- Amazon.co.jp ・電子書籍 (429ページ)
感想・レビュー・書評
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いまだに平静な気持ちで読み通すことが難しい本。
時折、試してみるが通して読んだのは一度きりである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
BGM Blue in Green / MILES DAVIS AND JHON COLTRANE
テーマの大きさに圧倒され、自分の弱さ脆さ狡さに向き合わざるをえない。 -
御巣鷹山への日航ジャンボ機墜落事故を追った地元新聞社である北関東新聞社の記者たちの物語。
主人公の中年記者・悠木は山を愛する同僚・安西と谷川岳衝立岩登山の計画を立てる。
そんな中、ジャンボ機が消え、悠木は”全権デスク”の任につく。
ほぼ同じ時に、谷川岳に向かう前に、安西が倒れたことを知る。
御巣鷹山に上り、最前線で情報を手にする佐山。多くの死体を見て狼狽・動揺しながらもそれを受け入れ成長する神沢。
墜落原因を探り、いち早く真相に近いところにたどり着く工学部での若き記者・玉置。
一方でかつての大事件「大久保・連赤」時代を武勇伝として語り、妨害に近い工作を行う社内上層部。
特大スクープのチャンスをつぶし、自殺した同僚のいとこの辛辣な投書を載せた悠木は、立場を悪くする。
そして安西が倒れた背景を知ったのち、安西の家族やなかなか打ち解けられなかった息子と、山へ向かう。
事故から20年の時がたち、悠木は安西の息子・燐太郎と衝立岩に挑む。
恐ろしい事件が起きたときに存在意義が問われる、メディアの熱い世界、結構熱中して読んでしまいました。
未曽有の大事故の中で、あるものは現場での真実の探求に燃え、あるものは現在の地位を守るために奔走する。
しかし地方の新聞社での派閥争い、というと今では「そんなことをしている余裕あるのか」、という気がしてしまいます、
ハラスメントの嵐の様子も含め、戦後昭和の独特のサラリーマン文化の時代だな、と思いました。 -
日航機墜落事故を舞台にした新聞社の物語。
生々しい緊迫感や、臨場感がヤバかった。 -
何回読んでも素晴らしい。何回読んでも感動する。重く、暗く、地味で、濃密で、男臭くて。17年前のたった一週間の出来事を衝立岩登攀との対比でより鮮明に炙り出される。
横山秀夫の作品はどれも感情移入できるというか、出来すぎて読むのが辛くなる時がある。社会人ならどの場面も理解できる、責任感や使命感。同時に逃げたくなる感情や責任逃れの感情。見方によってはハッピーエンドだろうが、作者は主人公の最後の重大な決断を二者択一に迫った。これも作者らしい重くて暗いストーリーだ。
現実的な展開の中にときおり出てくる温かいストーリー。この作品にグイグイ惹き込まれる要因じゃないだろうか。
横山秀夫なら「64」か「クライマーズ・ハイ」か。読書を趣味にしていて良かったと思える。 -
「震度0」が面白かったので、横山秀夫さんの代表作である本書を読みました。こちらも寝不足にさせてくれるほどの面白さでした。
舞台は架空の「北関東新聞社」。本書が描くのは1985年8月に起きた日航123便の墜落事故を追う編集デスクの1週間。
横山秀夫さんは上毛新聞社の元社員。編集部の現場の混乱ぶり、締め切り直前の緊迫感、記者と管理職の葛藤がリアリティをもって描かれます。
題名の「クライマーズ・ハイ」とは、登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のこと。意味そのものは中盤で説明されますが、本書の題名が、何故この題名なのか?これは、本書の語る物語を総合しないとわからないと思います。
ぜひぜひ、お読みくださいの★★★★★。 -
「日航機墜落事故」と「山」という関心のあるワードが含まれているという理由だけで読み始めた。
御巣鷹山の悲劇やそれによる混乱ぶりは真に迫っており凄惨で言葉を無くすほどに素晴らしいが、それらは人間というものを炙り出す舞台装置に過ぎず、本作のメインはそこにはない。
主人公は強いが妙に繊細で、そのくせ鈍感だったり、若くもないくせに青臭かったり、ある意味人間味溢れる。また同僚も同僚で豪放磊落だったり血気盛んだったり弱気でダメダメだったり、サイコパスっぽかったり、色ボケ欲ボケしていたりして、こちらもなかなか強烈だ。
サラリーマンなら誰でも思い当たる情熱、壁、狂気、愚かさなどが散りばめられていて、登場人物を応援しつつもイライラしたりして、なかなか読むのに体力が要る。
折々に挟まれる登山の情景が心を浄化しなければ、最後まで読み終えられなかったかもしれない。 -
この本をきっかけに、日航ジャンボ機墜落事故を知った。そして、「沈まぬ太陽」を読むきっかけになった。
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オーディブルで読了。
恥ずかしながら、読む前は、日航ジャンボ機墜落事故の現場に頑張って登っていく話だと思っていた。実際のところ全くそうではなく、同事故を新聞で報じた新聞記者の物語といったところかと思う。
話は変わり、自分も主人公と同じように会社という組織に所属しているが、子どもが小さいこともあり、会社に配慮を願い出ているため、今はかなり仕事と距離をとっている。仕事のやりがいや仕事への情熱などとは無縁で、日々忙しくしている他の社員達に対して引け目すら感じている。
そんな今の自分にとっては、この本の主人公やその周囲の人々の、新聞記者という仕事にかける情熱やプライドを暑苦しいとか、そんなに情熱をかける意味があるのかと冷ややかな気持ちになる一方で、そこまで仕事に夢中になれることに羨ましさも感じた。
もっとも、この本の主人公のようにしゃかりきに働くことなど、例え同じ状況にあったとしてもできそうにないなと思いつつ。
また、同事故のあった1985年当時の描写も、当時まだ生まれていなかった自分にとっては興味深く、懐かしいというか、新鮮だった。
仕事とは何なのかを考えさせられる一冊だと思う。