コーヒー哲学序説 [Kindle]

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  • 2012年9月13日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 昭和8年の随筆のようである。この青空文庫のブラウンカラーとタイトルがいやにマッチしている(笑)。

    当時はまだ日本では、コーヒーは珍しい嗜好品であった。
    生まれて初めて味わったコーヒーを寅彦さんは、こう表現した。

    「すべてのエキゾチックなものに憧憬をもっていた子供心に、この南洋的西洋的な香気は未知の極楽郷から遠洋を渡って来た一種の薫風のように感ぜられたものである」

    なんともカッコイイのである。

    それから海外のコーヒーを経験した寅彦さんは、日本庶民の最先端であったろう。

    茶碗の厚みが味覚を変える体験を語り、コーヒーの出し方は芸術だと語る。

    「やはり人造でもマーブルか、乳色ガラスのテーブルの上に銀器が光っていて、一輪のカーネーションでもにおっていて、そうしてビュッフェにも銀とガラスが星空のようにきらめき、夏なら電扇が頭上にうなり、冬ならストーヴがほのかにほてっていなければ正常のコーヒーの味は出ないものらしい。コーヒーの味はコーヒーによって呼び出される幻想曲の味であって、それを呼び出すためにははやり適当な伴奏もしくは前奏が必要であるらしい。」

    この表現がまた美しい! 頭上の電扇が素敵すぎる。

    うまいコーヒーのための環境づくりか・・・。コーヒー哲学だなぁ。

    ともかく寅彦さんがカッコよすぎます。

  • コーヒーは哲学

    タイトルに惹かれて、キンドルで読んでみたけれど
    興味深かった。

    とくに、コーヒーの価値が寺田さんの時代と
    私が今行きているこの時代とでこんなにも感覚が違うことに驚かされた。

    いつもチェーン店だったりで、気軽に飲んでいるけれど
    余裕があるときはこの読んだことを意識してみようと思った。

  • ◆〈コーヒーは出かけて飲むべし〉という寺田さんの意見に賛成! 私は別に銀器や一輪挿しの花がなくても構わないけれど(笑) ◆宗教は酒に似て、コーヒーは哲学に似る… こんなことをコーヒー飲みながら考えてしまう寺田さんが好き。◆〈芸術も同じように分類できるのでは。コカイン芸術やモルフィン文学が多すぎる〉と嘆いていた寺田さん。その懐疑的客観的な眼で、後に自ら死にゆく運命にある文士たちを憂いていたのかも…。

  • 寺田寅彦のこういう文すごいすき

  • さすが寺田寅彦。タイトルがそうだけど、コーヒーから哲学、宗教、芸術へ発想を飛ばす。コーヒーは芸術や宗教よりも哲学に似ているという。
    この「毒薬」にいとも簡単に「支配」される人間とは、かくも「あわれ」なる存在と、感慨を深くしている。この辺はなぜか、科学者の目を感じた。
    ヨーロッパへの留学を、コーヒーを通して述懐しているところは、随筆らしくて楽しかった。スカンジナビアの田舎には、「たたきつけても割れそうもない」コーヒーカップがあったそうだ。

  • 「パリの朝食のコーヒーとあの棍棒を輪切りにしたパンは周知の美味である。」

  • 「自分にとってはマーブルの卓上におかれた一杯のコーヒーは自分のための哲学であり宗教であり芸術であると言ってもいいかもしれない」。(Kindle Locations 106-107).

    丁度,久しぶりにコーヒーを楽しんだところ,異常に元気になりまさに「人間というものが実にわずかな薬物によって勝手に支配されるあわれな存在であるとも思」(Kindle Locations 94-95). わされました.

  • コーヒーは一日一杯くらいのむ程度は好きっちゃあ好きだけど、味にこだわりがあるわけではなく、ドリップコーヒーとインスタントコーヒー、缶コーヒーと、違いが分かるのかと言われればきっと分からん。今時の缶コーヒーは美味しいってCMやってるし。
    しかしコーヒーとお汁粉の違いなら多分、判別できるだろうし、紅茶とも区別がつくと信じたい。その区別すらあいまいな時代もあったというんだから、まぁ割かし幸せな時代に住んでいるのかもしれないし、まぁ細かい事を気にする面倒な時代に住んでるともいえるわけで。インスタントコーヒーなんて泥水みたいなものだという人もいるので、まぁそこまでいってしまうと、もはや通というか修行な感じがしなくもない。ほどほどが良いなぁ。

  •  
    ── 寺田 寅彦《コーヒー哲学序章 19330200 経済往来》20120913 青空文庫
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B009AJGMIG
     
     Kindle 20161217 02:07 ブクログ検索&テキスト・コピー困難。
     
    …… Kindle;アマゾン社が開発・販売している電子書籍リーダー。表
    示部に電子ペーパーの一種であるE Inkを採用し(6インチの白黒ディス
    プレイ)、携帯電話の通信網を利用して書籍や新聞のデータをダウン
    ロードできる。データの文字を検索したり、マークを付けた個所を一覧
    表示する機能、内蔵の辞書で単語の意味を調べる機能などを備える。
     書籍のデータは、同社のKindle Storeで販売されており、Kindleから
    直接アクセスできる。2007年にKindleが発売されたあと、2009年には
    米ソニーが「Sony Reader Daily Edition」を、米国大手書籍チェーン
    店のバーンズ・アンド・ノーブル社が「Nook」を発売するなど、米国で
    はハードウェアを含めた電子書籍の市場形成が注目を集めている。
    (ASCII.jpデジタル用語辞典)
     
    …… 尚、引用する際の出典元表記の仕方は、
    「著者/訳者(出版年)書名 [Kindle版] 第〇章 章名 Kindle位置番号」
    としたのですが、特に最後の位置番号については端末によっても異なる
    かも知れず、正しいかどうかはちょっと不明です。段落などを表記する
    のが良いのかも知れませんね。Kindle本上でも、紙の書籍の該当ページ
    番号が参照できるようにしてくれると一番良いと思うのですが…。
     学術論文でもないので、著作権に配慮した出典明記ということで、こ
    れで問題はないと思うのですが、間違っていたら親切な人教えてください。
    http://www.shigo45.com/entry/2016/04/14/105832
     
     adlibilda(与太郎ルール)の書誌出典表記
     
    http://q.hatena.ne.jp/1216553372#a843822(No.1 20080721 03:56:21)
     出典表示法 ~ 引用符 & 書誌データ ~
    http://q.hatena.ne.jp/1249191443#a938664(No.3 20090803 07:07:16)
     
    (20161217)
     

  • 著者にとって一杯のコーヒーが哲学であり宗教であるなら自分にとってそれに相当するモノは何であろう…と考えてみる。

    ふ、と思い浮かんだのはジョギングであり自転車であろう。
    あの一種の陶酔感と酩酊感に勝るものは自分の中ではなかなかに代え難いモノである。

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著者プロフィール

1878–1935
東京に生まれ、高知県にて育つ。
東京帝国大学物理学科卒業。同大学教授を務め、理化学研究所の研究員としても活躍する。
「どんぐり」に登場する夏子と1897年に結婚。
物理学の研究者でありながら、随筆や俳句に秀でた文学者でもあり、「枯れ菊の影」「ラジオ雑感」など多くの名筆を残している。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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