プロの資料作成力
意思決定社を動かすテクニックとおもてなしの心
■まず一番重要なことは「伝える目的」と「伝える相手(ターゲット)」そして「伝えたい内容(メッセージ)」を明確にすること
・ここががブレたままでは、どんなに見栄えの良い資料を作っても、相手に刺さらず、何らアクションを引き出すことができない。
■ビジネスにおける「わかる」には2つの意味がある
・ひとつは言っていることの意味が分かる。文字通り「意味を理解する」という意味。
・もうひとつは、意味を理解した上でその意義が分かる=「意義を納得する」という意味。ビジネスに限らず話をした後に相手に「よく分かったか?」と確認する場合があるが、この場合の「わかる」となる。
・意味がわかる:情報の量と質が適切で脳に収めやすい。情報が脳内本棚に収められ適切に引き出すことが可能な状態。
・意義がわかる:論理的・感情的に受け入れやすい。主張に合点がいって腑に落ち、アクションを取ることが可能な状態。
■プロフェッショナルの資料の三つの要件
・要件①期待値を理解している。 相手は急ぎで何か知りたいことがあるのか、逆にじっくり時間をかけて情報収集しようとしているのか、あるいは知るというより意思決定をしたいのか、そうした相手の期待値を理解していることがまず必要となる。
・要件②達成基準が高い。プロとして高い達成基準を満たしていること。達成基準とは資料のクオリティが高いことはもちろんだが、最近特に重要度が高まっていると感じるのはスピード。
・要件③安心・満足・感動を与える。具体的に言うと、「人を動かすことができる」力があるかどうか。
■目的はメッセージを定義することがスタート地点。いきなり PowerPoint を立ち上げてはいけない
・私は資料作成する際にまず「目的」「ターゲット」「メッセージ」「構成」といったステップの前段部分を紙に書き、それから一気にパソコンで作る。
・まずはじっくり考え、紙に書く。
■目的を明確にする
・目的①どんな行動をとってもらいたいのか。
・目的②そのために何を理解してもらいたいのか。
・目的③そのためにどのような状態にするべきか。
■メッセージ&ストーリーボードの作成。資料におけるメッセージとは?
・メッセージを因数分解してみると「メッセージ」=「主張」×「根拠」となる。これが資料におけるメッセージの大前提。
・言い換えると「Aだから(根拠)、Bすべきである(主張)」という文脈に収まっている必要がある。
・「メッセージがない・弱い」と相手に伝わらない。よく見られるのは、「Bすべき」と主張だけを言っていたり、あるいは「Aです」という状況だけを述べてそれば根拠になっていなかったり、「主張」あるいは「根拠」もしくはその両方が欠けているケースがある。
・根拠が欠けていて主張だけしかない場合、相手は大概「So What?(それで?)」と聞いてくる。「なんで?」「それで?」と返ってくるようでは、メッセージとして整っていないということ。それでは相手には伝わらない。
・メッセージを作るにあたって「主張」と「根拠」がともに揃っているか。主張に「◯◯すべき」というアクションが含まれているのか。メッセージがしっかりメッセージになっているのかを確認すること。これが最初のステップになる。
■メッセージの要件:5回以上の「なぜ?」に耐えうる
・まず提案を受けるお客様の状態を四つのステージで考える。
・最初は提案内容や商品を知らない「不信・不適ステージ」。ここではそもそも何を進めているのかが理解されていない状態のため、メッセージの「主張」部分がメインになってくる。
・次は言いたいことはわかるけど今忙しいという「不要・不急」ステージ。ここでは優先順位をあげてもらうために「なぜ今やらなくてはいけないのか?」という「Why now?」を訴求する。
・緊急性を理解された後のステージは「欲しいけど高い」または「あるもので良いのでは?」「自分でできるのでは?」という経済性を問われるステージ。ここでは提案内容の効果そのものと比較対象となる他の商品・サービスとのクオリティやスピードの比較などをメッセージとして訴求する。
・そして最後は様々な選択肢がある中で本当にここから買って間違いないのかという「不安」を払拭するステージ。ここでは自身や自社の実績や信頼性がメッセージの中核になってくる。これらのステージを意識し、どのWhy?(なぜ?)に答えるべきかをプロファイリングを基に徹底的に考える。
■レビューによる資料のクオリティの向上。レビューの視点とプロセス
・まず資料作成の「ステップ1目的」では、成果物の位置づけやゴールといった根幹、プロジェクトのゴールを達成するかを確認する必要がある。
・また「ステップ1ターゲット」では、ターゲットの設定は妥当か、仮説設定上の見落としはないか。
・「ステップ3メッセージ」では、事実・論理に誤りはないか、強調ポイントは明確か。
・「ステップ4構成」では構成が相手の思考プロセスに合っているか。
・「ステップ5ビジュアル化」では、情報の分類・構造が適切か、見せ方は理解を促進しているか、といった視点が必要になる。
・ レビュープロセスは、1.方針レビュー、2.ドラフトレビュー、3.最終レビューの3つのプロセスになる。
・レビュープロセスの1.方針レビューでは、資料の方針とアウトプットイメージ(=アジェンダと各ページのフレーム)を決定する。この段階で完成度の半分が決まる。ここでは「ステップ1」の「何のために資料を作るのか」といった目的の再確認と資料の位置付けが鍵になる。こ※で間違えるとその後はすべて総崩れになってしまうため特に重要なところ。
・2.ドラフトレビューは、資料がおおよそ出来上がっている状態で、メッセージが論理的にきちんとストーリーや構成に落とし込まれている、用語、スライド構成、各ページの内容の整合性が取れているかを確認する。
・3.最終レビューでは、目的もストーリーも構成も整合性が取れている上でビジュアル化の技法がきちんと効果的に使われており、最終的に伝わりやすい資料となっているかどうかをチェックする。