翻訳について [Kindle]

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  • 2012年9月13日発売
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  • 劇作家、岸田國士(1890-1954)の翻訳論。
    名は「こくし」と読むのかと思っていたら、「くにお」と読む。
    岸田衿子・今日子姉妹の父である。

    さっぱりと翻訳を語っておもしろい。冒頭から
    翻訳といふ仕事は、いろいろ理窟のつけ方もあるだらうが、大体に於て、翻訳者自身のためにする仕事なのである。
    という。翻訳をするには原文を何度も読む必要がある。実際に翻訳してみると、自分の語学力の底がわかる。日本語をこれほど知らないのかとわかるだけでも薬だと言う。このあたりはなるほどその通りだろうと思う。

    文学作品においては、原文の味わいを出すことが大切と言われる。しかし、フランス語の味わいを日本語に置き換えるというのは、実は到底無理なことで、つまりは
    甲の美を乙の美に置き換へる
    ことになる。
    翻訳というのはこの意味では翻案なのだ。

    バックグラウンドがフランス文学の人なので、フランス作家の翻訳のしやすさ・しにくさについても語られる。
    ミュッセやアナトオル・フランスは日本語で読めるようにするのが難しい作家だという。
    ルナアルは比較的訳しやすい。モーパッサンを評しての一文が面白い。
    モオパッサンといふ奴は、引つ張るとどつちへでも伸びて来て、うつかり元の感じからずれてしまふ。
    フランス語の持つニュアンスは深くて多様だというところだろうか。

    文化の背景をも感じさせるような訳文というのは、なかなか難しいものだろうなと思う。

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