博士の愛した数式(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 美しい物語。数学苦手でも問題なく読めます。読んでいた3日間幸せでした。何度も感動し、泣きました。280ページくらいで短いのですが、ずっと物語の中にいたかったです。

  • 博士と、わたしと、ルート。
    三人の登場人物の関係性を言葉で表すのは非常に難しくて、一番近いものは何だろうと考えたとき、私の脳裡に浮かんだものは正三角形でした。
    正三角形の頂点から各々が腕を60度に開いて、お互いの手を握り合っている図です。
    彼らの優しく美しい関係性は、お互いへの敬意と思い遣りで成り立っていて、それは年齢も立場も性別も超えた人間同士の、体温のように温かな調和でした。

    挙げきれないくらい素敵なシーンが沢山あります。
    なかでも野球の観戦に出掛けるエピソードは、わたしとルートだけでなく、読者にとっても素敵な想い出になり得ると思っています。

    文字を追いながら、涙を禁じ得ないシーンもありました。
    個人的には、熱を出した博士の看病で朝まで付き添ったわたしが、朝の光の中で博士を想うシーン。
    そしてラスト付近の、博士の首に下げられたある物に関するシーンでした。
    大人になったルートの進路の描写は、読者まで嬉しくさせられてしまいます。

    思い描いていた正三角形が、最後には正方形になったのかな……と想像出来るような、優しい余韻で締め括られるまで、気付けばぐいぐいと引き込まれるような素敵な物語でした。
    もっと早く読めばよかったなぁ……。

  • とても心が暖かくなった。

    いつか読もうと思ってしばらく放置してしまっていた本。
    電話番号、誕生日、スーパーの値札…今までただの数字だったものが意味のあるものとなって見えてきた。
    これから数字の見方が変わってくるかもしれない。

  • 今の自分にはあまり合わなかった。

    過去に読んだような、読んでいないような・・・
    記憶が曖昧だったので再読?しました。

    博士が記憶障害であること、家政婦さんと息子のルート、阪神タイガースの帽子、未亡人 など

    ワードは覚えていたものの結末はさっぱり記憶にありませんでした。

    とにかく、まだ自分には合わなかった。

    小川陽子さんの文章の美しさを深く理解できるようになりたい。

  • 数学博士と家政婦とその子供とのかけあいがまた面白い。
    これくらい知識のある博士が子供のためには何も惜しまないという心持ち、そのような人になりたいし歳を重ねたいと思った。

  • 読了(15年ぶりくらい2回目)

    ただの数字、数学として学んでいれば何も感じないけれど、極めた先には私の知らない世界がたくさんあるのかもしれない。
    知識は世界を変えてくれるし、心を豊かにしてくれる。

    誰に対しても敬意を払い、教えを乞うことを恥じず、自分の功績を威張らない博士の人柄や、その周りの方の優しさに心打たれた

  • 解説見て気づいたまさかの純文学
    通りで読みにくいわけだww

  • 優しくて切なくも愛に溢れるお話でした。
    80分しか記憶できない博士はきっと、元から少し偏屈で気難しい人だったのだと思う。しかし子供に対してはあんなにまっすぐな愛情を向けられる。不器用なだけで根は優しい人なのだろう。
    他人との恋愛ではない、愛情の交わり方があるんだと思った。
    数式だけだなく野球が、物語を明るくも不穏にも導いている。
    悲しいのに、ふわっとした優しい空気に包まれる。
    幸せってなんだろうと考えさせられた。

  • あまりにも切なく、優しい話だった。
    小川洋子さんのお話は囁かな幸せにたっぷりと浸かることが出来る分、それが崩壊したときに胸が張り裂けそうな思いになる。
    博士の不器用な愛情、そしてそんな博士を愛する家政婦と息子。3人の穏やかで心温まる日常が永遠に続けば良いと思った。
    終盤の『義弟は、あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは、一生忘れません」』の言葉が胸に突き刺さった。これまでたくさんの温かな思い出を蓄積してきたのに、博士はそれを何一つ覚えることが出来ないという事実を再確認させられた。

    後半の不穏な空気を漂わせる描写がなんとも巧妙だと思った。小川洋子さんのお話はいつも不幸のトリガーが散りばめられていて、しっかりと破滅するのが面白く、残酷だと思う。そうした残酷さも十分に味わえて良かった。

  • 再読です。
    愛に溢れる物語です。記憶が数時間しかもたない博士と子どもの日常がなんとも尊い時間で、きっとこの時間はその時を永遠に生き続ける時間なのだと思います。博士の愛した数式こそ、彼の生きていく価値観で大切にしたいものやしてきたもの、その全てなのだと思いました。

    博士の愛した数式というのは、オイラーの公式でした。それはとても美しいとされており、博士の数学に対する美しい式であり、博士の褒め言葉である「静か」でもあります。
    博士は、正解を得た時に感じるのは喜びや解放ではなく「静か」なことで、とても美しいことだと表現していました。
    ルート君(息子)が走るドタバタする音も「静かだ」と話していて、博士にとって「静か」というのは
    「安心」だとかそういう意味にも捉えられるように思います。
    それを考えると、この結末は血は繋がっていないけど、友や家族の愛、
    家政婦とその息子に対する愛だと思います。
    題名の『博士の愛した数式』は『博士の愛した友(家族)』
    ということにもなると思うと、最後にじわっと涙がでてきました。

    日常の些細な幸せの積み重ねが、とっても大切だと思わされる温かくて深い物語でした。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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