- Amazon.co.jp ・電子書籍 (369ページ)
感想・レビュー・書評
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トータルリコール ★★★☆☆
火星で働いていたということだけでなく、異星人から地球を守っていたこともただの願望や妄想ではなく事実だったというオチに感心した。異星人との交渉のことを口外させないために彼らとのやりとりを記憶から消されたのにそれが掘り起こされてしまったというところで小説は終わっていて、これはこれでいい読後感を与えてくれるがこの後の展開を作者が考えていたのか、いたのであればどんなものなのか気になった。
出口はどこかへの入り口 ★★★☆☆
ルールや社会の空気に縛られず一歩を踏み出せるかどうかで人生が変わることを皮肉を交えて伝えている
地球防衛軍 ★★★★★
核戦争により地上に住めなくなった人類は地下で生活し、地上ではロボット兵たちによって敵国ロシアと絶えず戦争が行われている世界。人間は知能を持ったロボット兵たちに地上の様子を報告させていて、ある時ロボットから核反応が出ないことに気づき、地上は本当に核汚染されているのか疑問にもった主人公の上司が主人公らと地上を訪れるとそこには緑豊かな世界が広がっていた。ロボットは人間たちが戦争という愚かな行為を反省し、平和の重要さを気づかせるためにわざと虚偽の報告をしていた。上司らはロシアよりも先に地下の兵士たちに現状を伝えロシアを先に攻撃しようとするもロボットたちに地下に通じるチューブの入り口を閉鎖される。ロシア側の状況も同じであると伝えられる。そして、ロボットたちに諭され、地上でロシア人たちと手を組み新たな祖国を一緒に築くことを決断する。
この展開はいい意味で予想外だった。
訪問者 ★★★★☆
地球は人間だけのものではない。核汚染で人間が住めなくなり火星に行った一方で環境に適応したアリなどの生物の進化形が地球を支配している世界では彼らが地球の住人なのだ。
「われわれは地球の訪問者なんだ。自分たちの姿を見ろ。防護服とヘルメットーまるっきり探検用の宇宙服だ。つまり、宇宙船で自分たちが生存できない異性に立ち寄ったところだ」という火星から地球を訪れた乗組員のセリフと彼の「地球に訪問するときには住民の許可を取らないといけない。だが断られるかもしれない。きてもらっては困ると」というセリフにはハッとさせられた。
世界をわが手に ★★★☆☆
もしかすると主人公たちのいる世界も誰かの世界球の中の作られたものなのかもしれない。最後の描写はそれを暗示するかのようなもので鳥肌が立った。世界球とそれを所有する人間の関係はペットと飼い主のそれに似ている。人間の都合でペットはいかようにも不幸になれる。勘違いしてはいけない。人間は絶対的な存在ではない。自らが一番だと絶対的だと思った瞬間に足元をすくわれる。
ミスター・スペースシップ ★★★☆☆
宇宙戦争が舞台で敵の生きている兵器に立ち向かうために戦艦に人間の脳(主人公の恩師)を搭載したら戦艦が乗っ取られて、戦争のない世界をつくるために主人公と彼の妻だけを乗せて未開の地へ旅立つという話。
刺激的な結末だった。戦艦が敵部隊に特攻を仕掛け、恩師の姿から戦争に対する姿勢を主人公たちが改めるというオチなのではと予想したが見事に裏切られた。
「戦争は人間の本能ではなく習慣に過ぎない。地球からの文化的影響を最小限に抑えてゼロから独自に築かれた社会は、違ったほうに発展するかもしれない。地球文明特有のものの考え方から解放されたまったく新しい基盤から出発できれば戦争が存在する世界とは違う世界にたどり着けるかもしれない」
教授が主人公を諭すときにいったセリフだが、僕は戦争は人間が生まれながらにもつ生存本能や支配欲、独占欲などが大きな原因のひとつになっていると考える。残念ながら、どれだけ習慣や文化がまっさらな世界を築いてもこれらの本能や欲がある限り戦争はなくならない。
非O ★★★☆☆
パラノイア障害のせいとはいえ、自分の思い描く世界を絶対だと信じて疑わず、それに反対するものを知性を持たない獣や不合理なものたちだと罵る人々の愚かさが短い小説ながらこれでもかとよく描かれている。
フード・メーカー ★★★☆☆
