日の名残り (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

  • 早川書房 (2001年4月30日発売)
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みんなの感想まとめ

人生の夕暮れ時をテーマにした物語では、老執事スティーブンスが過去を振り返りながらドライブ旅行をする様子が描かれています。彼の回想は、かつての栄光と現在の不器用な姿を対比させ、読者に深い感慨をもたらしま...

感想・レビュー・書評

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  • 老いた執事が昔の輝かしかった人生を振り返る話

    人生の夕暮れ時に日を名残むタイトルがおしゃれ

    人生のピークがとうに過ぎていたとしても

    1日で1番美しいのは夕暮れ時である

  • イギリスの執事スティーブンスのこれまでの回想と現在のドライブ旅行の話。
    回想多めだけど気付いたら読み進んでてびっくりした!想像以上に面白かった!
    スティーブンスはなんて不器用なんだ…
    でも執事という仕事に対して誇りを持って主人に忠誠を尽くしてる感じがカッコよかった!
    品格とはどういうものか。。。哲学だなぁ
    夕方が1日の中で1番いい時間だというセリフが心に残ってる
    読んで良かった!!!!

  • このさー、カズオ・イシグロのだんだん真実が明らかになっていくパターンの話だいすきなんよ。
    最初は「執事」「ドライブ」「休暇」ってキーワードしかないのに、それが、道のりが進むにつれて徐々に肉づけされていって、事情や主人公の心のうちが明らかになるの、ずるすぎてめちゃくちゃ読み耽ってしまう。
    最後の、小さな望みが打ち砕かれて、前を向いて歩きだす展開も最高。
    最初からこうするしかなかった、けど背中を押すものがなかった、それを旅の先で見つけるとか、まじよすぎ。
    読んでよかったありがとう。

  • 実に上手い。古き良き英国の伝統。時代の移り変わり。心の移り変わり。いろいろあるがそれらをすべて含めての小粋な終わり方。均整のとれた上品なフルコースをいただいたような満足感。シェフの繊細さに舌鼓をうちました。

  • 再読。かなり前に読んだのだけれど、もうすっかり内容は忘れていて、ここ数年で「わたしを離さないで」「夜想曲集」を読んだとき、「日の名残り」も読み返したいなと思っていたけれどなかなか読めずにいて。
    最近、イギリスのドラマ「ダウントン・アビー」にすっかりはまりまって、(まだシーズン1までしか見てないけど)で、イギリスお屋敷モノというか、執事モノというかつながりで、そうだ、今こそ「日の名残り」を再読しよう、と。

    で、お屋敷とか貴族とかの話はあんまり関係なかったんだな、と。執事の話で。
    執事という自分の仕事、生き方に誇りを持っている主人公が短い旅をしながらこれまでのことを思い出し、特に事件が起きるわけでもなく。かつて同じお屋敷で女中頭だった女性を訪ねた結末に、わたし、少しはドラマティックな展開があったかな、と、執事の心のうちだけでもなにか変化があったかな、と、思っていたんだけど、あれ、そうでもなかったか、と。
    不思議になるくらい淡々とした感じ。もの足りない気もするんだけど、これがいいのかも、と。ひどく静かで淡々としているところがまた人生を思わせるというか、ラストはなんだか感動したり。
    映画ももう一度見たくなった。

  • ■評価
    ★★★★☆

    ■感想
    ◯執事として職人気質を信条に生きてきた主人公が、ある人に会うために旅に出た道中で、昔を思い返す物語。
    ◯矜持の一方、自分で整理できていないためらいや後悔がジワジワと香ってくるエモい系作品。 余韻が残る系の作品なので、読んで良かったなと感じた。
    ◯書いていることの裏側を想像することが楽しい。建前で進行していく物語の裏側を垣間見えたり、行動の原理を想像するのが面白い小説だった。

  • すごく綺麗で切ない恋愛が見れてよかったと思う。階級意識の終わりが切ない語り口調から感じられた。歴史はもう少し勉強しなければいけない

  • これは第2次世界大戦後からスエズ危機があった頃までに、ある大貴族に仕えていた英国の執事の視点で書かれた、戦争の敗者側のストーリー。

    読みながら、大まかに2つのことが気になっていた。スティーブンスの母親が全く登場しないことと、歴史に弱い私が絶対に見逃しているであろう伏線だ。特にダーリントン卿の友人であるドイツ人や、屋敷を訪れたフランス人やアメリカ人等は、実在した人物に由来しているのかな?と気になった。

