太陽の坐る場所 (文春文庫) [Kindle]

著者 :
  • 文藝春秋
3.46
  • (5)
  • (20)
  • (28)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 336
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (337ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 文庫本で読みましたが、検索しても電子書籍しか出てこないのでこちらに感想を書きます。

    高校のクラス会で集まった仲間たち。
    そこでの話題は、今では有名女優となった元クラスメートの「キョウコ」。
    盛り上がった面々は、メンバーの中の誰かが欠席の理由を確かめ、次の同窓会には何とか出席してくれるように頼むことにしようと盛り上がるが…


    際立って目立つ存在だった『女王様』を取り巻く仲間だった彼らの、高校時代、あるいはもっと幼い頃から現在まで続く、互いへの複雑な思い。
    自尊心だったり、息苦しさだったり、欲望だったり、不安だったり。

    メンバーのひとりひとりの思いを順にたどりながら、終章に至るまでに、『キョウコ』がふたりいたことが明かされ、それまで皆が話題にしていた「女優のキョウコ」と数々のエピソードで語られていた「女王様のキョウコ」との違和感の謎が解ける仕掛け。

    ミステリっぽくするためなのか、他にも「リンちゃん」と「倫子」、「里見」と「聡美」など紛らわしい名前と呼び名が入り組んでいて、かえってこの仕掛けが煩わしく感じてしまった。
    ラジオドラマには、出来ないですね。

    それぞれの登場人物の心理が痛いほどに描き出されているだけで、十分面白いのに。

    「かがみの孤城」が良かったので他の作品も…と手に取ったが、何か、主題以外の部分を描き込みすぎた絵をみたような、ちょっと残念なような…
    ということで、十分面白かったので星3、でも気持は2.5?

  • 面白かった。ストーリー全体も良いのだとは思うけど、わたしは完全に心情描写を楽しんだなあ。

    良く小説に「素敵な人」「冴えない人」「幸せな人」「不幸な人」とキャラクターが分かれて登場するけど、本来現実にはそのどれかにはっきり決まっている人なんていない。かと言って、ある日突然改心したり、成功して人格のすべてが変わる人もいない。幸せも不幸せも、優しさも残酷さも地続きで、だからこそ人間には救いがあるし、絶望したり、退屈したりもする。
    そういう人間の当たり前を、リアリティをもって、かつ面白いと思わせて複数人描くってものすごい力量だし、意外とそれが上手だなって実感できる作家さん少ないよな……辻村さんは本当にその点では右に出る人なかなかいないと思う。
    あと女性が複数出てきて、その女性たちが仲良いだけでなく、仲悪いだけでないお話がものすごく好きです。はーーー楽しかった。
    人物描写を読む快楽を味わいたければ辻村さんのお話。と再認識しました。

  • 途中でキョウコが二人いたのに驚き。
    クラス会のみんなの記憶の中のキョウコと今の女優のキョウコのイメージがちぐはぐだとは感じていたけれど…。
    結局タイトルの太陽は響子だったのかな?読解力がなくて分からなかった。

    響子はたしかに悪いことをしたけれど、それに見合う制裁を充分に自ら受けにいった気がする。体育会で、潔癖なんだよな。
    それに引き換え由希のほうがしたたかで、悪い気がする。

    私は女子高でこんなふうに男女が絡むカースト制を経験していないけれど、なんとなくこの小説の思春期の、自意識過剰な感じがわかる。
    共学の人はもっとよく分かるし、心が痛む人がいるかもしれない。

    なにはともあれ驚きあり、共感あり、振り返る苦しさありでおもしろかった〜!

  • これはあまりネットで調べずに読んだ方がいいです。辻村さんの若気の至りというか学生時の痛さ、弱さ、単純さの描写やストーリー展開はさすがです。

  • 辻村深月の作品では、珍しいイヤミス
    な雰囲気。
    最後にキョウコと、カナを振っていた
    理由が分かってスッキリした。
    湊かなえに似た世界観の作品だった。

  • 途中まで素直に女優のキョウコ=響子だと思ってたのでまんまと騙された。

  • 繋がっていくこの感じが好きだけど、途中でこんがらがってイマイチ入り込めなかった。感情の描き方はさすが辻村深月さんだった。

  • 1 出席番号22 半田聡美
      東京で開催した高校のクラス会に、テレビドラマデビューした響子はやはり来ず、元彼の清瀬のためだろうと、聡美が会いに行って彼はもう来ないと話をすることになった。聡美もひそかに劇団に属し、響子以上に美しいと自負していたのだが。「倫子の事件」て何だ?

    2 出席番号1 里美紗江子
      ブスで友達がいないことを貴恵に哀れまれて友達になったことを紗江子はずっと重荷に感じてきて、貴恵の元彼で美形でもてる真崎修と密かにつきあっていることで、優位を感じてきたのだが、響子が清瀬と今も交流があると知って愕然とする。

    3 出席番号27 水上由希
      上昇志向が強く腹黒い由希は、高校時代は響子が女王のときは取り巻きだった。アパレルメーカーの入社試験に落ちたが臨時職員で入り、社内では女優響子の友達だと吹聴し、友人たちにはデザイナーだと言い、Web制作業の真崎に発注話を持ちかけたりする。

    4 出席番号2 島津謙太
      クラス会の幹事を10年続けてきた銀行マン島津は、高校時代から由希への想いをもち続けているが、由希はまったく無反応で、由希の制服のスカートを盗んだことを響子に知られている。
      え?、なに?、響子と今日子?、別人?、名前を奪った?、響子がとりまきの倫子を学校の倉庫に閉じ込めた?読者は一気に混乱する。
      クラスの女王である高間響子は、鈴原今日子=のちの女優キョウコから、自分と同じ「きょうこ」という名前を奪い、リンちゃんとよんでいたが、響子が好きだと公言している清瀬が鈴原今日子と付き合ったことで権威を失った、という高校時代のいきさつが分かってくる。キョウコと響子が同一人物だと思わされていた読者は最初から読み直さなければならなくなる。この手法って他の作品にもあったな。

