サラの鍵 [DVD]

監督 : ジル・パケ=ブレネール 
出演 : クリスティン・スコット・トーマス  メリュジーヌ・マヤンス  エイダン・クイン 
  • 東宝
3.85
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104071804

感想・レビュー・書評

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  • 「ホロコーストもの」の中では比較的少ない、フランスを主舞台にした映画。
    ナチスの傀儡政権であったヴィシー政権下のパリで起きた悲劇「ヴェルディヴ事件」(フランスで起きた最大のユダヤ人大量検挙事件)を題材にしている。
    タチアナ・ド・ロスネの同名小説の映画化である。

    ヴェルディヴ事件で検挙されたユダヤ人は1万3152人で、そのうち4115人が子どもだったという。この映画は、そのうちの一人であった少女サラを主人公にしている。

    映画の中の現在(2009年)に生きる女性ジャーナリストのジュリアが、もう一人の主人公。

    ジュリアは、勤める雑誌でヴィシー政権下のユダヤ人迫害を特集することになる。
    取材を進めると、あるユダヤ人一家と、ジュリアの義父の家族が戦時下に〝関わり〟を持っていたことがわかる。それがサラの家族であった。

    サラの名は、収容所での死亡者名簿にはなかった。生き延びたとしたら、どのような人生を送ったのか? ジュリアは彼女の足跡を追う。
    その追跡行と、サラが送った過酷な人生が映画の中で交錯していく。

    ジャーナリストがホロコーストを調査したら、身内がそこに具体的な関わりを持っていたことがわかる……という展開は、いささかご都合主義ではある。が、映画全体から見ればそれは小瑕だ。

    かりに現在のパートを全部取っ払って、サラの人生のみを描いたとしたら、あまりに重苦しい内容になって観るのがつらかっただろう。

    サラは戦後まで生き延びるが、それでも、彼女の人生にはずっと、ホロコーストが暗い影を落とす。
    真っ黒い絶望の片隅に小さな希望を残すようなラストは、深く静かな余韻を残す。

  • フランス人と結婚したジャーナリストのジュリアは、夫の家族が代々住むパリのアパートに引っ越すことになる。しかしそのアパートは第二次世界大戦時に、迫害されたユダヤ人の家族が住んでいるものだった。
    ジュリアはユダヤ人家族の行く末と、夫の家族にアパートが引き渡されるまでの経緯を調べ始めるが…。

    第二次世界大戦時のユダヤ人迫害と言えば真っ先に思いつくのがドイツのナチスで、ほかヨーロッパ諸国がどうしていたかというのを知ってる日本人は少ないと思う(恥ずかしながら私は全く知らなかった)。
    それも当然と言えば当然で、当のフランスですら国内でのユダヤ人迫害の事実を近年になるまで決して公には認めていなかった。
    根拠のない当てずっぽうだが、戦時中の軍国主義日本のアジアに対する行為が今の民主主義日本に対しても禍根を残していることに対し、ドイツの行為はすべて「ナチス」に帰しており現存するドイツに対しての風当たりがそこまで強くないのは、他のヨーロッパ諸国もナチスに少なからず加担していたという共犯意識があるからなのかもしれない。

    ユダヤ人一家の娘、サラが弟のためを思ってやった行為の結末はあまりにも酷く哀しい。
    他にも、この作品中では善かれと思ってやった行為が結果的に相手を深く傷つけるという事態が起こる。
    特にジュリアは夫の家族の恥ずべき(かもしれない)過去を暴こうとしているだけでなく、平和に暮らしていたサラの家族たちにも彼らが知らなくてもよかったかもしれない事実を突きつける。
    それでも、ジャーナリストであるジュリアだけでなく、人は本当のことを知りたいという欲を捨てられないし、いつかは真実を知ってよかったと思えるようになる…(と思いたい)。

    クリスティン・スコット・トーマスのフランス語があまりに流暢で驚いた。後で調べてみたらこの人、フランス留学歴があったりフランス人と結婚していたりで、自身の映画のフランス語版は自分で葺き替えてたりするらしい。
    凄い人なのね~。

  • 『黄色い星の子供たち』と併せて観てほしい作品。

    どちらの作品も、ナチではなくフランス政府による「ユダヤ迫害」の「ヴェル・ディヴ事件」を題材にしたもの。
    『サラの鍵』は過去と現在のふたつのストーリーがあるため、現代人としての葛藤が飲み込みやすいかもしれない。

    これはただの悲劇ではないと強く印象づけた場面がふたつ。

    屋内競輪場(ヴェル・ディヴ)の前に当時から住んでいた人に、主人公のジュリアがインタビューする場面。ジュリアの「何かしようとは思わなかったのですか?」という問いに対し、年配の女性が答えたひとこと。

    「一体なにができたというの」


    ふたつめは、主人公ジュリアが勤める雑誌社での場面。ジュリアが若い同輩のジャーナリストに「もし、この時代を、あなたが生きていたら、どうしていた?」といった内容のことを問えば、彼は正直に答えた。

