NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2012年 02月号 [雑誌]

  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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  • 2012年2月号の目次
    犬の遺伝子を科学する

    人類最良の友として多様な進化を遂げた犬。その遺伝子が、人間の遺伝病の解明に役立つかもしれない。

    文=エヴァン・ラトリフ 写真=ロバート・クラーク

     犬好きにとって、米国ニューヨークの2月の風物詩は、マディソン・スクエア・ガーデンで毎年この時期に開かれる大規模なドッグショー。各地のショーを勝ち抜いてきた173犬種の名犬たちが一堂に会し、覇を競う。

     人類最良の友として、犬(イエイヌ)は多様な進化を遂げてきた。番犬や牧畜犬、猟犬、軍用犬や警察犬、あるいは身近なペットとして、ブリーダーたちは次々に、新たな犬種を追い求めてきた。現存する350~400の犬種は、ここ200年ほどの間に作られたというのだから、驚くべき成果だ。

     近年になってイヌ科動物のゲノム解析が進んでみると、意外な事実も明らかになってきた。多様な犬種は遺伝的多様性に支えられているのかと思いきや、犬のバラエティー豊かな姿かたちや毛色、毛質、体格などは、実は遺伝子のわずかな違いに支配されているというのだ。こうした研究が、人間の遺伝病のメカニズムを解明するうえでも役立つかもしれないと、期待されている。
    編集者から

     愛らしい犬が盛りだくさんのこの特集、犬好きの方は必見です。興味深いのは、85犬種のDNAを解析して、その結果を基に犬たちを四つのグループに分類した研究。牧畜犬系のように思えるジャーマン・シェパードが、実はブルドッグやボクサーと同じマスティフ系(使役犬)のグループに属するのは意外です。そういえば昨年11月、奈良県警の嘱託警察犬に2年連続で採用されたチワワのニュースを目にして驚きました。ですが、この研究によると、チワワが属するのは猟犬グループ。警察犬として活躍できる可能性があるのも納得です。(編集M.N)

    最後の洞窟の民

    パプアニューギニアで洞窟を転々としながら暮らす人々。病気に苦しむ彼らは、移動生活を続けられるか。

    文=マーク・ジェンキンス 写真=エイミー・トンシング

     日本の1.2倍ほどの国土で800以上の言語が話されているパプアニューギニア。そんな“民族の宝庫”にあって、メアカンブットは今も移動生活を送る数少ない人々だ。高地で洞窟を転々としながら、ひっそりと暮らしている。

     本誌はメアカンブットの人々の暮らしぶりを追うため、パプアニューギニア北部の彼らの居住域に足を踏み入れた。そこで目にしたのは、肺炎などの病気に苦しむ人々の姿だった。薬を手に入れるには、最寄りの診療所まで2日かけて山を下らなければならない。

     移動生活の伝統には誇りを持っているが、病気のことを考えると、山を下りて定住したほうがいいのかもしれない。そう思案する洞窟の民は、パプアニューギニア政府に伝えてほしいことがあると、取材班にある伝言を託した――。
    編集者から

     パプアニューギニアの少数民族を取り上げるのは、日本版では今回が初めて。しかも、2009年12月号の「ハッザ族」と2011年5月号の「ヨセミテの巨岩に挑む」を足したような、ハラハラドキドキのルポルタージュに仕上がっています。ウェブで写真を楽しんだら、ぜひ本誌で本文を読んでみてください。(編集T.F)

    虚栄の都 アスタナ

    中央アジアの新興国カザフスタンが、豊富な資源で得た巨額の資金を投じて建設した新首都。人工的なその街で、若者たちが夢を追う。

    文=ジョン・ランカスター 写真=ゲアード・ルドウィッグ

     中央アジアの新興国カザフスタンが遷都したのは1997年のこと。石油や鉱物資源で得た莫大な資金を投じてつくられた新首都アスタナは、強権的な指導者ナザルバエフ大統領の野心の表れだ。

     華やかさとは裏腹に、どこかはかなさを感じさせるこの街へ、多くの若者が夢を追い求めてやってくる。果たして彼らには、どんな未来が待っているのだろうか?
    編集者から

     本編に出てくる新首都のシンボル・タワー「バイテレク」。その展望台は97メートルの高さにあるのですが、これは遷都の年(1997)にちなんでいるのだとか。翻訳の確認でお世話になったカザフスタン大使館の書記官の方に教えていただきました。

