戦場にかける橋 HDデジタルリマスター版 [Blu-ray]

監督 : デビッド・リーン 
出演 : ウィリアム・ホールデン  アレック・ギネス  ジャック・ホーキンス 
  • ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2012年10月2日発売)
3.75
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4547462081797

感想・レビュー・書評

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  • 映画のラストで聞こえてくる歓声が誰のものかというと、英軍、あるいはカナダ人がチームにいますから連合軍の名もなき兵士たちのものですよね。橋を建設して沸き立っていた名もなき英軍捕虜たちと同じ、自分の職務を忠実に果たす軍人たちの歓声です。

    どうなんでしょうね、どっちに感情移入して見た人が多かったのかな。私などニコルソン大佐にめちゃくちゃ共感して見ていましたし、結末がどうなるかは薄々気づきつつ、というか2つの可能性しかないわけで、どちらに転んでも片方にとっては悲惨な結末に違いないと思いつつも、それでもニコルソン大佐にシアーズ少尉、このふたりの対極的なあり方をわくわくしながら眺めていました。

    いかなる境遇に置かれても、それが仮に自軍に不利をもたらすことであっても、自軍の不利など一時的なこと、戦争が終われば、この橋を渡る一般人が、イギリス人の偉業を思いながら、橋を日常に欠かせないものとして利用するのだというニコルソン大佐は、まさしく本物の士官といったところで、戦争とは外交の手段のひとつであり、国と国との関係の築き方の一類型に過ぎないというのを、作中でしっかり示してくれたわけです。

    なんのために戦うか。なんのためにならない戦いをしているのではないか。それを支えるのが誇りであり、誇りを奪われた兵士たちに、捕虜の身であっても誇りを持たせるために、たとえ一時的に敵を利することになっても、全身全霊の力で最高のものを生み出す。イギリス軍の力を示す。平和になった後にも、自らの偉業を誇りとして、君たちは生きていける。ニコルソン大佐って端々でこのように自分と部下たちを励まし、敵将斎藤をも動かしてゆくわけです。本当に優れた士官なのです。

    対照的なシアーズ少尉は、死んだ上司の軍服を奪い経歴も奪い、賄賂で捕虜生活を少しだけ快適に送る人物で、女遊びも大好き、途中までニコルソン大佐と比べると、実にふざけた男に見えるのです。その彼の真意がわかるのが、嫌々ながらに橋の爆破命令をこなしに行く道中、大学教授出身の軍人、ウォーデン少佐が負傷しながらも進軍しようとするのに対し「生きることが何よりも大切だ!」と怒鳴りつけるシーンです。

    生きるとは何か。戦うことじゃない、逃げることそのものでもない、安穏とした平和な暮らし、愉快で快適な暮らし、これを目指し、実現し、享受すること、これが生きるということだとシアーズ少尉は言うわけです。誇りのために生き、誇りを支えに生きる、そういうニコルソン大佐とは対照的に、平和を目指し、実現し、享受することこそが生きるということなのです。何のために生きるのかという問いに、ニコルソン大佐は正確なところ、答えられていないのです。誇りのために生き、誇りを支えに生きる、人間とは誇りの循環装置なのか。誇りを求め、得た誇りを消費して生きる、そんな生き方が生きるということなのかと、シアーズ少尉の叫びは訴えかけてくるわけです。

    そんなシアーズ少尉も最後には任務決行のために死をも厭わず飛び出します。いまや英軍の誇りにこだわるあまり、いまや客観的に見れば日本軍の忠実な奴隷となり下がったかのように見えるニコルソン大佐を殺すために、あれほど生きることにこだわりつづけたシアーズ少尉が「殺せ!」と叫んで届かない。皮肉なシーンですよね。先に日本軍の精神的奴隷となったのはシアーズ少尉なのです。ところが、精神的奴隷となりつつも肉体的奴隷とはならなかったがために、英軍の指令を受けて英軍の英雄となりえたのがシアーズ少尉で、精神的には英軍士官の誇りを抱いたまま、肉体的には日本軍の忠実な奴隷となったために、いまや裏切り者として英軍から命を狙われるようになったニコルソン大佐。

    戦争が終われば、現地の人が我々を思い出しながら、この橋を渡るだろうというニコルソン大佐の夢は、しかし未解決の戦争によって、自らを裏切り者の地位に落とし込みながら霧散していくわけです。悲惨ですよね。

