NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2011年 08月号 [雑誌]

  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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  • / ISBN・EAN: 4910068470812

感想・レビュー・書評

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  • 2011年8月号の目次
    森の精霊 スピリット・ベア

    カナダの太平洋沿岸部には、先住民が見守り続けてきた、神秘的な白いアメリカクロクマがいる。

    文=ブルース・バーコット  写真=ポール・ニックレン

     カナダ西部、太平洋に面したブリティッシュ・コロンビア州の苔むした森に、白い毛に覆われたクマが暮らしている。先住民が「スピリット・ベア(精霊のクマ)」と呼ぶアメリカクロクマだ。その名前が示す通り、アメリカクロクマの体毛は普通、黒色か褐色をしている。しかし、劣性遺伝により、白い体毛の個体が生まれることがあるのだ。

     先住民たちはその希少さ・神秘さから、白いクマを恐れ敬い、仲間の間でさえ、話題にすることが許されなかったという。ヨーロッパの毛皮商人たちがこの一帯に押し寄せ、アメリカクロクマやハイイログマを大量に狩っていた時代でも、先住民たちは白いクマの存在を他言しなかったのだ。

     こうしてひそやかに守られてきたスピリット・ベア。緑豊かな森に暮らす白い精霊の素顔を少しのぞいてみよう。
    編集者から

    “白いクロクマ”というのは矛盾した言葉です。それはたとえば、“黒いホッキョクグマ”と言っているのと同じようなもの。そう考えると、このクマがいかに風変わりか実感しやすいかもしれません。
     特集内には、クマたちの猛々しい姿と愛らしい表情が満載です。カナダの先住民たちがクマを守るために実践した、“話さない”環境保護にも注目してください。(編集M.N)

    楽園を脅かすパイプライン

    カナダ西部、スピリット・ベアの森に、大規模なパイプラインを建設する計画が持ち上がっている。

    文=ブルース・バーコット

     スピリット・ベアなど、多様な生物が息づくカナダ西部の温帯雨林「グレート・ベア・レインフォレスト」。この手つかずの自然がいま、脅かされようとしている。石油を輸出するために、内陸のアルバータ州からパイプラインを引く計画が持ち上がっているのだ。

    カナダのエネルギー大手、エンブリッジは、アルバータ州のオイルサンドから抽出された原油を輸送するため、アルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州の港町を結ぶ総延長1177キロのパイプラインを建設する計画を発表。中国をはじめとするアジア市場へ石油を運ぶためだ。パイプラインが建設されれば、グレート・ベア・レインフォレストの豊かな自然が脅かされるだけでなく、カナダの漁業にとって貴重な水域を超巨大タンカーが航行することになる。

     パイプライン計画は実現してしまうのだろうか。議論の焦点となっているグレート・ベア・レインフォレストを訪ねてみた。
    編集者から

     また北米の話か――と思わないでください。このパイプラインで輸送されるのは、アルバータ州のオイルサンドから抽出された原油。その原油は超巨大タンカーに積み替えられ、中国などアジアに輸出されます。
     オイルサンドは、2009年3月号の特集に書かれているとおり、採掘によって環境に大きな負荷をかける資源です。日本の石油資源開発株式会社(JAPEX)も30年以上前からアルバータ州でオイルサンドの開発にかかわっていて、日本と無縁ではありません。遠い国の環境問題と思わず、日本のエネルギー問題として読んでもらえれば幸いです。(編集T.F)

    ロボットと人間の未来

    人間にそっくりな、自分で考え行動するロボットが誕生しつつある。共に生きる覚悟はできている?

