トロッコ [Kindle]

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  • 2012年9月13日発売
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  • トロッコに乗りレールを走る土工たちの姿。
    そこにあるのは労働の世界だ。
    8歳の良平は、風を切り走るトロッコに乗ることに憧れていた。

    ある日、若い労働者がトロッコを押しながら坂道を登るところに、良平も一緒に参加させてもらった。上り坂を越え、下りでトロッコに飛び乗り、また坂を越える。

    気付けば遠くまで来てしまった。
    大人はこれからまだ仕事が続くためそこに留まるが、良平は家に帰らなくてはならない。不安の中に踏み出して走った。

    不安の中、暗くなる道を一人駆けた。
    孤独で泣きそうになりながら。

    大人になった良平は妻子を持ち、東京へ出て来た。
    そして今でもトロッコの体験を思い出す。
    形を変えながらも、不安への一歩は続いている。

    読了。

  • 妻子と東京に出て雑誌社に勤める良平(26歳)は、暮れなずむ空を眺めるうちに、少年時代のほろ苦い思い出が沸々と甦ってくるのでした。良平が八つの年に、小田原熱海間での軽便鉄道の敷設工事がはじまりました。トロッコが線路を上り下りするのを見るうちに乗りたくなり、二つ年下の弟と隣の子の三人で村外れのトロッコ置場にあるトロッコを押しては、登り降りする面白さに有頂天になるのでした。「この野郎 勝手に触るんじゃない!」と叱られて逃げ帰った十日ほど後、良平が線路を眺めていると、若い土工の押すトロッコが近づいて来て・・・。

  • 昔、昭和50年代だが、田舎ではこういう大人との交流があったなあ、と思いながら読み返した。
    おじさんやおばさんがおやつくれたり、機械に触らせてくれたり。いまなら、不審人物として、通報されるのかもしれない。
    良平はいまは東京で働いている。時代が変わったこと、都会に住んでいることから、このような経験が身近でなくなったのかもしれない。それだけに、あの時あの場所での体験が強烈に蘇ってくるのだろう。

  • 芥川龍之介の作品で初めて読んだ作品。ここまであることを好きになったということは尊敬するべきこと感じた

  • 少年はトロッコが大好きだった。ある日、そんな大好きなトロッコに乗ることができ、少年は喜び舞い上がっていた。
    大好きなトロッコに乗ってどこまでも行ける…どこまでも行きたい、そんな胸躍りわくわくとした冒険心。
    だけれどもちろんそんな事ができるはずもなく、どこなのかさえ分からないほど遠くに行き、優しいと思っていた大人はそこで泊まるから一人で帰るようにと言われ、突然一人ぼっちにさせられた時のなんとも言えない悲しさは、幼かった頃ふと急に一人でいることへ不安を覚えた、あの時の感覚を思い出しました。

  • 又吉直樹の読書体験の話題のなかに、この本を読んだときのことが書かれていたので、サブルーチン的に読んでみた。超短編。

    短編ながら、ドラマを感じました。
    青空文庫ありがたい。

  • この「新聞紙に包んだ焼き菓子」ってのが気になるわー。石油の匂いが染み込んだお菓子私も食べてみたい。
    お腹空いてきた。

  • 名作中の名作だが、子供の頃の不安、そして大人になっていくことの不安が醸しだされる。心情表現、描写が特に巧で、読後に将来の不安を感じた。感じなくてもいいのに。でもこれが筆者自身の抱えた不安ではなかろうかと思う。作家は自分の心の内を描くのが本当にうまいと思わせる作品。
    ただ、自分の子供にはできれば読ませたくない。

  • 20200409読了

    ひとりではトロッコで戻ることのできない良平はしばらく土士についていくも、だいぶ遠くまで来たところで突き放され、結局ひとりで帰る羽目に。

    小学生の頃、いつも一緒に下校していた友達のことを待っていたら、辺りが真っ暗になってしまったことを思い出した。結局ひとりで帰ることになったのだが、虚無感に苛まれるし、いつも見慣れた光景が暗いだけで薄気味悪いしで、帰路全力ダッシュ。家に着いて母親の顔を見たときには安心して大号泣。

    トロッコに憧れを抱いていた良平が、トロッコに乗る楽しみからだんだんと不安に変わる様子が手に取るようにわかった。突然ひとりぼっちになったときの、え?マジ?って心境も。
    無我夢中で家まで走る描写は疾走感が伝わってくる。

    他の方の感想に書いてあった、トロッコを人生に見立てる説は面白い。
    先が見えなくて不安で辛くとも、先に進まなければならない。
    短編なのに奥が深いな〜。

  • 憧れのトロッコを操作出来た喜び。
    しかし結局土工たちに子供扱いされてしまい、トロッコに乗って遥か遠くに来てしまったことを悔やむ。
    長い距離を一人で帰り心細くなる様はまだ子どもであった主人公良平。

    背伸びしたい気持ちとまだ子どもであることが混在する年齢がある。
    そして大人になっても冒険心と臆病な気持ちが混在するときがある。
    そういうモヤモヤっとした気持ちをトロッコに乗る良平の気持ちで表現している秀逸さ。
    つまりトロッコは背伸びしたい気持ちを充足させる乗り物であり、冒険心なのかなと思った。

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