虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

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  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃ面白い。そして考えさせられる。自分の子どもに戦争が及ばないようにするためならその選択も視野に入るな。と、色々と考えてしまう。大好きなクジラたちが軍事用の肉をまとった飛行機やカプセルに成り果てているグロテスクさ、嫌悪と共に妙に惹かれた。

  • [ハーモニー]とはまた違った面白さだった。薬物とカウンセリングにより[痛みを知っているが感じることができない]恐ろしさ。個人情報が徹底的に管理された未来都市。SFとはいえ笑い話では済まされないような、身近に感じる恐怖だった。映画も見たけれど、やはり原作の方が設定や心理への理解が深まる。

  • SFと至る所で書かれてますが、あまりそのように感じなかった。リアルの積み重ねの中にこっそりスパイス的に近未来要素を織り交ぜたよう。将来こんな世界になるんじゃないかと思ってしまう。
    何をするにもデータ化され管理される完全な情報化社会。
    痛いということはわかるのに、痛みを感じない痛覚マスキング。
    便利だけど怖すぎる。

    また近いうちに再読したい。

  • 資本主義を生み出したのは仕事に打ち込むことを良しとするプロテスタンティズム、仕事は宗教

    昨年までは、キャパのリミットに近くても、もらえる仕事は出来るだけもらうようにしてました。自分のスキルアップに繋がると思ったからです。

    今年は、少しスタンスを変えました。勉強する時間が削られるまでは仕事しない、という風に。なので今まで引き取っていた仕事を返したりしてます。

    勉強と言っても仕事の延長上なので、仕事してることには変わらないかもしれません。

  • ただ単に近未来SFとしてではなく、それらをあくまで舞台装置として現代社会に通じる人々の無関心さを形容するのに活用しているのが素晴らしい。

    言葉については自分が言語学の知識がない故かとても興味深かった。
    罪と罰、周りからの命令で罪の意識なく罪を犯すことへの罰と、自ら進んで母の生死を決めたことによる罰について主人公が悩んでいる。
    そこに同じように自らの罪を意識している主人公と同じような境遇のルツィアに裁かれることで救いを見出そうとする主人公という構図が良かった。

    全ての要素が一体となって物語に深く関わっている、とてもうまい物語の構成の仕方だなと感じた。

  • テロ防止のためのトレーサビリティはパンデミック対策のための接触確認アプリを思わせる。取引や流通の透明性を高めるため、セキュリティのためのトレーサビリティは、容易に監視社会につながる。

    コロナ対策で罰則付きで市民の行動を制限する欧州型よりも、強権的な監視社会である中国型のほうが成果が出やすいのは疑いなく、この流れはカーボンゼロを本気で目指すなら国際社会の常識となる可能性が高い。

    だとすると、罰則なしの国からのお願いだけで、国民の自主規制でなんとか乗り切ろうとする日本的なやり方は、実は、個人の自由をめぐるギリギリの攻防なのかもしれない。政治的・地球環境的・倫理的正しさを追求することと、個人の行動をどこまで許容するかは、作中でチェコのクラブのオーナーが言ったように自由の選択の問題だ。

    独裁国家による中央集権的な管理社会の息苦しさと、相互監視によるムラ社会的な息苦しさ。どっちもそろってたのが全体主義国家の悪夢なんだろうけど、どちらかを選ばざるを得ないなら、どっちのほうが生きやすいか、社会的なコンセンサスを築いていく必要がある。この増田を見て、そんなことを考えた。→ むしろいま必要なのって晒しと私刑じゃね? https://anond.hatelabo.jp/20210111213658

    あなたの人生の物語にも出てきたサピア=ウォーフ仮説から、先ごろリベラル派からNOを突きつけられたスティーブン・ピンカーの進化心理学へ。ジョン・ポールが見つけた虐殺文法は日本的な言霊信仰をも思わせる。個の利益と集団の利益、セルフィッシュジーンと種の保存、個人の自由と集団の安定、種の記憶的な何か。