    最終的に生きることにこだわったシアーズ少尉は英軍の一員として名誉回復されて死に、ニコルソン大佐は客観的には哀れな奴隷として死ぬわけです。そしてそこに、誇らしい英軍の作戦の成功を暗示する、誇り高い口笛と歓声が鳴り響き、ニコルソン大佐が橋に掲げた英軍の不屈の精神の証が、焼かれて川に流れていくわけです。

    戦争とはこういうものだと言ってしまえばそうですが、それを軍医クリプトンのように「狂気だ」なんて言ってしまうのも何か違う。クリプトンは必死に生きることにも誇り獲得し守ることにもこだわらず、どちらかといえばそんな苛烈な生き方じゃなく、穏やかに刺激は少なく、健康に生きること、苦痛のない人生を送ることを優先させた人物です。彼は常に傷病者を守るために熱意を持って働いた。彼にとって生きるとは苦痛を低減させることであり、シアーズのように、必死で幸福を目指し、実現し、享受することでも、ニコルソンのように、誇りの循環装置になることでもない。

    クリプトンにとってのあの結末は、苦痛が最大化された状態であって、やはりシアーズとニコルソンが自らの信念を死によって否定されたように、クリプトンの信念も否定されたわけです。3人の生き方すべてが同時に否定されたのがあのラストシーンだったわけです。そして英軍は口笛と歓声を送る。英軍とは何だったのでしょうね、全員英軍ですが、あの口笛と歓声はすべて一瞬で彼らのもとから去ってしまった。

    ことほどさように悲惨な結末なのですが、まあ映画として見る価値は抜群にあります。素晴らしい作品です。これほどまでに虚しい映画もなかなかないのですが、誰もの人生が否定されたとしても、その人生が燦然と輝いていた時期もあったじゃないか、その人生が素晴らしいものであった時期もあったじゃないかと、特定の時期を切り取って自分を慰めるしかできないのですけれども、それでもね、見る価値はあります。人生は虚しい。それを徹底して描きながら、それでも絶望を呼ぶ映画というだけでもない。わずかな希望を見出したくなるような、そういう映画に仕上がっています。逆に言えば、ささいな希望を見出さなければ、やっていられない映画とも言えます。

    ついでながら、ウォーデンだって罪悪感を抱えながら生きていくわけで、本国に戻って幸せな気分で元の教授職に戻れるとは限らないですしね。

    虚しいけれど、虚しさがすべてでもない。
    そういう映画ですね。

  • <英語音声・日本語字幕>

    近々行く予定のタイが舞台だというので、時間的に若干ムリをして観ました。
    始まって30分ほどで、タイについてはほとんど予習にならないことに気づきましたが……。

    イギリス軍が口笛を吹きながら「入場」してきたのを見た瞬間から、最後まで
    「ああ、これがあの『Lads' Army(モーレツアーミー)』の元になった時代なんだ」
    という色眼鏡が外せませんでした。
    もっとも、あの番組に比べたら、本作の大佐はずいぶん穏やかに見えます。

    ***
    ジュネーブ条約という「ルール」を順守することで
    間接的に任務に反した行動を取る英国軍大佐と、
    任務遂行のためにルールを破ろうとする日本軍大佐。
    それと、そのどちらにも固執せずに人命を優先する米国軍人(と、英国軍医)。

    誰の行動が正しいか、というのは愚問でしょう。だって戦争だもの。
    本作においては、ラストシーンが答えになっています。


    昔から、戦争に「ルール」が存在することがとても不思議です。

    正々堂々と戦い、人間を人道的に扱おうと呼びかける人の気持ちは解かります。
    ですが、そもそも戦争とは武力を用いた争いのことです。
    武力を用いる目的は、人を殺す、あるいは、その手前の状態に追い込むこと以外にないでしょう。
    戦争をしている時点で、人道に則るつもりが無いと言っているも同じ。
    「ルール」を守るかどうかは、「どの程度」道を外れるかの問題に過ぎません。

    それに、戦争を仕掛けられた側ならともかく、
    仕掛けた側がルールを守ることには、さほど意味がないように思います。
    周りから白い眼で見られると言っても、それは戦争を仕掛けた時点でそうなるでしょうし……。


    ***
    全体的に漢字の多い字幕で、1か所だけ読めなかったのが「楡」。
    これ、公開当時はほとんどの視聴者が読めるレベルの漢字だったのでしょうか?
    だとしたら羨ましい。

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