     ちなみに書記官の皆さん、日本語力は日本人以上。どうやって勉強されたのでしょう?? 以後、気合を入れて自分の原稿を見直したのは言うまでもありません……。(編集H.O)

    バーミリオン・クリフ

    米国アリゾナ州北部にそびえる断崖絶壁。悠久の時と自然の力が生んだ、圧倒的な造形美をとらえた。

    文=バーリン・クリンケンボルグ 写真=リチャード・バーンズ

     高さおよそ900メートル、鮮やかな朱色の断崖絶壁が壮大な景観を繰り広げる。米国アリゾナ州北部の「バーミリオン・クリフ国立モニュメント」は、米国内でも比較的無名の、知られざる絶景スポットだ。

     ダイナミックな景観の割に、無名なのにはわけがある。周囲にグランド・キャニオンをはじめとする有名国立公園が多数あるうえ、一帯は地形が険しく、生半可な覚悟と装備では近づけないからだ。乾期に歩けば脱水症状のおそれがあり、雨期にトレイルをたどれば鉄砲水の危険が待ち受ける。

     この地にはかつて、広大な砂漠が広がっていた。太古の砂漠が風と水、地球の重力の働きで、岩と化し、地層をなし、多彩な浸食地形が生まれていった。悠久の時と自然の力が生んだ、圧倒的な造形美を紹介する。
    編集者から

     「バーミリオン」とは英語で朱色のこと。その名のごとく、バーミリオン・クリフの岩肌は鮮やかなあかがね色をしています。そんな神秘的な景観を保護するため、たとえばこの地の代表的な地形「ザ・ウェーブ」一帯に足を踏み入れるのが許されているのは、1日わずか20人。まさに秘境と言えるでしょう。バーミリオン・クリフの崖は浸食によって少しずつ北西方向に後退しているそうです。いつか写真の中にしか存在しなくなることを考えると、この記事がより貴重なものに思えてきます。(編集M.N)

    美しき姫君の秘密

    インクとチョークで描かれた若い女性の肖像画はダ・ヴィンチの真作なのか? 最新科学で、その真相に迫る。

    文=トム・オニール

     若い女性の横顔の肖像画は、果たしてダ・ヴィンチの真作なのか?

     画廊で見つけた19世紀のルネサンス風の肖像画が、実はダ・ヴィンチの未発見の真作だったとしたら――。この絵を買い求めた美術収集家は、ただならぬものを感じ、「もしや本物のダ・ヴィンチの作品では」と考え始める。そして、ダ・ヴィンチ研究の世界的権威に鑑定を依頼する。

     この絵が描かれた記録はないものの、ペンで描いた陰影は、ダ・ヴィンチ同様、この絵を描いた画家が左利きであることを示している。さらに科学的に肖像画を分析すると、絵が描かれている子牛の皮で作られた紙(ヴェラム)は15~16世紀のものと、年代もダ・ヴィンチの生きた時代と一致。肖像画のモデルが身にまとうファッションも、ルネサンス期のミラノのものであることを特定。こうした事実を積み上げて、とうとう絵に描かれた人物の正体が明らかになる。
    編集者から

     全世界の誰もが認める希代の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。解剖学、空気力学、絵画と、多面的にその才能を開花させたことは言うまでもありません。ダ・ヴィンチが残した絵画はそれほど多くはないため、真贋(しんがん)の判定は困難を極めます。また、ダ・ヴィンチが常に新たな絵画技法にチャレンジする画家で、同じ方法を取ることをあまり好まなかったことが、鑑定の難易度をさらに高めているそうです。

     そうした困難を乗り越えながら、絵を科学的に“解剖”していく様や、小さな事実を積み上げ、描かれた人物を論理的に特定していく過程は、まるでミステリーのようにも感じます。興味が尽きない方は、その様子を余すところなく映像で取り上げた弊社刊行のDVD「アート科学鑑定 『美しき姫君』はダ・ヴィンチの真作か」(60分)もオススメです。(編集T.T)

    津波 そのメカニズムと脅威

    ほぼ毎年、世界のどこかで起きる津波。日本やインドネシア、米国の事例から、何を学べるのか。

    文=ティム・フォルジャー

     記録に残された最初の津波は、紀元前2000年頃にシリア沿岸で起きたもの。以来、津波による死者は累計で50万人以上にのぼる。その半数近くが、2004年にインドネシアのスマトラ島沖で発生したインド洋大津波の犠牲者だ。

