ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (384ページ)

感想・レビュー・書評

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  • SFとかほとんど読んだことがないくらい苦手なくせに、設定が妙に好みだったから、ものは試しにと読んでみた。
    これが、とっても素晴らしい!
    本当に、素晴らしい。この作家さんの文章力に裏打ちされたからこその、作品。もうすごく、描写が上手。
    思春期まさしく反抗期真っ只中の少女たちが、ただ長生きすることを幸福と定義した世界を嫌悪して、死のうとしたこと。それから十三年後、世界は何も変わっていなかった。
    そんな若い3人の女の子がまた可愛くて、ずっとこの3人を見ていたかっただけに物語の成り行きはとてもつらいけれど。
    あと最後の二人の対決シーンが、物語の大きさの割には個人の中に収まり過ぎちゃって不満かなあ、と思ったけれど、「個人」という単位こそがこの物語の主軸になって来るので、そういう意味ではやっぱり正しいのだろうか。

    本当の幸福って、何だろう?
    お金があること、健康であること。幸せな家庭があること。素晴らしい文化に触れていられること。
    ラストは、全てが壊れた。
    それもまた、幸福の一つかもしれない。
    でもきっと、もう人は幸福を感じることも、知ることもないんだろうけど。

  • 人は、魂がないと意志がないと、人ではないのかな?!

    面白く読了しました。脳内で葛藤し選択することが意志とする部分は良くできてるなぁっと。

  • 「うん、ごめんね、ミァハ」
    この一言が印象的な物語だった。キアンもトァンもずっとミァハをひとりにしてしまったことを心の奥底に隠して成長した。そしてミァハもきっと、12歳の時から罪悪感を抱えて生きていたのだろう。

    世界観は非常にキリスト的だと思う。人間は自然の支配者であり、それを抑えつけ管理する義務がある。そしてその人間は原罪を背負った存在という前提。
    だからこそ人間は自らを管理しなければならないし、悪に染まりやすい意思を必要としない行動決定プログラムがあればなお良い。祝福の言葉もそりゃ「祝詞」ではなく「ハレルヤ」になる。そんな流れになるのは必至だったのかもしれない。
    トァンはそれを「外注化」と呼んでいた。

    そんな空気に反して、トァンは自己意識を行動決定の最優先としている。「わたし」をどこまでも大事にし、最後まで優先したからこそ、トァンは敗残者になったのだと思う。

    個人的に、ディストピア小説を書く作家は、誰よりも人類の可能性を信じているのだと思っている。
    トァンが苦痛に感じる世界の「空気」に近いものは現代にもあるし、ハーモニーも決してあり得ない未来ではない。しかし管理社会にもはみ出し者がいるという描写によって、残る希望を描くことを忘れない。
    想像の世界を書いて現代に警鐘を鳴らすことができる文学はすごいなあと語彙力がないながらに思う。
    きっとハーモニーという作品は永遠に近いところまで残るのだろう。

  • 未知のウィルスと戦争により世界が崩壊した大災禍(ザ・メイルストロム)を経験した人類が、
    二度と同じことを起こすまいと体内監視システム、WatchMeを開発した。
    人々は、WatchMeを体内にインストールし、健康状態を常にWatchMeに把握・監視されている。
    WatchMeで異常を検知すると、リンクしている個人用医療薬製薬システム(メディケア)がどんな万能薬でも作ってくれる。
    WatchMeがあることで、全ての病気は消滅し、体型についても管理され、太りすぎもせず、痩せすぎもしない皆が皆同じ世界の話。


    昨今、私たちの存在する現実の世界では、著名人の病気の告白が増えている。
    自分と同世代の著名人が闘病生活をしているのを見て、応援する気持ちと、自分は大丈夫なのだろうかと不安になる人も少なくないはずだ。
    病気にならないこと。それは人々が、お正月のお参りや、流れ星に向かってお祈りするほど願ってやまないことだ。
    では、病気や痛みがない世界、それは果たして幸せなのだろうか。
    WatchMeで身体を監視される世界、それを望むだろうか。答えはNOだ。

    作中の主人公トァンと敵対する、ヴァシロフという人物の言葉が心にひっかかる。
    WatchMeがオフラインになるエリアで、銃撃戦の末に胸を銃で打ち抜かれ、呼吸をするのも難しい中、こんな言葉を言う。
    > 「ものすごく、苦しい。苦しいんだ。ああ、こいつが痛みってヤツなんだな。WatchMeとメディケアめ、人間の身体にこんな感覚があるなんて、よく隠しおおせたもんだ。」