    「人間は目の前の事態に対してより強く感情的に判断を下すのです。人間の行動を生成する判断系統は感情によるラインが多くを占めているのです。理性は殆どの場合感情が為したことを理由づけするだけです」という表現が出てきて不意に胸を射抜かれた。学生時代、自分の言語能力は自分の言い訳のためだけに鍛え上げられてきたと気づいて絶望し、このままではロクな大人にならないと自覚して、他者や社会へと関心領域を広げるきっかけとなったのだが(ちなみに村上春樹が嫌いなのは、当時の青臭い自分を思い出させるから。うじうじした言い訳を延々と聞かされてる気分になる)、感情が理性につねに先行し、自由意志より先に人間が行動を開始してるのなら、学生時代に感じた絶望は、故なしではなかったのかもしれない。

    オーディブルの虐殺器官は今日でおしまい。テロから米国を守るために怒りの矛先を貧しい国の国内に向けさせる陽動作戦は、守る対象を変えれば、容易に米国内を同じ混乱に陥れる。世界から米国を守るのか、米国から世界を守るのか。

  • 先進国が謳う『平和』と発展途上国が夢見る『平等』の隙間に潜むもの。即ち、二つの世界大戦を経験した『近代』の先。未曾有のテロを直に体験した『現代』に潜むテロリズムの在り様。
    ① 9.11同時多発テロが起きた2001年。
    ② リーマンショックを引き金とした世界的金融危機に見舞われた2008年。
    ③ アフリカ系アメリカ人大統領バラク・オバマがノーベル平和賞を受賞した2009年。
    ④ 2012年の『アラブの春』を契機に、イスラム原理主義者が掲げるテロリズムの名目のもと、数多くの難民が欧州に押し寄せるに至った2015年。
    ⑤ 人種差別発言を繰り返すドナルド・トランプが合衆国大統領として異例の当選を果たした2017年。
    そして、⑥ COVID-19パンデミックの渦中にある2020年。
    ――もしも伊藤計劃がこの現代に生きていたとして、2020年以降の近未来に在る『テロリズム』を、彼はどのように予見してみせるだろうか。

  • 主人公の繊細な文体と感性でえがかれる緻密な近未来の設定、感情、成長することが出来ない技術、そして用意された答えと結末。文章の奥に隠されたものを読み解く楽しさも含め、なにをとっても100点満点でした。

  • SFだが技術的な世界観だけが売りの作品ではなく、社会と人間に対する洞察が深い。

    無条件な自由が存在しないという考えを登場させるところなどが特に気に入った。監視社会に対する嫌悪だけじゃなく冷静にトレードオフを見ている、社会に対する成熟した視点がある。

    脳科学・心理学への理解も深い。心のモジュールという概念や感情は価値判断のショートカットという視点はSFの創作ではなく実際の知見に基づいている。
    この点はたとえばジョン・ポールの言葉なんていらないのでは、という問いかけによく表れている。脳の進化は情報のインプットから好ましいかどうかの単純な判断を導くように機能を追加していったと言われている(「なぜ、いま仏教なのか」)。

    人文的な領域でもセリフなどに登場する引用の元ネタが追いきれないほど多い。

    驚くほど教養をたっぷり詰め込んでくるが、たまに衒学的な説明のためのようなセリフが鬱陶しい。Nationalismと戦争と常備軍の話はややくどかった。

    言葉が虐殺の原因になるとのろはルワンダの虐殺を思い浮かべた。あれも虐殺の相当前からラジオなどで敵意を煽る言葉が流れていたという。もちろん現実では言葉だけが要因ではないのだけど。

    ストーリーも構造的にすっきりまとまっている。
    科学の進歩によって人間の動物的な性質が明らかになってしまった中での罪悪感と実存のテーマにきれいに沿っているように思う。
    ジョン・ポールと主人公の関係性が「地獄の黙示録」を連想させるのも面白い。非常に緊張感があってよかった。ただし、ジョン・ポールと対峙しているときの主人公がナイーブな道徳屋に変わってしまうのが不自然に思えた。ずっと話が噛み合っていないし察しが悪すぎる。ここはジョン・ポールがいわば師になっていることの表現なんだろうか。

    登場人物たちが虐殺を人類の集団自殺と結び付けるのも謎だった。生存競争としては当たり前の行動という認識にはならないらしいが、こちらのほうが「普通」の感覚なんだろうか?

  • 硬い文章を期待してたけど、なんか変に理由のわからないところで平仮名が使われていたりして、それが気になって読み進められない。よって、積読。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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