白いリボン [DVD]

監督 : ミヒャエル・ハネケ 
出演 : クリスチャン・フリーデル  レオニー・ベネシュ  ウルリッヒ・トゥクール  ブルクハルト・クラウスナー  ヨーゼフ・ビアビヒラー 
制作 : ミヒャエル・ハネケ 
  • 紀伊國屋書店 (2011年6月24日発売)
3.56
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レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215058438

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに本質をとらえる映画を見た。

    落馬、転落死、畑荒らし、傷害、放火と不可解な事件が相次ぐ、言わば犯人不明のテロが連鎖する。誰もが疑心暗鬼になるが、誰も追及しない。

    恐れているのは地位の低い者たちだけではない。男爵は逃避する。その場所がイタリアというのは、その後のムッソリーニとナチスとの連携を連想させる。

    テロと言えば、ナチスも水晶の夜事件で放火という官製暴動を起こしたり国会議事堂放火事件を共産党弾圧に利用したりしている。

    タイトルは、牧師が悪事をはたらいた自分の子どもたちに対し、純真さを失わないように付けさせたものだ。

    男爵以上に牧師は権威主義的だった。リボンに飽き足らず、息子をベッドに縛り付ける。異常なのは明らかだが、本人は信念を曲げない。

    映画はファシズムというより、ファシズムを生む土壌を描く。ファシズムへの過程を論じたエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」はプロテスタント教会の個人の自由がいかにファシズムに変容したかを分析した。

    自由というのは個人にとっては苦痛である場合もある。「自由からの逃走」は言わば権威主義への回帰と重なり、どっちつかずの中で人々の心は不安定化する。

    それを象徴していたのが、鳥かごの中の鳥だろう。自由がない代わりに安定した場所を保証されている。牧師が飼う鳥は、結局、娘の「テロ」で殺される。それを知った末っ子は、自分が飼っている鳥を牧師にあげる。厳格な牧師が、この時だけ息子の優しさを素直に受け入れる。鳥かごの鳥は牧師の精神安定剤だった。

    「白いリボン」の象徴は、そうした不安定化した人々の心を縛るもだ。牧師の自信満々の表情とは裏腹に、人への不信が表されている。

    同じ権威側にいるはずのドクターも、裏では倫理とは縁遠い、娘と近親相姦を繰り返していた。村の権力者も、子供たちと同様、精神的に不安定で、自信を失っていた。

    この映画の最大の謎は、語り部の教師だ。どちらかと言えば中立的で傍観者なのだが、事態を冷静に見過ぎている。

    彼は仕立て屋の息子で、戦争が始まると兵役に就き、その後、仕立て屋になる。ヒトラーも一時仕立て屋の弟子になり、第一次大戦は兵役に就いている。そして、ヒトラーの愛人はエヴァで、教師の恋人の名前と同じだ。

    教師は村で起きたことを一番冷静に見て人心の何たるかを学び、人心掌握術を会得した。それは、ナチスドイツの底流にあったそのもだ。

  • 何故この映画がモノクロームで撮られなければならなかったのか、その理由を考えさせられてしまった。それは恐らくこの映画が子どもたちがつけさせられる、「白いリボン」に象徴される「無垢」を際立たせるためではないかと思ったのだ。詳しく書くとネタを割るが、この作品では結局のところ真相は「グレーゾーン」で終わる。語り部が「グレー」の服を着ていること、あと教会に集まった大人たちが「黒」い服を着ていることに注意しよう。それは欺瞞に満ちた大人たちの「嘘」を指弾しているのであり、子どもたちは「白」い服を着させられているからこそ「無垢」なのだということではないか。「無垢」なのに、ではない。「無垢」だからこそ……これ以上は流石に書けない。ロングショットで撮られたキャベツ畑や雪原、草原の持つ「白」さを際立たせており、映像美は優れている。サスペンスとしては『隠された記憶』にやや劣ると考えたのでこの点数に。

  • DAS WEISSE BAND
    2009年 ドイツ
    監督:ミヒャエル・ハネケ
    出演:クリスティアン・フリーデル/レオニー・ベネシュ/ウルリッヒ・トゥクール

    第一次世界大戦直前の、ドイツの小さな村で、次々と起こる不可解な事件。いくつかは偶然であり、いくつかは明らかな悪意は働いていると思われますが、真犯人は見つからないまま。物語は、その村に住む男性教師の回想という形で語り進められ、一応犯人探しの体裁はとっているものの、映画自体の目的はそれを明らかにすることではないと思われるので、多少の消化不良は覚悟して見るのが正解かと。

    閉鎖された狭い村の中で、村人の誰もが怪しい感じは、一種ツインピークスめいていて、じわじわと不快な恐怖を煽ります。そんな中からやがて浮かび上がってくるのは、高圧的な父親たちと抑圧された子供たち(&女性)の構図。とにかく沢山の子供たちが出てきて、どの子も皆可愛らしいのだけれど、大人たちは容赦なく、しかも無意識に、彼らの純粋を打ち据え、踏みにじっていく(という印象を少なくとも私は受けた)。タイトルの「白いリボン」は子供の純真の象徴で、大人たちが罰とともに、子供の腕に巻きつけるのだけれど、他でもないその行為自体が、彼らの無垢を奪っているんですよね。

    牧師、ドクターといった村人から尊敬を集めている人間に限って、もっとも最悪なのもお約束。なかでもドクターの醜悪さときたら!自分の不倫相手である女性への口汚い罵りの言葉、そして娘への性的虐待、こんなやつ死ねばいいのに、と冒頭で彼を殺そうとした犯人ならずとも思ってしまう。

