灼熱の魂 [DVD]

監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ 
出演 : ルブナ・アザバル  メリッサ・デゾルモー=プーラン  マキシム・ゴーデット  レミー・ジラール 
  • アルバトロス
3.90
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本棚登録 : 291
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4532318405568

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃の問題作であり、映画ファンなら見逃せない傑作でした。ヴィルヌーブ監督の作品はいくつか見ていますが、全てにおいて満足度が高く頭抜けた才能をお持ちです。“死地でのひりつく感覚”を描かせたらライバルはいませんね。謎の遺言で始まる物語は重層的かつサスペンスフルでギリシャ悲劇をなぞる脚本は非凡です。中東のとある国家(レバノンか) では宗教対立で分断し内乱が続き、ヒロインは翻弄され壮絶な人生を生きます。遺言は憎悪にピリオドを打とうとしたのでしょうが、知らない方がいい事実もあると思いました。

  • 2011年日本公開作品。子供達が謎に満ちた母の過去を母の死を機に振り返るという内容。内容は重い。辛い気分になります。中東を舞台にイスラム教とキリスト教の対立。その中から生まれる一人の女性の過酷な人生。その人生を辿る子供達。結末に衝撃を受けます。最後は母の愛なのかなあという結末と理解しました。

  • ドゥニヴィルヌーヴ作品、観られるぶんはだいたい観たと言いつつ、評価の高い『灼熱の魂』だけは観てなかったのでようやく観ました。ジャンルで言うと戦争ミステリ。なんというか、『きょうはなんのひ?』+横溝正史というか……作風としては全然違うのに、なんとなく古典的なミステリのホームズやポワロや金田一的なところを感じてしまいます。

    面白いかと言われるとまあまあ。ラストの方、偶然が一度ならいいけど2回あるので、御都合主義的に感じてしまってリアリティを損なう。これが小説や演劇などだったら良かったけど映画で、映像もリアルなためあんまり……。(ふたつめの偶然はどの程度の確率で起こるのか?と思って移民のデータがあるか調べてみたけどよくわかりませんでした)

    この部分も含め、この作品は寓話的なんだと思う。というのは、場所がどこかを作中でほとんど語らないからです。これと同じ手法だったのが、スピルバーグの名作『ミュンヘン』。世界を転々とするけど場所がどこかを文字で出さない(映像でわかるけどね)。
    キリスト教徒とイスラム教徒が争ってる紛争地帯の話、というのはわかるので、「この戦争だけ」と限定させずに、世界各地にある宗教対立の話、戦争の話、憎しみの連鎖の話ですよという作りなんだと思う。けしてあなたたちに無関係な話ではないんだ、と。

    私も「キリスト教徒とムスリムが争った戦争で、公開時から35年前ってどこだっけ……あー、『戦場でワルツを』の……レバノン?」となりました。『戦場でワルツを』は、レバノンに侵攻したイスラエル軍の当時の若者たちの話だから、また視点が違うけど。レバノン戦争って、私たち世代だと子供の頃にやってたので、そんな遠い昔の話ではない感覚なのです。当時は当然理解できてなかったけど、ニュースで流れてた記憶がなんとなくあります。

    ドゥニヴィルヌーヴ作品で言うと、のちの作品の要素と一致してる部分があるのがなんとも不思議。親探し、双子、孤児院は『ブレードランナー2049』、双子ものは『複製された男』、親子の愛、憎しみは『プリズナーズ』……などなど。
    エンタメ的に「面白い」と感じたことは一度もない監督さんですが、「退屈だ」と感じたことも一度もない監督さんです。個人的には、映画というのは面白いか否かではなくて、退屈か否かだと思う。最も考えさせられた作品は『静かなる叫び』でした。

  • ~★~驚愕の真相に・・・亜然となる~★~

    感想は、イヤだ!イヤだ!こんなのイヤだ!ふざけんな!です。

    しかし、物語としては、
    こんなことあってたまるかって意味で大変、面白いです。

    オープニングと中盤あたりに大好きなレディオヘッドの
    ”You and whose army”が挿入されていたのには大感激!

    とても悲しいお話でしたが、曲が救いとなりました。

    忘れられない作品となるでしょう。

  • 灼熱の魂
    Amazon prime
    冒頭の少年の目がとても印象的で「この作品、重い…な」って気になった。恩師が彼女に提示する話…とても興味深い。
    踵の印はそう言うことだったのか、産まれてすぐなのに…キツいな
    中東なのは間違いないけど何処だろうな?
    これヴィルヌーブ作品なんだね。彼の作品は良いの多いよな。
    宗教が違う、神の名が違う、教えが違う…経緯は色々有るだろうけどここまで無慈悲に殺し合うなんて…意味が分からん。
    結果、負の連鎖…血を血で洗う報復合戦と化して救いのない状況に
    AKにマリア様の写真貼ってた。慈悲の心を説く者を信仰しても敵は容赦なく殲滅するって何だかなぁ〜って感じ。
    あんな絶叫を聴き続けるのは地獄としか言いようがない。歌う事で自分を守ったんだな…
    夫を奪われ、子供を諦めて過去を捨てて、地獄を見て、闇に堕ち凶行に及び囚われた。拷問され凌辱されそれでも折れずに強くいようとした理由って何だろうか?
    あまりにも凄まじい結末に打ちのめされた。想像の遥か上…こんな事あるのか?これって物語?それとも実話?余りにも悲しい話だったよ。
    これは観て良かった。観ておくべき作品だった…
    嗚呼、至福の時とでも言えばいいかな良い作品観た後のこの高揚感はすごい笑笑。整いました笑笑

