のように

  • 本を読み終えたので、映画を観た。

    感想は。。
    どっちかといえば、映画を観て~本。の流れの方が良かったかも。

    というのも、映画では、かなりの部分を時間にあわせて省略していながら、セリフは本のままだったりするから、祐一と光代の関係性が、浅いのに、セリフは重い。。みたいな、本を読んでるからこそ感じたのかもしれないけれど、ちょっとアンバランスだったのが、気になった。


    とはいえ、深津絵里と、樹木希林の演技力がやっぱりすごかった。

    深津絵里と、ゼロの焦点での木村多恵の演技。
    素朴で人の良い女を演じさせたら、どっちが上手だろう?!ってくらい、この二人のこういう役どころでの演技力はすっごいなー!って思ったのでした。


    残念ながら。。
    本との差が大きすぎたので、☆が下がったということなんで。。

    本を推します!


    ・・・・・・
    って書き終えて、他の人のレビューを観たら!!
    ☆一つつけるあたしが悪人みたいに思えるほどの絶賛だったw


    ま、いいや。
    ☆は変えませんが、本が面白い。ってことは確かだよー。

  • 原作については未読。
    妻夫木さんが自ら祐一を演じたい、と思ったというだけあって
    迫真の演技だったし、他の役者陣も素晴らしく
    現実を見ているような深みと疲れが残った。

    祐一の人間性をもっと描いて欲しかったようにも思うが
    視聴者の判断に委ね、淡々と描いたのもまた良かったのではないだろうか。
    その中で出演シーンは短いながらも、バスの運転手やタクシー運転手も
    あまりにリアルで心苦しくなるほどだった。
    祐一と光代の些細で、傍からはわからないほどの
    しかし代わり映えもせず、生きる意味を考える隙間もないような
    疲れる日々の中で、ふとした瞬間に嫌気がさすような
    身を切るような孤独が見ていて苦しかった。

    祐一が犯人と特定されるまでの流れが殆ど描かれず
    突然大事になっている印象で、
    報道や灯台に大勢で押し寄せて来るところが唐突に感じたり
    光代が祐一に戸惑いながら惚れていく理由も
    いまいち描ききれていないように感じたり
    ところどころ突っ込みたいところはいくつかあったが
    そこはそれ、フィクションなので致し方ないとも言える。
    九州の田舎町を舞台に、方言や田園風景などが素朴で
    昨今親切にも無意味に描いてしまいがちな説明を
    敢えてしないで済ませたり、脇役が関わり過ぎなかったり
    どこまでも恰好悪く惨めさがとてもリアル。
    母親に捨てられた苦悩や出会い系サイトを利用する昨今の若者
    など、そうしたことを強調し世間のせいにし過ぎないところも好感が持てる。

    全ての存在は唯一のもので、誰にもそれを奪う権利はなく
    人を殺めるということは犯罪でしか無い。
    だが、殺さないから、法に触れないからといって
    若い女性をひっかけたり、真夜中の峠に蹴り出したり
    老婆の貯金を騙しとったり息子を捨てたり
    真夜中でも加害者の家族に人権はないとばかりに
    静かな町に屯し報道の為だと言って人を追い回す。
    気晴らしに犯罪を犯す者もいれば、追いつめられて思わず犯行に出ることもある。
    それが『悪』であり『犯罪』なのか。
    本当はそれは第三者には裁くことのできないものだ。

    ふたりは切ない短い逃避行の中で
    薄暗い日々の中で折角見つけたと思った光を手放したくなくて
    必死にしがみつこうとする。
    どうしてこうなってしまったのかと誰に言ってもどうにもならない
    苦しい言葉を問いながら。

    目の前が海であることが、行き先はないのだと感じてしまう祐一が、
    海の側の灯台で光代と過ごした日々。
    絶望を味わった灯台で再び味わったのは、果たして絶望だけであったろうか。
    祐一が、戻らない光代の包まっていた毛布を抱きしめているシーンは
    冒頭の携帯でムービーを見ているシーンとは対照的。
    人が自分から去っていくばかりの人生で、
    息せき切って傷を作って戻ってくる光代の姿が、祐一に何を与えたか。
    何もない孤独さから、手に入れたのに手放さなければならない孤独さ
    手放したくない強い気持ちが伝わってくるように思う。