    そして牧師、職務に忠実といえばそれまでですが、自分の子供たちへの恐怖政治ともいうべき高圧的な態度は、ほんと怖気がする。こんな父親に育てられた子供たちが、歪まないわけがない。彼らが「罪」を犯したものには「罰」を与えるべきという歪んだ正義感に取り付かれたとしてもどうして責められよう。

    その事実に気づくのはどうやら語り手である教師だけですが、結局牧師は自らの子育ての否を認めず事件は曖昧なままにフェイドアウト。やがてナチズムに支配されるドイツの、これを縮図と捉えることもできるのがさらに恐ろしい。ホラーでもミステリーでもない怖さ=不穏な空気で最後までソワソワする映画でしたが、教師と子守の娘の恋は、初々しくてとても可愛らしかったです。唯一の癒しといっていいエピソードでした。
    (2011.04.26)

  •  第一次大戦直前のドイツの小さな村。プロテスタントの信仰で厳格に子どもたちを育てて来た村が小さな事件を積み重ね不穏な空気に支配されていく。。。
     観る人を不快にさせたら世界一のオーストリアのミヒャエル・ハネケ作品。

     牧師や医師、男爵が厳格な姿の裏に合わせ持つ負というものを描きながら、それに密やかに反発する子どもたちの怖さも並行して描いていく。ただ、そこはハネケ作品。そういうものを直接に描かず、よく見てみるとそういうことが描かれていると分かるつくりになっている。色んな人の解説を見て二度目に見た時の納得感と、でもそれでもモヤモヤした感じが抜けないところがこの映画のミソであると思う。
     偽りの厳格さに反発し暴力、狂気へと動いていく。ハネケはその姿を通してナチズムへと傾倒していく時代を描いているらしい。仕立て屋の息子でエヴァと恋に落ちるこの映画の語り手の教師はヒトラーを象徴しているという解釈はすごいと思った。

     ヨーロッパ人、プロテスタントはこれを見て相当えぐられる思いがするのだろう。
     ハネケっぷり全開の後味の悪さが最高。

  • 作品自体に大きな抑揚はないが、厳格な村に潜む悪意や嫉妬から生まれる闇の連鎖を痛烈に描き切っている。まさかハネケ監督がここにきて白黒映画を作るとは。

    決して犯人探しのミステリーではなく、信仰が宗教からナチに変遷する直前の人々の不安定さや、暴力や姦通から生まれる不信感がここでは肝になってくる。そして重要なのは大人たちを子供たちが見て、如何にして大人になっていくかである。戦前の子供とは、つまり戦争下では大人になり、ナチに染まる可能性を含んでいる存在だ。悪意は子供にも連鎖しており、純粋無垢とはかけ離れた存在になる。「白いリボン」が映画で意味するのは、もっと深い、つまり大人が子供に与える悪意の象徴なのではないかと思う。

    それにしても難しかったので、もう一度観る必要がありそうです。

  • 実はハネケはまだ「ファニー・ゲーム」しか見ていない。
    まだピュアだったころにゲロを吐きそうな気持ちになって以来遠ざけていたのだ。
    が、ラース・フォン・トリアーの諸作を楽しめるようになった今ならば、と思って鑑賞。
    うへー。気分わるー。でも見どころあるなー。

    登場人物も多く謎も多く解決がもたらされないままなので難解な印象は持ったが、実はテーマを抽出すれば単純。

    封建社会家父長制社会における成人男性の権力。
    抑圧された女子供。
    ファシズムの土壌。
    押し付けられ歪んだ無垢を遂行すると犯罪にならざるをえなかった。(この子供たちがのちにナチス高官になる)
    言ってみればこれだけに要約できる。

    多重的ではないぶん重く届いた。
    折に触れて思い出しそうだ。
    南米文学の家父長制も連想した。

    演出としては、床や家具の立てるミシ、ミシ、ギュッ、ギュッ、衣擦れ、息遣い、といったSEが息苦しさを強調していた。

    以下に反吐を吐きそうになるくらいの名セリフを引用しておく。

    お前は醜く 汚く 皺だらけで 息が臭い
    カバーを殺菌しとけ
    ふぬけた死人のような顔をするな
    疲れたんだ、他の女を思いながらお前と寝るのは
    いい匂いがして 若くて 皺一つない女
    だが私の夢想はかなわない
    結局またお前が相手で 反吐が出る思いがして
    自分が嫌になる その繰り返し。
    妻の死後 痛みのはけ口が欲しかった
    相手は誰でもよかった 雌牛でもな
    娼館は遠いし二ヶ月に一度では私には不十分だった
    被害者面をしてないで帰ってくれ
    帰れ!お前には自尊心がないのか

  • ファニーゲームのようなショッキングさはないが、じわじわ後味悪い系。パルムドール受賞作。

  • 2017.2.20 視聴

  • 第一次世界大戦前夜のドイツ北部。プロテスタントの教えを信じる村人たちに、不可解な事故が次々と襲い掛かる。小さな村は不穏な空気に包まれ、村人は疑心暗鬼に陥り、子どもたちは苦悩を感じ始めていた。

    ミステリーの体裁を取りながら最後まで犯人が明示されないのですっきりしませんが、脚本の精度と格調高いモノクロ映像は素晴らしいですし、人間の心の中に潜む残酷な部分も見事に表現しています。確実に観る人を選ぶ映画ですが、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したのも頷ける内容だと思います。

  • 不快というよりよくわからなかった感が強い。
    純真無垢さの象徴たる白いリボンを結ぶ大人が嘘つきという皮肉。

    【メモ】
    キリスト教史Ⅰ
    第一次大戦直前の北ドイツの村
    宗教改革以来続く家父長制の中の抑圧
    マルティン:ルター、ニーチェがモデル
    ラストの賛美歌はルターの「神は我がやぐら」

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