- Amazon.co.jp ・電子書籍 (198ページ)
感想・レビュー・書評
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著者は大阪の被差別部落出身で、子供の頃から慣れ親しんでいた「あぶらかす」という食材が部落でしか食べられていないものだったことを知って驚いた経験から、世界中にある被差別民の食材を巡る旅に出たという。取り上げられているのは、アメリカとブラジルの黒人奴隷、ヨーロッパと中東のジプシー(ロマ)、そしてネパールの不可触民。
そういう食べ物はソウルフードと呼ばれ、他の人々が食べない物を工夫して食べられるようにしたものが多い。そのため調理法は自然と似通ってくるようだ。食べたことのない料理の味を文章だけで想像するのは難しいが、なんとなくイメージしながら読み進めた。フライドチキンが実はソウルフードであるなど、興味深い話も多数ある。
逆に食物自体が差別の理由になっていることもある。日本の被差別部落は屠畜や皮革生産に従事し、殺生を忌む思想によって差別が作られたが、ネパールの不可触民の場合は当地で神聖視される牛を食べることで差別の対象にされた。そのため最近は牛を食べないようにする運動も起きているそうだ。
著者はこのネパールの不可触民を日本の被差別部落のルーツだと考えている。ルーツと言っても血筋ではなく文化の発端とうい意味であるが、間違っていないように感じる。本書ではそういった歴史的考察にも多くのページが割かれており、内容は「被差別」と「食卓」が半々というところ。
意外だったのは著者が1973年生まれで、私より1歳下だということ。部落差別など昔の話だとなんとなく思っていた認識の甘さを突き付けられた気がした。まだまだ、現在進行形の話なのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
言われなき差別を受けてきた人びとが長い年月の中で産み出してきたソウルフードを求めて世界を巡ります。基本的にあまり人気のない内臓肉などを煮込んだような料理が多いようですが、世界中によく似た料理があるんですね。ホルモン系が基本的に苦手なのと料理の写真がモノクロであまりおいしそうではありません。ただ、ブラジルの黒人社会はイラクや東欧のロマの生活などあまり知られていないコミュニティの話しなど参考になりました。