    誇り高い執事で尊敬する存在として描かれている父親に反して、一切触れられなかった母親。それはあえてなのだろうと推測できた。
    スティーブンスは父のように仕事人間で、"できる執事"である彼も、恋愛となるとどこか一線を引くような姿勢で不器用になることから、おそらく生涯独身であろうことも、父親の最後の言葉が「自分はいい父親だったか」といった問いかけだったことも、何か父親側に原因があって別れることになったのかもしれないと思わせた。

    歴史に関しては… とにかく時代背景を知った上で読んだほうがいいのは間違いない。
    私は読了後、他の人の考察なんかを調べねばならなかった。(上手く解説してくれている方がたくさんいるので、ここには書かないけれど^^;)
    訳者のあとがきの「スティーブンスが自慢話の中でスエズ危機に一言も触れていないのはなぜなのか… 」という問いかけに、さらにもう一度読まねば…!という気になった。
    同じタイトルで映画化しているようなので、一先ずそれを見て、もう少し勉強してから、再読しようと思う。

    ここ数年、いろいろあって卑屈になり、人生諦めモードになっていたが、この作品に出会ってよかった。(正直もう少し早く読んでおきたかったけど。笑)
    作中で「夕方こそ一日でいちばんいい時間だ」とあるが、スティーブンスも比喩であろうと言っているように、それは人生の夕方ともいえる、老後こそ一番いい時なのだと言っているようで。
    スティーブンス達に比べると私はまだまだこれからという年代なのに、何も悲観的になる必要はないなと思わされた。

    いつかイギリス旅行に行って、スティーブンスが目にしたような景色を見ることを、老後の楽しみにでもしてみよう。

  • 「まるで落とした宝石を探しているかのように」

     この一文が挿し込まれた場面で、まるで自分が登場人物の一人となって窓越しにその光景を覗き込んでいる。そんな錯覚に陥り、一気に作品に引き込まれた。

     本作は、物語の語り手である執事スティーブンが、イギリス貴族に仕えていた頃を自らの全盛期として回想する。自叙伝的な作品だ。

     スティーブンの父もまた執事であり、彼にとっての規範であった。しかしある日、父は年齢による衰えから階段の昇り降りで怪我を負う。主人の命を受け、スティーブンは父に一線を退くように進言する。その後、怪我を負った現場で、父が歩様を確かめながら何度も昇り降りを繰り返す様子を形容したのが上述の一文だ。二度と戻らない輝かしい時代。沈みゆく夕陽に照らされたその姿は、言葉にならない悲哀が胸を打った。

     この物語は、現在と過去を行き来する構成を取っている。現在のスティーブンは主人から勧められてかつての同僚ミス・ケイトンを訪ねる度に出る。その道中で出会う人々や風景を通じて過去の仕事人生を回顧する。すなわち、旅の描写が私生活、回顧部分が職業人としての彼を描いているといえる。

     そのように分けてみると、仕事の回顧はどれも興味深く読めた一報で、旅先でのスティーブンはどこか物足りなさを感じた。理由は、プライベートの彼は年相応のただの老人だからではないか。身なりは整い、立派な車に乗っていることで周囲からは丁寧に扱われる。しかし、素晴らしい景色を紹介してくれた人に対して早とちりし、不機嫌になる。冗談は空回りし、他社との会話もどこか噛み合わない。執事としての誇り高さは、日常生活の中ではときに鼻につく居丈高さとして現れる。

    そんな彼にとって、気兼ねなく言葉を交わせるミス・ケントンは彼にとり特別な存在だったことが分かる。二人が結ばれなかったのは、スティーブンの人間性を思えば必然だったが、それでも彼女の選択が少し違っていたら、別の結末があったのではないか。彼の思い出の中のほとんどに彼女の姿があること、また誇らしい記憶の中に痛みと逡巡を残すことを思うとその可能性に思いを馳せてしまう。