ディープという相手の思想、思考を読める者たちを使い反政府的な考えを持つ人物を捕らえる世界で思考を読まれないためにフードという特殊な金属を頭に装着し抵抗する者たちとの闘いの話。相手の考えを他人が直接読むという段階には達していないものの、あらゆる手段で反政府的な言動を監視するチャイナの世界に似ていて背筋が寒くなった。オチはもうひとひねりほしかったが、どんなに特殊な能力をもち、自分が相手より優れていると信じて疑わないものたちも自身の存在や将来性を科学的に否定されると絶望感を抱くということのようだ。
吊るされたよそ者 ★★★★☆
昆虫の姿をした異星人がある町を支配し、運よく支配を免れた主人公の男が隣の町に逃げて、その町の警察に報告したものの実はその町もすでに支配下にあり殺されてしまう話。
最初に出てきた吊るされた死体も主人公のようにほかも町から逃げてきて警察に事態を報告したものの、すでに異星人に支配されていて同じように支配を免れた人をあぶりだすためのおとりとして殺されたのだろう。吊るされた主人公の死体を見た副頭取の男も主人公と同じような行動をし、同様の結末を迎えるだろう。こうして、彼らは確実に全員を支配する。
起承転結がテンポよく描かれていて、最後の残酷なオチもよかった。
マイノリティーリポート ★★★★★
まずなによりも、短編でこれだけの物語を展開させることができるという事実に衝撃を受けた。長編映画を見ている気分になった。(実際にこの作品は映画化されているが)
プレコグを3人配置し、彼らが見通す未来のうち似ている2つをマジョリティーレポートとして採用し、それをもとに犯罪者を逮捕する。ただ、実際はそれぞれがマジョリティーリポートで連続性がありどれも正しい未来になる可能性があるというオチには膝を打った。絶対的に正しいものなど存在しないということだろう。仮に数が多かったとしても。
この短編集では「絶対性の否定」というものが1つのテーマになっていた。何においても「絶対にーである」ということはない。「絶対に正しい」と思ったことでもその裏を見ると真逆の事実にたどり着く可能性がある。決めつけることなく、あらゆることに注意深く、そして謙虚でいることこそこの時代を生き抜くヒントなのかもしれない。 -
「トータル・リコール」
「出口はどこかへの入口」
「地球防衛軍」
「訪問者」
「世界をわが手に」
「ミスター・スペースシップ」
「非O」
「フード・メーカー」
「吊るされたよそ者」
「マイノリティ・リポート」
表題作の「トータル・リコール」(「追憶売ります」から改題)と最後の「マイノリティ・リポート」は映画化されてそれなりにヒットした作品。これらに新訳や本邦初訳の所作10作を合わせた12作の短編集。映画は両方観たが、原作はずいぶんと雰囲気が違った。小説を映画化したというより、原案として膨らませたのだと思われる。
SFはアシモフばかり読んでいたので、ディックはあまり読んでいない。というか長編は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』しか読んだ記憶がない。退廃的な世界観のイメージがあったが、決してそんなことはなかった。むしろ星新一を彷彿とさせる哲学的な作品が大半のようだ。ちゃんと長編も読んでみようかと思う。
余談だが映画のマイノリティ・リポートに出てきた“ジェスチャーでコンピュータを操作するインターフェース”は、ほぼ同様なものが最近商品化されたらしい。欲しい。 -
社会の構造への痛烈な批判はSFでこそいきるなぁと。短編集だけどマイノリティーリポートはやっぱり秀逸。サイコパスとか影響受けまくりだったんだろうな。
完璧なシステムが構築されれば安全な世界で生きられるけど、害をなす側に立つ可能性を考えたら犯罪予防で拘束されるなんてごめんだよね。 -
「トータルリコール」「出口はどこかへの入口」「地球防衛軍」「訪問者」「世界をわが手に」「ミスター・スペースシップ」「非0」「フード・メーカー」「吊るされたよそ者」「マイノリティ・リポート」
を含んだディックの短編集
やはり有名なのはトムクルーズで映画化されたマイノリティ・リポートでしょうか。大分映画と違うなと思いましたが。他の作品も面白い。ニヒルな感じがディックの作風なのかな?
著者プロフィール
フィリップ・K・ディックの作品





