人生論ノート [Kindle]

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  • 2012年9月13日発売
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  • 【印象に残った話】
    ・現代人のモラルの中心は成功
    ・だからこそ、本来そうではないはずなのに、成功と幸福、不成功と不幸が同一視されている
    ・虚栄が人間の存在の一般的性質であり、だからこそ人間は生まれつき嘘吐きなのだ
    ・娯楽は、生活を楽しむことを知らなくなった人間がその代わりに考え出したものである
    ・人が旅に出るのは日常の生活環境から離れ、普段の習慣的な関係から逃れるためだ
    ・旅のうれしさとは、このように解放されることのうれしさである
    【アクションプラン】
    ・成功と幸福、不成功と不幸は同一ではないことを、理解する

  • 著者のことや本書について前知識なく読んので、タイトルから自己啓発本かと思ったが、読んでみると人生の様々な側面への考察であった。
    著者は戦時中に治安維持法のために獄中死した哲学者である。

    そのように世の中が戦争へと進み、個人よりも国家への奉仕という流れが強くなるなかで「幸福」などのテーマを取り上げ個人の人生を語るというのは彼自身本書でいうところの行動的思想家というところだろうか。

    色々良いことが書いてあるのだが、
    まだなかなか自分の中に本書の内容を落とし切れていないのが歯がゆい。

  • 「いかなる人も他を信じさせることができるほど己を信じさせることができない。他人を信仰に導く宗教家は必ずしも絶對に懷疑のない人間ではない。彼が他の人に滲透する力はむしろその一半を彼のうちになほ生きてゐる懷疑に負うてゐる。少くとも、さうでないやうな宗教家は思想家とはいはれないであらう。」(懐疑について)
    はっとするような文章がいくつか。自分の読解力のなさで理解が難しかった箇所については、いつかまた再読しようと思う。

  • - 「死について」は響いたが、それ以外は今の自分にはピンとこなかった感じです。
    - ***
    - 私にとつて死の恐怖は如何にして薄らいでいつたか。自分の親しかつた者と死別することが次第に多くなつたためである。もし私が彼等と再會することができる――これは私の最大の希望である――とすれば、それは私の死においてのほか不可能であらう。假に私が百萬年生きながらへるとしても、私はこの世において再び彼等と會ふことのないのを知つてゐる。そのプロバビリティは零である。私はもちろん私の死において彼等に會ひ得ることを確實には知つてゐない。しかしそのプロバビリティが零であるとは誰も斷言し得ないであらう、死者の國から歸つてきた者はないのであるから。二つのプロバビリティを比較するとき、後者が前者よりも大きいといふ可能性は存在する。もし私がいづれかに賭けねばならぬとすれば、私は後者に賭けるのほかないであらであらう。
    - 執着する何ものもないといつた虚無の心では人間はなかなか死ねないのではないか。執着するものがあるから死に切れないといふことは、執着するものがあるから死ねるといふことである。深く執着するものがある者は、死後自分の歸つてゆくべきところをもつてゐる。それだから死に對する準備といふのは、どこまでも執着するものを作るといふことである。私に眞に愛するものがあるなら、そのことが私の永生を約束する。

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著者プロフィール

明治三十(一八九七)年兵庫県生まれ。京都帝国大学で西田幾多郎、波多野精一、ハイデルベルク大学でリッケルト、マールブルク大学でハイデガーの教えを受ける。大正十五(一九二六)年三高講師を経て、昭和二(一九二七)年法政大学教授。翌年、羽仁五郎と「新興科学の旗のもとに」を発刊、同年の「唯物史観と現代の意識」は社会主義と哲学の結合について知識人に大きな影響を与えた。昭和五(一九三〇)年共産党に資金を提供した容疑で治安維持法違反で検挙、入獄中に教職を失い著作活動に入る。以後マルクス主義から一定の距離を保ち、実在主義と西田哲学への関心を示す。昭和十三(一九三八)年には近衛文麿のブレーンとして結成された昭和研究会に参加、体制内抵抗の道を摸索したが挫折。昭和二〇(一九四五)年三月、再度、治安維持法違反容疑で投獄、九月獄死。未完の遺稿に「親鸞」がある。主著に「パスカルに於ける人間の研究」「歴史哲学」「構想力の論理」(全二巻)「人生論ノート」のほか、「三木清全集」(全二〇巻、岩波書店)がある

「2022年 『三木清 戦間期時事論集 希望と相克』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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