     スティーブンをどう受け止めるかは、読者の人生観によって異なるだろう。私自身、彼と似たような部分を持つため、強く共感しながらもどこか気恥ずかしさを覚える。現代では、仕事と私生活を明確に分ける価値観が主流である。したがって、スティーブンのような生き方は古臭く、時代遅れと笑われるかもしれない。けれど、同じ職業についていた父を尊敬し、信念と誇りをもって職務に人生を捧げる。それを回顧録として語ることができる生き方は、私にはとても眩しく、羨ましく思える。

     何より、スティーブンにとって人生の「日」は傾きつつあるとはいえ、その終わりはまだきていない。

  • 2回目読了。
    1度目同様、とてもいい本だと心から思える。他人に本を薦めることは、ほとんどないが、これは読むべきだと、そう思う。

  • ノーベル文学賞受賞をきっかけに読む。もともとの題名「The Remains of the Day」の方が中身をよく表している。最後はそのremainsから飛び出そうとする主人公を描いており、綺麗な終わり方だった。

  • ・昭和の、家族を大切にしないビジネスマンみたい。主人公には仕事しかない。
    ・自分の「偉大さ」の証明を他人に頼るのはよくない。
    ・父親に対しての薄情さには、家族面での恨みもあったのかも。他の人のレビューを読んでそう思った。

  • ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの作品。初版1989年。
    イギリス貴族の邸宅で働く執事スティーブンスの語りで進行する文体は、紳士的で品格ある雰囲気がとても良い。
    盛り上がりのない淡々とした内容だったが、世界観が興味深くて一気に読めた。

    短い旅に出た老執事が、美しい田園風景のなか古き佳き時代を回想する。長年仕えた卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。遠い思い出は輝きながら胸のなかで生き続ける。失われゆく伝統的英国を描く英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

  • おもしろい!
    誰かの語り口調でこれほど深い洞察ができることがすごい

  • めちゃくちゃ良かった。クライマックスも終わり方もいい。一人称だからというのはあるけど、主人公の回顧と思考がふわふわと彷徨う流れが面白い。瞬間瞬間、読みながらこちらも思考を刺激される。不器用で生真面目な思考を第三者的に俯瞰視する面白さがある。回顧なのでじわじわと様々な側面が浮かび上がる。クライマックスの出来事は主人公の一貫した落ち着いたトーンがむしろ劇的にするよりも盛り上げてる。小説は他人の人生を体験できるツールというがまさにそれ。思考の流れがホント面白かった。不快感ゼロで徹頭徹尾読みやすかった。好き。

  • はじめてイシグロカズオを読んだ。日本人ちゃうな、イギリス文学って感じがしたわ、知らんけど。執事ってどんな仕事なんか初めて知った。なるほど、召使いの親分やったんや。

    「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい」

    ほんまほんま。僕も肩の力抜いて、人生の夕方を楽しまんとあかんな!

  • 今と回顧を織り交ぜながらの展開が良い。
    スティーブンスの淡い恋…真面目すぎる、堅すぎる。もっと自分の気持ちに素直になれなかったのだろうか…

  • 誰しも「あのようにしておけば良かった」と後悔をすることは少なからずあると思います。ですが過去を振り返るだけではなく、未来に後悔をしないように今を生きることも大切だとこの本から学びました。 作中で「夕方が一日で一番良い時間」と言っているように、夕方は落ち着いたり、ちょっと悲しくなったり、そこからまた頑張ろうと思える時間帯で、そこがこの本の指す人生と似ているので【日の名残り】というタイトルにしたのかなと個人的に思いました。

  • イギリスの歴史ある大豪邸に住むアメリカ人の執事を努める主人公が、休暇を得てイギリス国内を車で旅行する中、道中の出会いや景色に触れながら、かつて英国紳士の執事を努めていた頃を思い出す。主人公が語り手となって当時の出来事や給仕をしていた人たちとのやり取りや主人公の心情が描き出される。執事としての綺麗な言葉遣いと言い回し、あくまで主人の手足となるべきという執事たる役職に徹する姿勢、にも係わらず人間らしい感情や想いが、イギリスの田園風景や邸宅の様子とともに、とても丁寧に描かれている。
    人生は上手くいくわけじゃない。「あの時、ああしていれば、もっとより良い人生があったかもしれない」と思わずにはいられない時もある。それでも、今の置かれた状況とこれまでの自分を受け入れ、前に進む。そんな登場人物たちの想いに、生きる時代は違うけど、感情移入した。切ない気分になるけど、とても美しい、素晴らしい小説でした。