    『悪人』とはなにか。誰にとってのどんな意味であるのか。

    ラストシーンの太陽を見つめる光代の笑顔と
    祐一の何とも言えない切ない表情に
    暗いストーリーであるのに心あらわれ
    一筋の光を見るようだ。

  • 寂れた県の、中核市とはいえ寂れた市の、国道沿いとはいえ田んぼばっかりで、通るのは通り過ぎる車ばかり。
    夜が更ければ真っ暗な中を、紳士服フタタと下宿を自転車で数十分かけて往復する生活。
    思えば中学も高校も近くにあり、似た生活を送ってきた数十年……深津絵里演じる馬込光代のいわゆる「同じ国道を行き来するだけの人生」(34号線)。これ、わかるわ……。

    また、仕事で佐賀市にも唐津市にも福岡県は博多にもよく通っていたので、それぞれの土地の距離感がまざまざと蘇るようにわかった。
    しかも原作2007年映画2010年ということなら私は25歳前後。まさに作中、妻夫木聡演じる清水祐一や、満島ひかり演じる石橋佳乃、岡田将生演じる増尾圭吾と、数年くらいの幅の中にいた……映像に一瞬映った佐賀駅南口。
    ひょっとしたら私が佐賀駅南のサガシティホテルの暗い照明で陰陰滅滅と「20世紀少年」を読んでいたころかもしれないし、駅北のアパホテルで酔った挙句全裸で部屋を出て我に返ってフロントマンに助けを要請したころかもしれないし、ホテルグランデはがくれや四季彩ホテル千代田館や佐賀大和ICより北の登龍園の窓がない部屋に泊まっていたころかもしれない。
    佐賀市から博多に向う峠は数回通ったことがあるし、佐賀大和ICから唐津への道は何度も何度も通った。彼女が通った高校は佐賀北高校か北陵高校か高志館くらいかしらんと目安がつくし、彼が高校に通ったなら唐津青翔だろうなぁ、とも。
    翌日追記・「通った小学、中学、高校も職場もすべて国道34号沿いにあった」ということは、致遠館かな……。

    と、ついチラシの裏に書いてしまった。
    演出は結構ウェットで、控えめに叫んだり、結構泣いたり。
    とにかくウェットで過剰な演技を忌避したい私にとっては、ややウェットすぎるかな(ポン・ジュノの作品は血と反吐と口紅と得体のしれない水とであふれているのに、画作りはドライ……そのほうが好ましい)……でもギリギリのところかな……逃避行の果てを描くのに灯台と草原というのはなかなか悪くない(がトラン・アン・ユン「ノルウェイの森」のほうが数段上だ)、と、及第点なのに上に突き抜ける要素がない……惜しい。
    君に会うまで殺人を何とも思っていなかった、とはっきりと「罪と罰」のソーニャに対するラスコーリニコフの心情を語り始めるが、やや唐突。あるいははじめっからソーニャのことを考えながら本作を見たり原作を時間をかけて読んだりすれば、違うのかもしれないが。

  • あらすじとしては予想通りだったけど、キャストの演技が凄いのと、説明しすぎない脚本、カメラロール、台詞、音楽……と映画の良さが詰まった作品で見応えがあった。
    被害者の父の台詞。「あんた、大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人は。今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎる。自分は失うものがないち思い込んで、それで強くなった気になっとう。だけんやろ、自分が余裕のある人間て思いくさって、失ったり、欲しがったりする人間を、
    馬鹿にした目で眺めとう。そうじゃないとよ。それじゃ人間は駄目とよ。」印象的で、泣けた。
    ラストに祐一がみつよの首を絞めたのは優しさだったのだろうなと思うが、別の解釈もできそうで面白い。人殺しのリアルの姿かと言えば違うかもしれないが、カーッとなって罪を犯しちゃう人って祐一みたいな感じなんだろうなと思った。
    星5つでもいいかなと思ったけど、ところどころ演出が過激すぎ(祐一の祖母にマスコミが詰め寄るとことか)てちょっと冷めたのと、みつよが祐一に惹かれていく過程があんまり描かれてなくて殺人犯についていくか?ってなったのでちょっと評価が落ちた。原作から省いた箇所も多々あるのではないかと思うので、いつか原作を読んでみたいです。

  • 満島ひかりの演技がすごかった、殺人がダメなのはもちろん当たり前のことだけど登場する人皆悪人で環境が変わっていれば違った人生だったのかなと考えされられた

  • 人を殺してしまうことは悪いことだが、殺される側にも問題があり、その関係者にも問題があり、それぞれの人生が交錯することで、殺人という事件が起きてしまった。そして、殺人者と彼を愛してしまった女性との逃避行が切なさを感じさせる。
    悪人とは何なのかを考えさせられる作品である。

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