     東日本大震災のときのように、多くの津波は、太平洋とインド洋の「沈み込み帯」と呼ばれる海底の断層が動くことによって起きる。しかし、津波の発生原因は地震だけではなく、火山噴火や斜面崩壊によって起きた事例も過去にはあった。

     津波は世界のどこで、どのようにして起きるのか。そこから私たちは、何を学べるのだろうか。
    編集者から

     この特集を読んで感じたのは、自然の“声”に謙虚に耳を傾け、人間に何ができて何ができないかを冷静に見極めたうえで防災対策をとらなければならないということです。日本やインドネシアで起きた大災害の教訓が未来のずっと先にも生かされるよう、記憶を次世代に受け継いでいかなければと思いました。

     本誌には、英語版編集長のクリス・ジョンズによる津波のエッセイも掲載しています。そちらもご一読いただけると嬉しいです。(編集T.F)

  • どの犬種がオオカミに近いか…という特集が良かった。

  • パプアニューギニアの最後の洞窟の民。カザフスタンの虚栄の首都。ダ・ヴィンチの真作か。津波。

  • 3.11の津波の記事。
    まだあまりにも記憶に新しくて、あの日の事を思い出すと今でも鳥肌が立つ。
    町が一瞬のうちに濁流に飲み込まれる写真には思わず目を背けたくなりました。
    世界の海溝地図を見ると、どれだけ日本の周りに集中しているかが分かります。

    「美しき姫君の秘密」について。
    インクとチョークで描かれたこの肖像画、本当に美しい!!
    ダ・ヴィンチの未完の巨大壁画が残されている可能性が、
    先日ニュースで取り上げられたばかりだったのでビックリでした。

    彼も、自分が死んで500年近く経っても、
    まさかこんなに注目を集めていると予想していなかっただろうなぁ。

  • 気になった記事は次の3つ。

    「イヌの遺伝子」
    よく考えてみると犬は不思議な生き物だと思う。
    外見だけでは、チワワとセントバーナードが同じ種類の生き物だとは思えない。それほどまでに違っていても、「犬」と分類される。

    これが猫なら体の大きさや特徴も大体、似通っているので、「猫」を知らない人がいたとしても、説明するのは簡単そうだが、「犬」だったら、そうはいかない。

    面白かったのはチャウチャウがオオカミ系の遺伝子を多く持っている、という点。
    犬は見かけによらない、という事だろうか。

    人間がさんざん品種改良で、これほどまでにたくさんの種類の犬が誕生したのだが、その「品種改良」がそのまま犬の遺伝子の研究にもなっていたそうだ。
    その結果が人間向けの医学に応用される事が期待されている。

    この記事を読んだ時、病気の治療と同時に「子供をデザインする」といった事も頭をよぎった。
    が、犬の研究の成果だが、単独で「背が高くなる遺伝子」といったものは存在せず、複数の遺伝子が影響しあう事によって、「背が高くなる」らしい。

    自分が望んだ通りの子供を作るのが可能になるのは、まだまだ先のようで、安心した。


    「写真は語る」
    サブタイトルは「空を飛びたい、せめて一瞬だけでも」
    おそらく、そう思った事がない人はいないだろう。

    が、この記事の筆者が選んだ方法は最も原始的な方法。
    「助走をしてジャンプ」

    ジャンプした瞬間を知り合いに撮ってもらう。
    ジャンプとは言っても、宙に浮いている間はスーパーマンやウルトラマンのような飛行ポーズをとるので、着地は失敗することが多い。

    芸術活動の一環として、このような事を行ったらしい。
    ナショナルジオグラフィックには毎号、びっくりするような写真が掲載されているが、純粋に「おバカ」な写真群なので印象に残った。


    「バーミリオン・クリフ」
    地層の堆積と川の浸食や風化がもたらした、ただただ、息を呑むような写真。
    理屈では分かるのだが、やはり何度も聞いてしまいたくなる。
    「この光景は、どのようにしてできたのですか」と。

  • 今回は、イヌの遺伝子の話題、カザフスタンの話題、津波の話題など、興味がある話題が多くて、面白かったです。
    イヌが、短期間にあんなに多種多様に変化していったことの不思議が描かれています。
    カザフスタンの話題は、私の仕事の関係で、何故カザフスタンに輸出する医薬品にカザフ語の添付文書をつけなければいけないのか、ロシア語ではダメなのか、と疑問に思っていたので、その謎が解けたということが興味深かった原因です。正直、カザフの将来が心配です。
    津波の話は、外国人記者の目から見た話題だったので、日本人が書く視点とほんのちょっとだけ違っている点が興味深かったです。

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