    5 出席番号7 高間響子
      女王の座を失った響子は、必至に卒業までを耐え、以後は同級生に会うことを避けて、クラス会にも出席しなかったが、地元ローカル局のアナウンサーになってから、恥を忍ぶ決意をして同窓会に出る。クライマックスは響子と今日子の対決。今日子は容赦なくかつての響子を断罪し、響子はそれに耐える。
      倫子を閉じ込めた倉庫に、響子が自ら籠もるというプロローグの意味が、エピローグで太陽が自ら岩戸に籠もるという意味だと明かされるが、このくだりは象徴性を強調するあまりに現実離れしてちょっと浮いてしまっている感じがする。

     それにしても、半田聡美や里美紗江子が連絡がとれなくなるのはなぜ?

  • イケてるグループとさえないグループ。
    クラスの中ではっきり分かれていた。あの頃も今も同じなんだろうな。
    自分は地元を離れてしまったので、当時の同級生たちのその後を知らないし、あの頃の彼らが自分のことをどんな目で見ていたのかもわからない。
    この本のように、将来再開して、当時のことを思い出すようなことがあると楽しいような、怖いような…。

  • 読んだ本 太陽の坐る場所 辻村深月 20240207

    「高校卒業から十年。元同級生たちの話題は、人気女優となったキョウコのこと。クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女たちだが、一人また一人と連絡を絶ってゆく。~」本屋に積んであって、あらすじ読んでミステリーかと思って買ってしまった。
     高校時代のある出来事をひきずった同級生たちの、叶わぬ夢や挫折、妥協、劣等感がキョウコを中心に暴かれていく。こういうのって、なにがしか身に覚えがあって登場人物同様に傷つくんですよね。そして、そのある出来事が何か、最後まで伏せられてるってところは確かにミステリーかも。そして、話しの中心は誰なのか。最後のどんでん返しもミステリー的なのかもね。
     女性の描く学園もの(?)って、すんなりは共感できないんだけど、十年後の夢や見栄には共感しまくり。聡美や紗江子に共感しながら一緒に傷ついて、由希に肩透かしを食う。全てを傷心にまとめてしまわないところが巧み。
     次は「かがみの孤城」か「傲慢と善良」か。おすすめあったら教えてください。

     

  • 歳を重ねて初めて分かる青い春(青春)!
    若い自分を知られている同級生は、甘くて苦い特別な同士かな。あの頃は若かったと苦笑い出来る同士が健やかなに歳を重ねていますように。

  • 隣県育ちで東京住まいという舞台設定が、私自身の生い立ちとマッチしているだけに、よりリアルに想像することができたように思うが、何より高校時代のスクールカーストの関係と社会人になってからの関係の変化をベースとした展開には、途中で「そうだったのか」と気づかされることもあり、最初から最後まで集中して読めた。

  • 面白かった!
    最終章で誰が誰だかはっきり理解。
    この人の話だったの⁉︎とビックリ。
    騙されましたー!

    登場人物それぞれの心情。
    良いも悪いもすごくわかる。
    人生意地汚い自分と正しい自分との戦い。
    腹黒さがない人に心底憧れる。

  • 雰囲気、湊かなえさんに近い感じの作品。雑に説明すると、高校時代、スクールカーストの頂点付近に居た5人の10年後を羅生門スタイルで描いた感じ。ちなみに、辻村深月さんの作品を多く読んできたせいか、ミスリードについてはすぐ気付きました^^;。

    正直、自分と誰かを比較した事が余り無いので全体的に余りピンと来ない話でしたが、第2章の里見紗江子はまずまず面白かったかな。第1章の半田聡美と第4章の島津謙太は恐らくつなぎみたいな感じで、恐らくメインは第3章の水上由希と第5章の高間響子だと思います。誰かに対して何かしらの嫉妬心があり、かつ、そういった気持ちがある自分に対して劣等感を感じているような人がこの作品を読むといろいろ救われる事もあるのかも??

  • 読まず嫌いはよくなかったと実感。まさかのどんでん返しもあり、希望の持てる終わり方もよかった。

  • え、え、え?途中から違和感があったものの…でも再読はしなかった。どっちがどっちでも、ネタ以外に大きく引き込まれるものがなくて残念

  • 新年1作目。辻村深月のことは全く知らなかったが、「桐島部活辞めるってよ」の話題の延長で同僚Mさんに勧められた。

    共学の高校を卒業した20代後半の男女数人の同級生たちの群像ドラマ。それぞれが見栄や虚栄を張って過ごしている生活を複数の視点で提示。登場人物の名前の重なりを利用した小説テクニックが上手。話題の中心になる「清瀬」が登場しないとこらが「桐島」との共通点。

    男子校に通っていた身としては、共学の高校は未知の環境でしかなく、「確かにこういう女子いた」的な感覚を共有できないのは残念だが、楽しめた。

  • 辻村 深月の作品は大きく2つに別れれる。
    10代思春期の心模様が多いけれど、最近は30代女性の心模様も描いているようだ。


    前者の方が圧倒的に好き。

    まぁ、NHKとかでドラマ化してるし、一読の価値はあるかも。
    30代女性の心模様。イマイチピンと来ない。

  • 叙述トリックはあるけどミステリーではない。そのバランスが良かった

全20件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×