♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ。と歌ったのは植木 等。
一部の社員が働かなくても給料が出る点は一理あるが、
部下、上司との人間関係や出世競争を考えると、
気苦労の絶えない稼業ときたもんだ。
本当に、青島 幸雄が植木 等に歌わせたのは、
そういう現実を笑って吹き飛ばそうというアンチテーゼであった筈だ。
本作では「物事は成り行き任せ」がひとつのキーワードとなる。
バドもフランも上司や愛人に散々振り回され、迷い悩んだ末、
えぇい なるようになるさ!と安定した生活と決別し、自由を選択した。
実際、そこまで割り切れる人間がいないからこそ、
この映画が気晴らしとなり人々をちょっぴり元気にさせるのだろう。
クレージーが♪気楽な稼業と笑い飛ばしたように。
物語には、人を利用して出世した人事部長が登場する。
会社の女性にもどんどん手を出しては捨てる自分勝手な人間だが、
社会的には成功者だ。
結局不倫がバレて家族離散するが、むしろ独身貴族を楽しんでしまう。
この物語では最後まで勝者のまま幕を閉じたので、
彼の後の人生を想像してみた。
物語終盤で彼は、元愛人で彼に未練のあった秘書を解雇した。
後任は厳格なおばさんが来ていた。ココがポイント!
彼は今後も社内の女性に手を出す。絶対手を出す。
しかしどんなに上手く隠しても、おばさんは鋭く察知する。
そして必ず役員なり社長に告げ口をして彼を失墜させるだろう。
正に彼の言葉「上まで出世するのは何十年だが、下りるのは30秒」だ。
なんせこの会社、人事部長からしてこの有様。
課長達は仕事もしないで女にうつつを抜かし、
会社の電算機使って競馬のノミ屋やった人間が評価を高めるとんでもない会社。
実際、高度経済成長時代の大会社は似たり寄ったりだったのかも知れない。
始めは、部長と同類だったバドが、恋に悩み、親切に触れ、徐々に変化していく。
出世街道ひた走る頃のバドは常にコミカルに立ち回り、
人間らしさを取り戻すに連れ真顔になっていくのだが、
その変化の演技に喜劇役者ジャック・レモンの素晴らしさを感じた。
ただ些細なセリフや小道具が後で意味を持つという展開の巧みさは、
同じくビリー・ワイルダー監督の後の作品「あなただけ今晩は」の方に感じた。
仕事か恋か、出世か人間らしい生活か、
悩むサラリーマンを皮肉とユーモアたっぷりに描く喜劇。
若きシャーリー・マクレーンがお茶目で本当に可愛い。
(100914鑑賞)