    痛みには様々な痛みがある。心の痛み。体の痛み。
    痛みを感じることで他者の痛みも理解することができる、人に優しくなれる。それが成長だ。
    例えば、上司にきつい言葉をかけられ、傷ついたとしよう。自分が上司になったら同じ言い方はしないと心に誓う。これは痛みを知っているからこそ思うことだ。
    お酒を飲みすぎた翌日、頭痛、胃痛に悩まされる。身体がSOSを出していることを感じ、反省し、身体を休ませる。
    自分自身で管理することで自分自身を知ることができる。
    私たちの身体と心(意識)は常に一心同体であり、生まれてから死ぬまで切り離せないものである。身体と会話をすることはとても大事なことだ。

    作中のヴァシロフがどこまで感じてこの言葉を言ったのか分からないが、
    今まで感じたことのなかった痛みを感じることに幸せを感じているように思う。

    程度の差はあれ、痛みを知ることは身近に溢れている。
    病気や痛みがない世界は、トァンがそう言っているように、まっぴらだ。

    > <i:WatchMeがからだに入るのは、おとなのあかし>
    > そして女子高生のわたしはといえば、おとなになるなんてまっぴらだった。


    作中ではWatchMeをインストールしていない子供や、インストールしていない後進国の人々と、
    インストールしている上でハーモニー・プログラム(調和のとれた意思を脳に設定するシステム)を発動された人々とが共存する世界で、
    その後、どうなるのか、については描かれていない。
    個人的には、インストールしていない人々が技術を制圧して、"人"らしく生きる世界になっていてほしいなと思う。

    今日の医療技術の発展は目覚ましい。
    遠い未来だと思っていたことがもう実現の目の前だったりすることがある。
    WatchMeのような体内管理システムが導入される日が実は近いかもしれない。

  • 電子書籍で読了。
    人体内の健康状態を常に把握し、改善策を処方するシステムが開発され、病や不健康が実質克服された近未来を描いたSF小説。
    ストーリー展開等にはやや疑問を感じるところもあったが、人が自分の身体にかかわることのほぼすべてを外注化した先に何が待っているのか?、人の意識とは何なのか?等といった壮大なテーマが扱われていて、読み応えは充分。
    また、本作発表後間もなく没することになる作者の思いが、作中何度も語られる「永遠」という言葉にこめられているように思われ、感慨深かった。

  • いまから語るのは,
    <declaration:calculation>
    <pls:敗残者の物語>
    <pls:脱走者の物語>
    <eql:つまりわたし>
    </declaration>(冒頭の一文)

    病気がコントロールされた近未来の話.感情のコントロールへと進む世界規模の話に,主人公の身近なプライベートの話がきれいに織込まれている.

  • 初、伊藤計劃。Kindleバーゲンにて購入。本文がetmlという、XML (HTML)ライクな記述がされていて、人の感情がエレメントとして表記されているのが最初違和感があった(あまりに説明的過ぎる)が、なるほど!そういうことか…と。

    2009年に既に鬼籍に入られているということで、テーマが人間の完全なる調和(ハーモニー)、WatchMeによる失病のない世界というのが笑えない。

    SFは、その世界観にどこまで入り込めるか?が面白さの1要素と思うが、最後震撼するところまで含めて大変楽しめました。

  • 映画版を先に観たのだけれども(2015/11/22)、正直あまり良い映画だったとは思わなかった上に、もう完全に内容を忘れていた。読み返すとこんな話だったか……とほとんど覚えていないことに驚く。
    伊藤計劃を読もう読もうと思っていてようやく読めた。文庫版の真っ白い表紙も印象的だが新書?版の少女二人の表紙も内容になかなか合っているのでは無いか。
    いかにもSFらしいSFという感じ(html風の文体も含めて)。本というデッドメディアで読まず電子書籍で読んでしまった。
    虐殺器官も読まねばな。

  • 1ページ目の冒頭に何が書かれているのか、分かる人が読むことで伝わる書籍。
    独特の表現は、職業プログラマーである私にはとても読みやすかったです。
    ただ、内容はとても濃い。
    1周読んだだけでは全体の半分も把握できていないような気がします。
    時間があれば、もう1周読みたい。

  • ほとんど完全な健康が実現された社会。互いが互いを尊重し、思いやる社会。優しい世界。そんな世界に違和感を覚え、国家公務員となった一人の女性が主人公の物語。

    舞台となっている世界は今の社会と比べれば理想郷に近いものだけど、その均質さ、無機質さに若干の恐怖さえ感じられた。ストーリーも面白かった。

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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