博士の愛した数式(新潮文庫) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
4.08
  • (170)
  • (176)
  • (87)
  • (15)
  • (6)
本棚登録 : 1972
感想 : 162
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (214ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 博士が、それぞれに寄せる深い愛情を感じさせるシーンが印象深い。 数式の世界、ルート、江夏。 『あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは 、一生忘れません』未亡人の台詞にもまた同様に。この夏一番の素敵な読書体験でした。

  • 読了(15年ぶりくらい2回目)

    ただの数字、数学として学んでいれば何も感じないけれど、極めた先には私の知らない世界がたくさんあるのかもしれない。
    知識は世界を変えてくれるし、心を豊かにしてくれる。

    誰に対しても敬意を払い、教えを乞うことを恥じず、自分の功績を威張らない博士の人柄や、その周りの方の優しさに心打たれた

  • 優しくて切なくも愛に溢れるお話でした。
    80分しか記憶できない博士はきっと、元から少し偏屈で気難しい人だったのだと思う。しかし子供に対してはあんなにまっすぐな愛情を向けられる。不器用なだけで根は優しい人なのだろう。
    他人との恋愛ではない、愛情の交わり方があるんだと思った。
    数式だけだなく野球が、物語を明るくも不穏にも導いている。
    悲しいのに、ふわっとした優しい空気に包まれる。
    幸せってなんだろうと考えさせられた。

  • 震えるくらい良かった…

    実は再読なのですが、初めて読んでから10年近く経っていて、内容を何も覚えていなくて
    (というかその時はそんなに好きだと思った覚えもないので、きっとあの時(中学生か高校生か)がわたしには良さがわからなかったんだろうなあ、と。)

    期待もせず読み始めて、面白さに震えてしまいました。

    未亡人と博士の2人だけにわかる関係や
    毎日忘れてしまうけどどんなに忘れても切れないルートと、「私」と博士の不思議な関係も
    全て素敵だった、とっても好きだなあ。

    シングルマザーで、自分の息子が自分以外に愛されている様子を見て、「私」がどんなに嬉しかったか
    わかってしまう歳になってしまったなあ…。

  • 初読みの時はこの作品の良さを全く理解しないまま、あらすじだけをただ追っていただけでしたが、再読して改めてこの作品って良いな~と感じました!博士とルートの関係にほっこりします。おすすめです!

  • 題名に数式と入っているから敬遠していたし、全然知らない数式も用語も出てきたけれど、見事に物語の中にとけこんでいたし、登場人物と一緒に理解できる仕組みになっている。素晴らしい文学作品でした。些細な幸せ、毎度リセットされてしまうけれども途切れないひとつの愛のかたち。パニック障害もちとしては博士が無理して外出するシーンはとても辛かったけれど…。とにかく文体もとても優しい雰囲気に包まれていて読みやすかった。第一回本屋大賞受賞作品として納得。幸せのかたちの多様さを優しく改めて考えさせられた。

  • ずっと前から気になっていた小説。こんなにも愛に満ち溢れた物語、他にない。しかもそこに野球がからんでいるのがまたたまらない。ラスト数十ページのところで、特になにも起こらないところで、突然涙が溢れ出た。愛が受け止めきれなくてこぼれ落ちたみたいに。
    しかし、もうちょっと数学脳があればなあ。。。

  • 博士と、わたしと、ルート。
    三人の登場人物の関係性を言葉で表すのは非常に難しくて、一番近いものは何だろうと考えたとき、私の脳裡に浮かんだものは正三角形でした。
    正三角形の頂点から各々が腕を60度に開いて、お互いの手を握り合っている図です。
    彼らの優しく美しい関係性は、お互いへの敬意と思い遣りで成り立っていて、それは年齢も立場も性別も超えた人間同士の、体温のように温かな調和でした。

    挙げきれないくらい素敵なシーンが沢山あります。
    なかでも野球の観戦に出掛けるエピソードは、わたしとルートだけでなく、読者にとっても素敵な想い出になり得ると思っています。

    文字を追いながら、涙を禁じ得ないシーンもありました。
    個人的には、熱を出した博士の看病で朝まで付き添ったわたしが、朝の光の中で博士を想うシーン。
    そしてラスト付近の、博士の首に下げられたある物に関するシーンでした。
    大人になったルートの進路の描写は、読者まで嬉しくさせられてしまいます。

    思い描いていた正三角形が、最後には正方形になったのかな……と想像出来るような、優しい余韻で締め括られるまで、気付けばぐいぐいと引き込まれるような素敵な物語でした。
    もっと早く読めばよかったなぁ……。

  • とても心が暖かくなった。

    いつか読もうと思ってしばらく放置してしまっていた本。
    電話番号、誕生日、スーパーの値札…今までただの数字だったものが意味のあるものとなって見えてきた。
    これから数字の見方が変わってくるかもしれない。

  • あまりにも切なく、優しい話だった。
    小川洋子さんのお話は囁かな幸せにたっぷりと浸かることが出来る分、それが崩壊したときに胸が張り裂けそうな思いになる。
    博士の不器用な愛情、そしてそんな博士を愛する家政婦と息子。3人の穏やかで心温まる日常が永遠に続けば良いと思った。
    終盤の『義弟は、あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは、一生忘れません」』の言葉が胸に突き刺さった。これまでたくさんの温かな思い出を蓄積してきたのに、博士はそれを何一つ覚えることが出来ないという事実を再確認させられた。

    後半の不穏な空気を漂わせる描写がなんとも巧妙だと思った。小川洋子さんのお話はいつも不幸のトリガーが散りばめられていて、しっかりと破滅するのが面白く、残酷だと思う。そうした残酷さも十分に味わえて良かった。

全162件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×