    「ただ、テレビで見てただけだろう。イラクに対する攻撃をテレビで観ていたように」


    あぁ、そうなんだろうな、と。わたしも、そうなんだろうな、と。

    それでも、いいんじゃないかとも、思う。

    自分の命や家族を投げ出してまで、大きな権力や流れに立ち向かうことばかりが素晴らしいことじゃない。自分や自分の周囲の人の安全を守ることで精いっぱいのひとに、それらを投げ打ってでも、信念を貫くことが正しいとは思わない。自分自身を第一に考えればいい。自分の身近な人に対して、立派じゃなくてもいいから生きていて欲しいという願いがある。

    ただ、多くの犠牲や、己の罪悪感から目を背けず、誠実であること。
    つらい真実であっても、それを知って幸せにはなれなくても、苦しんだとしても、忘れないでいる。

    それが、ただの悲劇で終わらせない、ことに繋がるんじゃないかな。

  • SARAH’S KEY
    2010年 フランス
    監督:ジル・パケ=ブレネール
    出演:クリスティン・スコット・トーマス/メリュジーヌ・マヤンス/エイダン・クイン


    第二次大戦中の1940年代。フランスで起こったユダヤ人一斉検挙事件、通称“ヴェルディヴ事件”を背景にしています。この暴挙を行ったのはナチスではなく、フランス政府。1万3千人以上のユダヤ人が、ヴェルディヴと呼ばれる屋内競輪場に収容され、そこから最終的にアウシュビッツに送られました。映画は、この事件の際に連行された少女サラの物語と、現代のパリに暮らす女性ジャーナリストのジュリアがサラの行方を取材していく様子が交互に描かれて謎を解き明かしてゆく構成ですが、やはり圧倒的にインパクトがあるのは、サラのほうのエピソード。

    一斉検挙の夜、やってきた警官から幼い弟ミシェルだけでも守ろうと、10才のサラは納戸に弟を隠して、すぐに戻るから出ちゃだめ、と言い残し鍵をかける。その機転が幸いして、弟は連行されずに済むのだけれど、問題は、連れて行かれたサラとその両親が「すぐに戻る」ことなどできない状況になってしまったこと。ヴェルディヴ、そして収容所と家族はバラバラに引き裂かれ、「弟を迎えにいく」というサラの願いはどんなに叫んでも叶えられることはない。収容所で、幼い子供たちと母親たちが引き離される場面では、危うく涙腺が決壊しそうになり、体中がぶるぶると震えました。そんな状況でもサラはひたすら弟のことを想い、ついに脱走の計画を実行に移す。

    そこからの逃亡のくだりでは、悲惨なだけではない、救いになるエピソードもいくつかあります。サラと一緒に逃げることになる少女が、高熱でうなされるサラに子守唄を歌って聞かせる場面、脱走しようとした彼女らを見逃す心優しい将校、そしてユダヤ人と知りながらサラを助け、最終的に我が子同然に育てることになる老夫婦。この老夫婦が、サラの意志の強さを知り、彼女が弟を隠したアパートへ、危険を承知で彼女を連れていってやることになります。けれどそこで彼らが目にしたのは、最悪の結末でした。

    もし自分に弟がいて、サラの立場だったら、と想像しただけで発狂しそうになります。守るためにしたことが、真逆の結果に終わってしまったとき。もちろん、一緒に収容所に連行されていたら、サラも弟も殺されていたに違いないのだけれど、それでもサラにとっては、弟を死なせてしまったことが永遠に消えない十字架になってしまった。彼女が死ぬまで持っていた納戸の「鍵」。それこそがまさに彼女にとっての十字架でした。

    ここで終わったら救いがないけれど、その後のサラの足取りをジュリアは追い続けます。一筋縄ではいかなかったけれど、最終的にはキチンと救済があり、ラストシーンでは涙が出ました。すごく重かったけど、単純にこんな事件が昔ありました、っていうだけじゃなく、心を揺さぶられるシーンがたくさんあって(負にも正にも)見る価値のある映画だったと思います。ちなみにサラ役の女の子は、フランソワオゾンの『リッキー』で、リッキー坊やのお姉ちゃんをやってた子。ものすごく上手かったです。
    (2012.06.05)

  • 重い映画だ…1942年、第二次世界大戦の最中、
    フランスで実際にあったヴェル・ディヴ事件を背景にした物語。
    当時、ナチス・ドイツ占領下にあったフランスは、自国民の手で、
    1万3千人以上のユダヤ人を絶滅収容所へと送った…

    4千人を越える子らも含まれており、誰ひとり生きて帰ることが
    できなかった…という。この映画は、収容所を脱走した少女の
    その後の人生を、現代の女性ジャーナリストがたどる…という
    構成になっている。事件当時の凄惨な場面が現代に重なる。

    「人にはそれぞれ歴史がある」…過ぎ去ったことを、
    ほじくり返して、誰が幸せになるのか? という問いは、
    常に頭をよぎる…でも! 歴史は残されなくてはいけない!
    命のつながる奇跡を…ボクは、なにより痛切に感じた。

