高瀬舟 [Kindle]

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  • 2012年9月13日発売
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レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (15ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 中学の時に教科書で読んだ時は「安楽死を扱った話」として習い、それに疑いを持たなかった。でも、この歳になって読むと、実はこの話、人生における「足るを知る」の意味と難しさ、そして何より、矛盾を冷徹に捉えて具体化した作品だと思えて、胸に刺さってたまらなくなった。
    20分程度で読めてしまう小品にここまでのものを盛り込んだ鴎外の力量を感ぜずにはいられない。

    罪人を護送する職務のため高瀬舟に乗る下級役人の庄兵衛。彼は職業柄、幾人もの罪人を見てきた。彼らは犯した罪への後悔とこれから訪れる罰を前に悲壮な表情をしているのが常。
    けれど、弟殺しの罪で護送される喜助は違った。彼の表情は鼻歌でも歌い出しそうなほど晴れ晴れとしている。
    不思議に思った庄兵衛は、喜助に声をかける。そして語られた喜助の話に、庄兵衛はひどく心を揺さぶられるけど…。

    幼い頃から過酷な人生を歩み、あまつさえ罪人として悲惨な環境に陥ろうとしているのに、身寄りない根なし草としてやっと糊口をしのいでいた人生から一転して、唯一の肉親である弟を苦しみから解放した後に自分の居るべき場所と日々の食事、そして流刑にあたっての支度金まで与えられることを純粋に喜ぶ喜助。

    そんな彼の姿に、庄兵衛は我が身と照らし合わせながら色々なことを思う。
    何も持たないはずの喜助と違って、定職と家族と自由を持っているのに日々の不満や将来への不安から逃れられない自分自身のこと。
    喜助の告白が事実であれば、彼の罪は罪ではなく、来るべき結末を早めただけで、むしろ救済であるという考え(それが事実か嘘かは誰も証明できないが)。
    それでも自分のような人間には、自分自身のことも喜助のこともどうしようもできないという思い…。

    心を揺らす庄兵衛の姿には、それなりの年月を過ごして来た読者は少なからず我が身を重ねて共感するのではないかと思う。

    喜助のように、何があっても穏やかに「足るを知る」ことができれば、人生を穏やかに過ごせるのだろうなと思わずにはいられない。
    でもそう簡単にいかずに、欲望と迷いを抱えて色々なものを追い求めるから、人生は苦しく、けれどもその反面、豊かになるというのも真理な気がする。

    喜助のしたことが殺人か安楽死か、または、彼は裁かれるべきなのかという主題が決して重要でないわけではない。
    けれど、日々を欲と不安の中で生きる凡人にとっては、鷗外は浮世離れした感のある喜助よりも、喜助を前に悩む凡人・庄兵衛の姿を通じて、人間の性質と人生の真理をあぶり出したかったんだな、と思わずに入られませんでした。

  • 主人公である庄兵衛は高瀬舟を用いて罪人を流刑地の島へ運ぶ同心。
    ある日庄兵衛は喜助という男の移送を担うことになった。喜助は弟を殺した罪で島流しになったという。
    庄兵衛は常日頃から、人間の欲は果てしなく、どこまで富を得てももっと上を望むものだと思って、少し嫌気がさしていた。
    だが喜助は無欲で、『足ることを知る』人物だった。
    まさに清貧といってもいい人格者である喜助が弟を手に掛けたのは、弟のことを考えて自殺に手を貸したため。
    これは本当に人殺しと言えるのだろうか?
    庄兵衛は奉行の沙汰の通り喜助を流刑地に運びながら、どこか腑に落ちないものを感じていた。

    考えたのは、罪とは何かということ。人がそれを裁くのには限界があるのではないかということ。
    庄兵衛が腑に落ちなかったのは、喜助と自分たちとを比べて、どちらが罪深いのか考えてしまったためだと私は思いました。
    個人的な話になりますが、私は安楽死自体には賛成の立場です。でも、誰かの手を借りないと死ねないって言う状態は、その誰かにすごい重いものを背負わせるなぁといつも思う。
    喜助は迷った挙句に、自分でも自分の行為に疑問を持ちながら自殺を助けてるけど、瀕死の人を前にしたら確かにあんな感じになりそう。その描写がリアルだなぁと思いました。

  • 無駄のない小説。重いテーマながらも淡々と読めて爽快です。

  • 2017.5.22 読了

    有楽町の無印で 文鳥文庫を購入。
    中学時代に読んだ以来だったので、話の内容はうろ覚え。
    苦しい環境の中で暮らす兄弟。
    弟は病にかかり、兄のためにも自殺を図るが失敗。
    最後に手伝った兄が罪人として高瀬舟で護送される。

    苦しむ弟に求められ、苦しみから解放する為に手伝い、弟を殺した。
    果たしてこれはどのように裁かれるべきか。

    短い中で簡潔に難しい課題を投げかける。
    この課題の答えを出すことは、今現在でも難しい。
    これを1916年(大正5年)に発表しているところがすごい…

  • これを安楽死の話にするのはズレている。

    みどころは作者が自分でも何が言いたかったのか分からなくなってきている点だろう。

    普段相当に頭で物事を計算しているであろうタイプであるからこそのつたなさが心を打ち、それもまたよしと計算して世に出す、もはや同情すべき病とも言える計算高さがスパイラル的に心を打つのである。

    悪魔から逃れることのできたこの一瞬の境地が、彼の人生に誇らしげに輝いたことだろう。

  • 短いけれど読み応えのある小説。

    完璧とも言える文章によってあっという間によ見終わってしまったが、テーマが深く読後色々なことを考えさせられる。

    大きなテーマである安楽死または自殺幇助はもとろん、幸福とは満足とは、兄弟の情、果ては高瀬舟での遠島になる者への情け深いお上の処置など、あちらこちらに深いポイントがちりばめられている。

  • 正しいとは何か。善とは何か。悪とは何か。罪とは何か。救いとは何か。…人間が抱える矛盾を読者に投げかけている作品だと思います。
    答えもなく、永遠に人間が向き合わなければいけない矛盾ですが、この作品を通じて考えることは決して無駄ではないと私は思っています。

  • オオトリテエに従うほかないっていう結論
    切なすぎるよね

  • 国語の教科書にも載っている命とは何か?罪とは何か?正義とか何か?を考えさせられるお話。
    国語の授業中、何回も読み返した思い出がある笑

  • 罪人を運ぶ高瀬舟上でのお話し。自ら足りる事と、尊厳死の問題。ページ数は少ないけど中身は深いですね。森鴎外は東大医学部卒の医師だったのでかけた部分もあるのかな?

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著者プロフィール

1862-1922年。小説家、評論家、翻訳家。本名は森林太郎。陸軍軍医として最高位を極める一方で、旺盛な文筆活動を展開し、晩年は歴史小説、さらに史伝に転じた。1917年から没するまで帝室博物館総長兼宮内省図書頭を務め、歴代天皇の諡号(おくりな)の出典を考証した『帝謚考』(1921年)を刊行。主な著作に『舞姫』(1890年)、『高瀬舟』(1916年)など。

「2019年 『元号通覧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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