    文=クリス・キャロル  写真=マックス・アギレラ=ヘルウェグ

     自分で考え、自分の意思で行動し、人間と心を通わせる……。そんなロボットが世界各地の研究室で生まれようとしている。

     展示会でコンパニオンを務めるアンドロイドやサッカーに興じるロボットはすでに登場しているし、さらに、家事労働や子守り、高齢者の介護まで行う高度なロボットが開発され、私たちと暮らしをともにすることになるという。

     ロボット工学の世界に、「不気味の谷」という概念がある。40年以上前に日本のロボット工学の先駆者、森政弘が提唱した。その谷とは、人々は人間に似た、人間的な動作をするロボットにある程度までは好感を抱くが、姿も動作も人間そっくりなのに、微妙に人間と違う点に気付くと、その好感がいきなり嫌悪感に変わるという境界を指す。多くのロボット工学者がこの危険な谷に踏み込もうとしないが、あえて谷を越えようとする研究者もいる。大阪大学の石黒浩教授はその一人だ。自分そっくりの分身ロボットを開発し、人間とロボットの境界を越える研究に挑んでいる。

     ロボット工学の最前線を取材し、ロボットと人間の未来を見つめる。

     私たちはロボットたちと生きる覚悟ができているのだろうか?
    編集者から

     本誌「もっと、ナショジオ」でも取り上げていますが、この特集に登場するアンドロイド、ユメちゃんの妹分に会ってきました。写真では分かりづらいのですが、手足はきちんと血管が浮き出ているなど、かなり精巧な作り。ヘアメイクは人間のプロの方が手掛けていて、きちんと流行を押さえて都度変えているのだとか。現在、最新型の「F」まで入れると4姉妹になり、担当者のお話では、彼女たちの“追っかけ”も存在するそう。2次元と3次元の狭間にいるアイドルという感覚なのでしょうか? でも、そんな話に驚いていた我々スタッフも、気がつかないうちに彼女を「この娘(こ)」と呼び始め、完全に感覚が麻痺してきました。ああ……危ない、危ない。もうここまできたら、「江口愛実」をモデルにした末っ子を、ぜひ。(編集 H.O.)

    参考資料:『ロボットとは何か――人の心を映す鏡』石黒 浩 著 講談社
    アンドロイド研究の第一人者、大阪大学の石黒教授が語るロボットと未来。自身のロボット研究の過程をたどりながら、「ロボットとは何か」、引いては「人間とは何か」というテーマを追求していきます。文系の人にもおススメ。特集で登場するさまざまなロボットの詳細や写真も見られますよ。

    猿人か ヒトの祖先か

    南アフリカ共和国で見つかった『セディバ猿人』の化石。人類の起源を解く鍵となるか。

    文=ジョシュ・フィッシュマン 写真=ブレント・スタートン 復元模型=ジョン・ガーチー

     200万年前、アフリカ南部の洞窟へと通じる穴に、ある生き物が落ちた。その生き物は外に出ようと試みたかもしれないが、結局、その洞窟で息絶えることとなる。そして、長い年月の後、化石となって発見された。

     南アフリカ・ウィットウォータースランド大学の古人類学者リー・バーガーは、この化石が新種の猿人のものであるとし、「アウストラロピテクス・セディバ」と名付けた。セディバ猿人は、アウストラロピテクス属とホモ属(ヒト属)の双方の身体的特徴をあわせもっている。小さな脳や長くて高い頬骨、長い上肢などはアウストラロピテクス属に、小さめの歯や横に張り出していない腰部、長い下肢などはヒト属に近い。こうした身体的特徴から、バーガー率いる研究チームは、セディバ猿人が二つの属の中間的な存在だったのではないかと考えている。猿人からヒトへの進化、その過程を解明する上で、セディバ猿人の化石が重要なカギを握っているのかもしれない。
    編集者から

     マラパ洞窟の研究チームは、セディバ猿人がホモ属の直接の祖先であると主張し、古人類学の定説に真っ向勝負を挑みます。ただ、セディバ猿人の位置付けは、昨年の論文発表以来、世界中の古人類学者たちの間で物議を醸しているようです。進化の道筋を探ることの難しさと、「もしかするとセディバが人類の祖先かもしれない」と想像する“夢”を同時に感じさせられる特集です。(編集M.N)

    ミャンマー 闇と光の行方

    形だけの民政移管、虐げられる少数民族、他国に狙われる資源……。この国は、どこへ向かうのか。

    文=ブルック・ラーマー  写真=張乾チ

     2010年11月の連邦議会の総選挙を経て、今年1月に首都ネピドーの壮麗な国会議事堂で、22年ぶりの連邦議会が開かれたミャンマー。新たな大統領も選出され、民政移管を果たしたかにみえるが、その実情はなかなか国外に伝わってこない。

    今回、ナショナル ジオグラフィックの取材チームはミャンマー各地に足を運んだ。かつての首都ヤンゴンの街角で海賊版DVDを売る若者たちの話に耳を傾け、軍事政権が造った新首都ネピドーの巨大さに呆然とし、水力発電用のダム建設に反対する少数民族に会った。そして、自宅軟禁を解かれた民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チーに取材し、“次の一手”を教えてもらった。

     見せかけの民政移管なのか?それとも、民主化への第一歩なのか?