  •  ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件で家族が連行される際に弟を納戸に隠し鍵をかけた少女サラ。60年後の現代、偶然その部屋に住むことになったジャーナリストのジュリアはサラの行く末を調べる。

     ものすごく重い映画である。悲劇だから重いのではない。劇中の言葉に「過去を知って誰かが幸せになるのか?世界が良くなるのか?」という問いかけがあって、確かにそのとおりなのである。でも理由はうまく言えないけれども、自分の親や地域や国の過去をちゃんと知ることがとても大事な気がするし、この映画はそう呼びかけているように感じる。
      子どもの頃のサラ役のメリュジーヌ・マヤンスの存在感が光る。彼女はきっと将来大女優になるんだろうなぁ。

     日本にも見つめなければいけない過去はたくさんあるはず。多くの日本人に見てほしい一本。

  • いったいあの時何が出来たというの?

    第二次世界大戦下フランスのヴィシー政権が行ったヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件を調べる記者が、祖父母の所有するアパートがその時検挙されたユダヤ人が所有していたと知り、そのその足跡を追っていく。
    ホロコーストといえばドイツというイメージがあったけれど、実際にはフランスにもあったと改めて思い知らされる。
    弟を守りたかったユダヤ人の少女サラ。ユダヤ人の悪い噂ばかりが耳に入ってくる時代のフランス人。関われば自分たちが危ないと思いながらも目を背けられない老夫婦。
    何が出来たか。あなたならどうする?その問いかけが心に響く。
    二度と起こしてはならない歴史の事実を、この映画から多くの人に知ってほしいと思う。

  • サラが鍵を開けるまでが肝で、あとはペースダウンというか……。
    子役のサラだけでよかったな。
    現代のジャーナリストにもあまり魅力を感じなかったし。
    強制収容所で、お母さんと子どもが引き離されるシーンが壮絶。

  • 面白かった.....
    (本当は4.5★くらいつけたかったです。)

    達者な子役に絶望だけでは閉じられなかった幕引き。
    音楽も良かったですし文句のつけようがありません。
    強いて言えば後1時間くらい長くしてもいいのでサラのパートをもっと増やして欲しかったです。(表現されていない箇所が多すぎ)

    これは原作の小説に手を出してみたくなる作品ですね。

    尚、この映画はユダヤ人迫害を題材にしてはいますが直接的な暴力描写はあまりなく、サラともう一人の主人公のジャーナリストの内面を軸に描かれた作品となっています。
    という訳で、その手の描写が苦手な人にも安心してお勧めできる作品だと思います。

    中々の秀作かと。

  • (No.12-54) 映画館で鑑賞。

    チラシより
    『少女は弟を納戸に隠して鍵をかけた。すぐに戻れると信じて・・・。
    1942年、パリ。ユダヤ人一斉検挙の朝。

    60年前、パリのユダヤ人迫害事件で連れ去られた少女サラが、私の運命を変えていく。』

    映画から流れ込んできたこの気持ちを、簡単に言葉に出来ません。
    感動とか涙とか悲しみとか、そういうのと違う気がする。
    他の人はどう思ったのかネットで少し見てみたら、「胸に突き刺さります」と書いている人がいました。
    ああ、この人が言っていることが私の気持ちに一番近いかもしれないと思いました。

    主人公はパリで暮らしているアメリカ人の女性記者ジュリア。ある事を取材している時、夫の祖父母が所有していて自分たちが住もうとしているアパートに、もと住んでいた人はユダヤ人一斉検挙で連れ去られたことを知ります。祖父母はこのアパートを不正に取得したのではないのか?というのが、ジュリアが最初にこのことを調べようとした理由だったみたい。

    サラに起きた出来事と、現代のジュリアのことが交互に進行していきます。

    何十年も経ってから寝た子を起こすジュリアに対し家族や関係者は困惑します。私も、いろいろほじくりだしても誰も幸せになれないのではないのか、知らないほうが良いことってあるのでは?と思いながら見てました。

    でも、やはり真実は知らなければいけないのだ、本当のことを知って初めてきちんと進んでいけるのだ、と監督は語りかけているのだと思います。

    映画の中で、年長のジュリアや編集長が「ヴェルディヴ(冬季競輪場)」と言ったとき、若い記者たちがポカンとして全然何のことか分からなかったことで、ジュリアたちが驚いていました。
    フランスでは、ナチスドイツの罪は知られていても、自分たちの国家の罪は忘れ去られようとしていることがここで明かされます。しかも皮肉なことに、ドイツでは記録がきちんと残されているのに、フランス警察がやったことは記録があいまいでよく分からないなんて。

    この映画はフランス映画ですが、フランス語、英語、ドイツ語、イタリヤ語、といろいろな言語が飛び交っていました。
    吹き替えでなく字幕で見れたことはとても良かったです。

    この映画を見て本当に良かった!今年ももう半分過ぎましたが、これがベスト3に入るなんて事は言いません。そうでなく私が今年見た映画のベスト1です。

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