虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 時代や技術そのものは未来のもの、架空のものでありながら、現代社会と地続きだと感じられる重いリアリティを伴った物語でした。

    自国に不利益を生じなければ、見て見ぬふりをされる内戦というのは、今も存在しています。国力の駆け引きが、多くの人を死や苦しみに追いやっているのは、間違いなくリアルです。その視座でもって描かれているから、遠いどこかかなたの異世界SFではなく、近未来のこの世界の姿として描かれているようで、積み重ねられる死体の描写に、次第に罪悪感を抱いていく感覚すら覚えました。

    戦う兵隊たちに施される「罪悪感」のシャットアウトというカウンセリングを羨ましいとすら正直思いましたし、その罪悪感から目をそらして、わたしたちは世界を傍観して生きているな、とも実感させられました。

    確かにSFを読んでいるのに、まったく絵空事とは感じられない。ことごとく現代を、SFというフィクションの騙りでもって見せつけられている、そんな風に感じた作品でした。

  • 久々にSF小説が読みたくなり読んだ。
    サイコパスや攻殻機動隊のような近未来な世界観の中で描かれるSFアクション小説。
    技術的な用語には聞き覚えのあるものも多く小説として楽しめた。
    主人公の母に対する葛藤、そして主人公がジョン・ポールの真意にたどり着いたあとに出した答えが描かれた結末。展開もテンポが良く考えさせる読後の読了感もよかった。

  • 文学ラジオ空飛び猫たち第22回紹介本。
    ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/22-empqcc

    ダイチ
    ラジオでは多少ネタバレを話していますが、読むきっかけになればと思っています。ただ未読の人でこれから読むのを楽しみにしている状態なら、さきに読んでいただいてその後にラジオを聴いてほしいと思います。小説の感想としては、初読のときは衝撃を受けました。9・11以降の世界をSF小説として描いているのですが、驚きの連続です。『虐殺器官』、『ハーモニー』と続けて読むのがおすすめです。米軍大尉でいながら悩みを抱えて戦う主人公クラヴィス・シェパードの心情にも惹かれました。
    幅広く楽しめる要素がある小説です。アクション映画が好きな人や、世界情勢が絡む特殊部隊の世界が好きな人や、「虐殺の文法」という小難しい理論をわくわくして読める人ははまると思います。SF初心者でも楽しめます。「虐殺の文法」のアイデアがおもしろくて、文体も読みやすいです。

    ミエ
    タイトルに《虐殺》と入っているだけあって残虐な描写は多少ありますが、SF小説としておもしろいです。作中の重要なアイデアである「虐殺の文法」の理論は難しいところがありますが、何となくの理解でも十分に楽しめます。また引きのある登場人物も魅力的で、ジョン・ポールという悪役に位置付けされるキャラには成り立ちのドラマがあって、主人公クラヴィス・シェパードも特殊部隊に所属する軍人でありながら人間味があって、この二人の会話には惹き込まれました。
    『ハーモニー』に比べると『虐殺器官』はよりスリリングな展開です。エンタメ要素も高く、多くの人にとって楽しめると思います。

  • めちゃくちゃ面白い。そして考えさせられる。自分の子どもに戦争が及ばないようにするためならその選択も視野に入るな。と、色々と考えてしまう。大好きなクジラたちが軍事用の肉をまとった飛行機やカプセルに成り果てているグロテスクさ、嫌悪と共に妙に惹かれた。

  • [ハーモニー]とはまた違った面白さだった。薬物とカウンセリングにより[痛みを知っているが感じることができない]恐ろしさ。個人情報が徹底的に管理された未来都市。SFとはいえ笑い話では済まされないような、身近に感じる恐怖だった。映画も見たけれど、やはり原作の方が設定や心理への理解が深まる。

  • SFと至る所で書かれてますが、あまりそのように感じなかった。リアルの積み重ねの中にこっそりスパイス的に近未来要素を織り交ぜたよう。将来こんな世界になるんじゃないかと思ってしまう。
    何をするにもデータ化され管理される完全な情報化社会。
    痛いということはわかるのに、痛みを感じない痛覚マスキング。
    便利だけど怖すぎる。

    また近いうちに再読したい。

  • 資本主義を生み出したのは仕事に打ち込むことを良しとするプロテスタンティズム、仕事は宗教

    昨年までは、キャパのリミットに近くても、もらえる仕事は出来るだけもらうようにしてました。自分のスキルアップに繋がると思ったからです。

    今年は、少しスタンスを変えました。勉強する時間が削られるまでは仕事しない、という風に。なので今まで引き取っていた仕事を返したりしてます。

    勉強と言っても仕事の延長上なので、仕事してることには変わらないかもしれません。

  • 映画では詳しく説明されなかった細かいSFガジェットの描写が沢山あって満足、映画と微妙に違うラストが意外で驚いた。

  • 人間に特有の“器官”としての言語、自由意志、平和・倫理とは…。
    多種多様な切り口から問題提起が為されており、いろんな楽しみ方ができる作品だと感じた。
    自由とは選択できること、良心は遺伝子的に組み込まれているもの、人間という生物に対するリアリズムと理想の間。
    主人公以外の全ての登場人物はそれぞれが確固たる信念・倫理観を持ち合わせているのも魅力的だった。そして、その中で、主人公がある種のアイデンティティ・クライシスに陥り、最終的に崩壊(!?)の一途をたどる結末も興味深く、1984年の読後感と似たものを感じた。

    本作品を読んで、次に読む予定の同著者作品の「ハーモニー」の期待値が上がった。

  • 私が初めて読んだSF小説。高校の学園祭の古本市に出されており、装丁に惹かれて手に取った。冒頭のグロテスクな表現に耐性がなく10ページほど読んで積まれていましたが、この本から目を背けることが許されない気がして再読。
    淡々と生々しくグロテスクな表現が続くのもクラヴィスの無関心さや心のマスキング効果の顕れのようで、物語が進み自分がクラヴィスを理解し同調していくに従って何とも思わなくなった。
    ルビの振り方が特徴的で『ハーモニー』に比べて文章が粗削りなので慣れないと読みづらいかもしれないが、私は字幕付きの洋画を見ているようで好き。そこかしこに小ネタも盛り込まれているので知ってる人にとっては楽しいだろうなと思います。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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