  • 慇懃無礼で職業意識の高い昔ながらの執事の最後の輝きか。「わたしを離さないで」と似た、ハイコンテクストな閉鎖社会における親密で丁寧な話しぶりに、ある種のノスタルジーが漂う。失われてしまった大切な何か。品格とか偉大さとか。が、本人が真面目に語るほど、そこにおかしみが紛れ込んで、思わずクスリとしてしまう。

    執事のミスター・スティーブンスと女中頭のミス・ケントンのやりとりの中に、あてこすり、仄めかし、嫌味、上から目線のマウンティング、隠しきれないプライドと偏見が見事に凝縮されていて、これがブリカスしぐさか。なるほど。ストレートに言わないところが京都人っぽいなと妙に納得する。これを日系人のカズオ・イシグロが書いたことに感服するとともに、でも、アメリカ的なサラダボウル社会では、もっとストレートでわかりやすい物言いをしないと誤解され、場合によっては命が危険にさらされるリスクが高い。だから、いまではシンプルな表現を心がけるグロービッシュのような発想が主流になりつつあるわけで、やっぱりノスタルジーを感じさせるのは理由がないわけではないんだなあと。

    チャーチルが出てくる前の英国の対独宥和政策は弱腰とみなされがちだけど、元をたどれば、ヴェルサイユ条約のドイツに対する過酷な締めつけ(フランスが強硬に主張した)に反対する英国良識派(≒守旧派)の、きわめて穏当な主張だったのだとすれば、フランスがある意味自業自得だったのは別として、英国も時代に対する嗅覚が鈍ったと言わざるを得ず、品格や名誉、偉大さを持ち上げれば持ち上げるほど、そこにノスタルジーのにおいがしてしまうのは、致し方ないことかもしれない。

    自分では内に秘めたプライドを誇らしく思ってるのだろうけど、言葉の節々からその思い上がりはダダ漏れで、それが周囲から気づかれていることにさえ本人には自覚がないのだから、なんというおめでたい人物なのだろう。

    直接言わずに相手に忖度させるのが当然と言わんばかりの上から目線に、こういうハイコンテクストなコミュニケーションは閉じられた世界の中でしか通用しないし、自分とは違う他者の存在を意識しないで済んだ古き良き世界に閉じこもっている人には、誰もが自分の思ったことを口にする民主的な世の中は目を背けたくなるような苦々しいものにしか感じられないのかもしれないと思う。

    自分たちの世代の執事が旧世代の執事の古臭い価値観を乗り越えていったように、自分たちが誇りにしてきた職業倫理もまた、新しい世代からはカビの生えた旧弊にしか見えないのは歴史の必然で、自ら退場して後進に道を譲るタイミングを見誤りたくはないものだと強く願う。

    それにしても、他人の心が読めているつもりでまったく読めていない、どうしようもない朴念仁のミスター・スティーブンスにイライラする。

    まったく別のところから沸き起こった破壊的イノベーションによって、自分たちがいた業界そのものが淘汰されようとしていることに気づかず(あるいは意図的に目をつむり)、長年の蓄積によって肥大化した尊大な自尊心をもう隠そうともしない、消えゆく業界に過剰適応した男の悲しい末路。それは残り香(remains:残り物、残滓、遺跡、遺体)のようにかぐわしく、かつての栄光に浸るにはうってつけだが、そこに現在進行形のダイナミズムはない。すべて終わった話で、昔の記憶ほど美しく上書きされるものだ。

    「日の名残り」は今日がラスト。「卿は自ら選択した。私は(そんな卿を)信じただけだった」とミスター・スティーブンスが振り返るとき、そこには自分の意思(≒自由)を誰かに委ね自らは思考停止してしまった人間の悔悟と諦めが込められている。選択には結果を引き受ける覚悟と責任が生じること。自分に選択の余地がなかったわけではなく、その覚悟がなかったことに気づいてしまったこと。自ら依って立ってきたはずの足下の地盤がボロボロと崩れ去る経験を受け止めるには、人生の黄昏時は遅すぎたのかもしれない。自分を愛してくれたミス・ケントンも、自分が愛した職業の誇りも、最後の最後に、ミスター・スティーブンスの指のあいだからこぼれ落ちてしまった。それでも夕暮れ時が、この世でいちばん美しい。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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