蠅 [Kindle]

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  • 2012年9月12日発売
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  • オーディブルで聴了。夏の宿場の一コマ、街まで向かうため、まだかまだかと出発を待っている、危篤の息子に会いたい農婦、若者と娘、田舎紳士、母親と息子の5人の乗客。出発までの苛立ちが伝わってくるような時間の経過。やっと乗客を馬車に乗せた馭者の居眠りでまさかそんな運命になるとは。誰も思ってもみなかった展開に対して、蠅の視点での淡々とした描写に、じわじわと恐怖が伝わる。

  • 小説の神様と言われていた横光利一。
    影響を与えた作家が、坂口安吾、太宰治、織田作之助、三島由紀夫、大江健三郎、他多数。
    私は横光文学は、はじめて読んだ。
    この『蠅』は、人間の何気ない日常生活は平穏であることのほうが神秘であり、ちょっとしたことで命を落としてしまうという強烈な印象を受ける。

    田舎の、のどかな風景と普通の人々が登場するだけなのに、作者からのメッセージは強烈に感じる。
    馭者のちょっとしたミス(居眠り)で乗客が死んでしまう。
    けれど小さな一匹の蠅は、余裕で危機から脱出してしまった。
    のんびりした田舎風景からのインパクトが衝撃的で、私は続けて再度読んだ。

  • 新感覚派……なるほど確かにシュールな感じがクセになりそうだなぁ。登場人物の扱い方がすごい記号的で、形式主義の真髄を短い本文に蝟集させててすごくアバンギャルドなお話でした。蠅と題がついていたので何となく予想していましたが、随所に愚かである人間に対する皮肉が込められていて、結果蠅だけがのうのうと生き延びる終わり方はなんだかスカッとしたような、けれどもしこりを残した終わり方で、深いです。殊に、倅のことを心配する農婦と、子供をあしらう母親の御二方にかなりの皮肉を感じました。
    それにしても、この人もまた文章が上手い! グイグイと読めてしまう……!!

  • 横光利一氏といえばこちらも有名かな。
    やはり独特の表現をされています。そこから何をどう受け取り、どう解釈するかは読み手に委ねられているようにも思えるけども…今でもこの作品はどう解釈するか悩んでます(^_^;)
    読む人が読めば直接届くんだと思いますが…。ふむ。

  • 蠅と人の群像劇
    脳内でカメラが寄ったり引いたりするのを感じました。
    匂いや音、気配、光…臨場感があります。

  • 第6回(古典ビブリオバトル)

  • 【ネタバレ注意】一見ただの日記のように見えるけれど,最後の最後でようやく腑に落ちる。しっかり読み返すと随所に人間の愚かさが描かれていて奥が深い。人間から嫌われ者扱いされ,日頃特に気に留められることも少ない蝿が,自身にしかできない方法で難を逃れ,最後には見下すかのように死にゆく人間を眺める構図が本当に面白い。蝿に感情を付加したり蝿視点になったりすることがないのも,リアリティがあって深刻さが増す。深刻だけれどなんだか滑稽に感じる。バッドエンドに向かうかのような焦りから始まった物語が好転し,終盤で一気に崩れていく展開の速さは全く飽きを感じさせない。ハッピーエンドに飽きたら読んでほしい物語。

  • 蠅視点で世の中を見る

  • 映画のような眼に浮かぶ情景を優雅に飛ぶ全知の蠅。
    西洋では画家が自分の画力を示すために精緻な蠅を書き込んだというが、それを彷彿とさせる「巧さ」が心地いい。

  • 馬車の中には5人の様々な人が乗っていました。馬車の運転手は居眠りしてしまい、馬車は馬と車両ごと崖から転落してしまいます。その後、その一部始終を知っているのは馬車にひっついていた蝿だけです。この小説は、まず突然何が起こるのかわからないということがわかりました。そしてもう一つ、人間にとっては存在価値の高くないといえる蝿をあえて生かすことで、人間の儚さを書いているのかなと思いました。

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著者プロフィール

よこみつ・りいち
1898〜1947年、小説家。
福島県生まれ。早稲田大学中退。
菊池寛を知り、『文芸春秋』創刊に際し同人となり、
『日輪』『蠅』を発表、新進作家として知られ、
のちに川端康成らと『文芸時代』を創刊。
伝統的私小説とプロレタリア文学に対抗し、
新しい感覚的表現を主張、
〈新感覚派〉の代表的作家として活躍。
昭和22年(1947)歿、49才。
代表作に「日輪」「上海」「機械」「旅愁」など。



「2018年 『セレナード 横光利一 モダニズム幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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