だから山谷はやめられねえ 「僕」が日雇い労働者だった180日 (幻冬舎アウトロー文庫) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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  • 大学生が就職活動を目前にして「日雇い労働をしてみた」というレポートである。発売が2008年だから、まだ登録型派遣がなかった時代のことで、今みたいにネットに登録しておいて、必要なときに通知がくるなんてシスムも勿論なかった。当時、日雇い労働者が集まる地域は限定されていて、そこに著者は出向いて一時的な日雇い労働にはげみ、そこで出会った人たちとの(ちょっとした)交流が描かれている。前述の通り、もう今とは時代が違うのだが、働くとはどういうこなのかなと迷う大学生あたりが一度読む分には面白いと思う。言い方は悪いが、貧困で苦しんでいる人こそ、労働とはどういうものかを、身体で理解しているなと思う。

  • 大学院に入ったものの、就職に意味を見出せず、ズルズルと流行りの「自分探し」の境地に達した著者。あるとき、彼は山谷の男たちを目にする。彼らは1泊1000円のドヤに泊まり、日雇いの仕事を求めるその日暮らしだ。あしたのジョーが住んでいた世界と言ったらわかりやすいか。

    自分の世界とあまりに違う世界に惹かれた著者は大学を放り出し、自ら山谷の生活に挑む。ドヤで寝泊まりし、日雇仕事のブローカーや山谷独特の職業安定所で仕事を探す。ボランティアから炊き出しを恵んでもらうこともあれば、飯場で泊まりこみの仕事も経験。

    山谷の男たちは互いの名前や過去を詮索しないルールを守り、カネがなければ働き、カネがあれば静かにパチンコや酒に興じる。気楽そうに見えるが、将来の保障は何もない。ある職人が土木現場で大ケガをするが、おそらく彼の人生は詰んでしまうのだろう。

    「山谷はやめられねえ」ってタイトルだが、その著者はあっさりと山谷から足を洗い、ちゃんと就職している。本書は、山谷のガイド本ではなく、山谷の生活を甘く見た著者の後悔の記録だ。

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