     ミャンマーはどこに向かって進んでいくのか。
    編集者から

     この特集の編集をしているあいだ、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のメロディがずっと頭の中に流れていました。なぜこの曲なのか? 気になった方は本文の冒頭あたりを読んでみてください。
     今回の特集には、アウン・サン・スー・チーさんへのインタビューをはじめ、ニュースの背景を理解するうえで欠かせない情報がたっぷり盛り込まれています。イーグルスにつられて読み始めた方は、ついでに最後まで読んでいただけると嬉しいです。
    少し裏話をしておくと、日本版編集部がこの特集の英文の最終原稿を受け取ったのは、6月1日。6月29日には、ミャンマー政府がアウン・サン・スー・チーさんに政治活動中止を通告したという報道がありましたが、そのとき特集の翻訳・編集は最終段階に入っていました。印刷所に入稿したのは7月1日です。
     皆さんが特集を読む頃、ミャンマー情勢はどうなっているのでしょうか?(編集T.F)

    インドの聖なるサル

    オナガザル科のハヌマンラングール。ヒンズー教徒が神の使者と崇めるサルの素顔に迫る。

    文=ジェニファー・S・ホーランド 写真=ステファノ・ウンターティナー

     インド亜大陸を中心に生息するオナガザルの仲間、ハヌマンラングール。細長い尾や四肢が特徴だ。インドでは、古代叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する猿の神ハヌマンの使いと信じられていて、手厚く保護されている。そのため、人間を恐れることなく、都市部や寺院などにも出没し、民家や商店から食べ物を奪い取ることもあるという。

     しかし、聖なるサルをめぐる状況が変わりつつある。人口の増加で、ラングールの生息地にまで人間が住みつくようになり、緊張が高まっているのだ。畑の作物を失敬しても、これまでは大目に見てもらえたが、今では追い払われたり、捕まえられて痛い目に遭うサルもいるという。神の使いでさえ、邪魔物扱いされる時代になってきているようだ。
    編集者から

     この特集の写真は、世界的に注目を浴びているイタリア出身の動物写真家ステファノ・ウンターティナーが撮影しました。2009年9月号「ペンギンの王国」や2010年12月号「オオハクチョウ」で素晴らしい写真を見せてくれましたが、今回もハヌマンラングールたちを印象的にとらえています。長い尾と四肢を使って軽やかに跳躍する瞬間や公園のベンチを我が物顔で陣取る様子など、サルたちの日常が垣間見えてくるようです。
     短いテキストですが、興味深いことが書かれています。これまで“神の使い”と崇められ、守られてきたサルたちの立場に変化の兆しが見えているというのです。サルの生息地に人間が住みつくようになり、畑を荒らされた住民が仕返しをするようになっています。人間と野生動物の距離が縮まり、生まれた摩擦です。同じようなことが日本でも起きています。毎年のようにニュースになるイノシシやサルなどによる食害です。インドのサルの特集ですが、私たちの身の回りの問題を考えてみるきっかけになると思います。(編集S.O)

  • 森の精霊スピリット・ベア
    楽園を脅かすパイプライン
    ロボットと人間の未来
    猿人か ヒトの祖先か
    ミャンマー闇と光の行方
    インドの聖なるサル

  • 北極以外にも白いクマがいるんだね。

  • 養豚家のおじいちゃんが子豚と散歩に行く写真がほのぼのしていた。あとアメリカクロクマの話とかがあった。

  • この号のいいちこのキャッチが秀逸すぎて鼻血もの。ぐっときた。

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