ヴィヨンの妻 [Kindle]

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  • 2012年9月12日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 我が身に、うしろ暗いところが一つも無く生きている人なんて、いるのでしょうか。
    他人の人生の奥深くの部分を知ることは、不可能な訳ですから知る由もありませんけども。

    どうしようもない詩人の夫を持つ妻は、一枚上手のようです。

  • ヴィヨンとはフランスの詩人。詩の才能は素晴らしかったけど、無頼派で放浪生活を続けた破天荒な人だったらしい。話中の詩人・大谷をそのヴィヨンに引っかけ、妻である「さっちゃん」目線で話は進む。
    兎に角この大谷がクズ。
    借金してくるわ浮気するわDVするわで。
    さっちゃんがなぜ大谷に寄り添っているのか不思議なくらい。
    しかもさっちゃんは弱々しい女性ではなく、そういう夫の不祥事を身一つで引き受けて、自ら行動に移すという強さを持ってる人なのです。
    大谷は厳しい態度のはざまに、ふと、さっちゃんに子供に優しさを見せたりもするんですが、読んでる方からすると典型的なDV男で、はやく逃げて―! って感じ。
    しかも籍を入れてくれてないんですよ、この大谷。

    とりあえず大谷は置いておいて、さっちゃんの健気かつ芯の強い感じはひしひしと伝わってきます。
    広いお店で働きだし(大谷の借金のせいだけどw)、生き生きし始めたところで終わっているので、読後感としては悪くないのかな、と。
    「いやーもう、男なんて女がいなきゃ生きていけないんだよ」的な、太宰の女性に対する尊敬・憧憬の現れなんでしょうか。

  •  私はこの小説に登場する詩人・大谷のような人物は大嫌いだ。
     最後の方で登場する、詩を描いているという若い工員のような人物も大嫌いである。
     ついでに言うと、『斜陽』に登場する直治や上原、『人間失格』に登場する大庭葉蔵のような人物も大嫌いである。
     こういったキャラが出てくるので、太宰治の作品は嫌いなのである。
     ついでに言うと、太宰治もこういった傾向のキャラだったようだ。
        
     一方、大谷の妻さっちゃんや『斜陽』のかず子といった人物は前向きで健康的で素晴らしい女性だと思う。こんないい人が何で大谷や上原といったダメ男に愛想尽かししないのか不思議なんです。ある種の男にとって非常に便利な存在ですね。
              
     しかしいくら嫌いとはいっても、流れるような展開に文体。
     名作であることにケチをつけることは不可能です。
     真面目で理性が強いことだけが取り柄の私には到底描けない名作でしょう。
     悔しいけど、名作を描いたもの勝ちです。
               
     理性が弱くて本能のまま行動しているような太宰作品より、自殺を前にした発狂寸前の状態の時ですら理性的な芥川龍之介作品の方が好きです。
     よく大宰にかぶれる、と言いますが、芥川龍之介にかぶれる、とはあまり言いませんね。
     理性の作品はかぶれる対象にはなり得ないのでしょうか。
         
    Q)太宰治の小説と芥川龍之介の小説と、どちらが好きですか?
            
     ブログではアンケートも実施しています。ご協力よろしくお願い致します。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140404/p1
       http://blog.with2.net/vote/v/?m=v&id=128874

  • 無軌道で奔放でだらしない男には、不思議なことに、このように物分かりがあって、男を包容するような、大らかな気質の女性が妻として存在しているという顕著な例を示したような話だ。
    料理屋を経営する夫婦から、夫の仕出かした顛末を聴き、「わけのわからぬ可笑しさ」がこみ上げてきて、声を挙げて笑ってしまう場面が印象的だ。
    この夫は、太宰治自身を描いているように見受けられる。
    ヴィヨンとは、フランスの詩人で、殺人・窃盗などを犯し、入獄と放浪の生涯を送った人物らしい。

  • ‪15世紀の詩人 フランソワ・ヴィヨン。この人はかなりの問題児でした。この小説はヴィヨンのような旦那の妻の話し。なんとなくサイコパスや自己愛性人格障害ぽいですね。‬

  • 奥さんが何事にも屈せずに強いなぁと思いました。
    お金持ち逃げの話されてる時に笑ってしまったのは何でだったんだ…?

  • 人非人上等。でも溢るる才能があるからいいじゃないの。

  • 大谷・・・なんだこのダメ具合は。
    さっちゃん・・・なんだこの達観具合は。

    一寸の幸せには一尺の魔物が必ずくっついてまいります。
    女には、幸福も不幸もないものです。
    男には、不幸だけがあるんです。

    幸せってなんだ?
    と考えてしまう内容。

  • 青空文庫で読了。昨日読んだ『斜陽』とかなり被る部分があります。女性のしたたかさ?逞しさ?そして死にたくても自殺までは至れなく、苦しみながら生き続けている夫、そしてドロドロした男女関係、まさに太宰文学の真骨頂です。でも一見誠実そうに見える社会でも、人の内面には似たようなものが蠢いている気もします。
     
    ところで、様々な作品の中で、太宰治を投影した登場人物に出会うに連れ、ふと彼はサイコパスでは?と頭を過ぎりました。「太宰治 サイコパス」で検索してみると、やはりそれなりにヒットしたので、まんざら的を得てない発想ではないようです。もちろん彼を確実に知る術はもうありません。いや、同じ時代に生きていたとしても、きっとわからないでしょう。

  • 自由過ぎるトンデモ夫を持つ、健気で前向きな妻ったらメンタル強過ぎ。あまりにも不憫なのにどうしてそう何事もなかったかのようにいられるのか。不幸を背負おうとしなければ案外サラリと切り抜けていけるものなのか。
    話自体はまったく理解できず、破綻していると思われてならないけれど、文体はさらさらと美しくて流石。神のいることの不幸って考えたことなくて新鮮だった。
    170710読了。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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