  • 時系列が折り込まれた展開のうまさ、母と双子達の演技、真実がわかったところでの衝撃と母の愛、いずれも素晴らしい。一方で、やっぱり無理がないか、これ。
    きっと「母の愛」は全てを超越してる、ということなのだろう。

  • 自らのための備忘録

    壮絶な映画でした。
    とはいえ、最初の頃は母娘の区別もつかず、母の時間軸も分からず、どこの国にいるのかも分からず、一体いつどこで誰が何をしているかがまったくわからず見ていました。

    双子というのにシモンは白人の容貌だし、突拍子もない内容の遺言書と、冒頭の少年の関係もわからず、ただ第83回アカデミー外国語映画賞にノミネートされ、ジニー賞の主要部門を総受賞したということと、珍しくフランス語映画だったという理由だけで、五里霧中状態で見続けていきました。

    ここからはネタバレです。映画を見ていない方は読まないでください。

    * * * * *

    壮絶、衝撃的という形容詞がぴったりでした。1+1=1の意味がわかったジャンヌの悲鳴を聞いた時、戦慄に慄きました。

    しかし、不可解な点もいくつかありました。それは遺言書です。ナワルはあまりのショックで放心状態となり、そのまま回復することなく、つまり双子の娘息子であるジャンヌやシモンと話をすることなくこの世を去りますが、では誰がどうやってあの遺言書を書いたのでしょうか。もちろんそれは公証人ジャン・ルベルです。

    映画でも1:20:00辺りから、瀕死の床にあるナワルがジャンに囁いて、ジャンが何かを書き付け、父宛、息子宛の封筒にそれを仕舞う様子が映し出されています。つまり、遺言書はナワルの自筆ではなく、ジャンの代筆であったということになります。

    双子の娘息子は、それを疑問に思わなかったのでしょうか? 母は子どもたちと話ができないほどにショック状態であったというのに、あれほど整然とした遺言書を書いたということに。しかも自筆ではないのです。

    そして遺言書の内容を見れば、ジャンは最初から2人を呼んで遺言書を手渡した時にはすべてを知っていた、ということになります。知っていたにも関わらず、その内容を告げずに2人に遺言書を手渡したのだということなります。

    2人は読んでいないかもしれないけれど、冒頭の書き出しは、「私は震えながらあなたに書いています」とあります。震えているのは誰? もちろんナワル自身のことでしょうが、それでは偽りの手紙となってしまいます。

    最後、墓碑の前に佇む姿が映し出されますが、つまり、公証人に連絡を取って、2人とも連絡を取り合うようになったということなのでしょうか。私には遺言書の「約束」が理解できていません。

    原作を読んでみたいと探しましたが、見つけることができませんでした。


    私はこの映画を繰り返し見ました。見ずにはいられませんでした。

    そもそも、キリスト教徒である主人公ナワルが、恋に落ちた難民のイスラム教徒と共に駆け落ちしようとしたところ、自分の兄に恋人を撃ち殺されます。そして村を追われ、仕方なく生まれた子どもを孤児院へ渡し、必ず迎えにくると心に誓い、自分は大学へ進みます。

    ずっと後に双子のひとりジャンヌが母の村を訪ねた時に、母の名を知った途端、それまでそれなりの歓迎ムードだった村の女性たちの表情は一変し、彼女を罵り「ナワルの娘ならこの村にはいられない」突き放します。異教徒の子どもを出産することは、一族の恥であり、村八分されて当然だと言うことなのでしょう。

    目の前でキリスト教徒によって同じバスに乗り合わせたイスラム教徒が虐殺され、また今度はイスラム教徒にらよって息子のいたはずの孤児院が襲撃され息子の安否はわからなくなり、なんと彼女自身も指導者を狙撃する殺人者となり拘束され刑務所に繋がれ、そして悲劇へと続いていくのでした。

    血で血を洗う血塗られ映画ですが、心からホッとできたのは、双子を取り上げてくれた看護師マイカとの出会いでした。優しい眼差しで両手を伸ばし、双子の名を「ジャナーン」「サルワン」と懐かしげに呼ぶのでした。

    インターネットで解説やあらすじを探して読んでいたら、元々は演劇作品で、ワジディ・ムアワッドの原作も『焦炎』というタイトルのようだけれども見つけられませんでした。

    中東問題は、日本人にはあまり馴染みがなく、報道も少なく、関心もないため、私もよく知らないできたけれど、改めて戦争の悲劇を考えさせられました。

    最後にサイモンが兄探しをしていた時の、「向こうが探す。声をかけられた人とお茶を飲めばよい」というのは、千一夜物語や人質解放交渉が思い浮かびました。

    主演女優ルブナ・アザバルの演技は素晴らしかった。周りを固めた俳優陣、それにスタッフもとても良かったと思いました。

  • 母の死後、遺言書の指示に従って双子の姉弟が父と兄を探しに中東へ行く話。
    ただし、ただ単純に人探しの話では無く、複雑過ぎて重すぎるし暗すぎる内容だった。

    あまり人に勧めづらい内容だが、観るなら絶対最後まで観てほしい。

  • なんと疲れる名作でしょう。
    みやすいという所と対極にある作品の中ですが、骨太で徐々に盛り上がりもあり、終わってみれば見てよかったと思えました。
    ただ友人には進められないみにくさがありました。

  • 母親の死をきっかけに自分達のルーツを探す事になった姉弟の壮絶な物語。
    真実に近づくにつれ、ヒリヒリとした嫌な空気が漂い全てを知った時、その重圧に押し潰されそうになる。
    宗教と戦争と、続く憎悪の連鎖に運命を翻弄される姿は正に業火に焼かれる魂。

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