日の名残り (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

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  • 実に上手い。古き良き英国の伝統。時代の移り変わり。心の移り変わり。いろいろあるがそれらをすべて含めての小粋な終わり方。均整のとれた上品なフルコースをいただいたような満足感。シェフの繊細さに舌鼓をうちました。

  • このさー、カズオ・イシグロのだんだん真実が明らかになっていくパターンの話だいすきなんよ。
    最初は「執事」「ドライブ」「休暇」ってキーワードしかないのに、それが、道のりが進むにつれて徐々に肉づけされていって、事情や主人公の心のうちが明らかになるの、ずるすぎてめちゃくちゃ読み耽ってしまう。
    最後の、小さな望みが打ち砕かれて、前を向いて歩きだす展開も最高。
    最初からこうするしかなかった、けど背中を押すものがなかった、それを旅の先で見つけるとか、まじよすぎ。
    読んでよかったありがとう。

  • 再読。かなり前に読んだのだけれど、もうすっかり内容は忘れていて、ここ数年で「わたしを離さないで」「夜想曲集」を読んだとき、「日の名残り」も読み返したいなと思っていたけれどなかなか読めずにいて。
    最近、イギリスのドラマ「ダウントン・アビー」にすっかりはまりまって、(まだシーズン1までしか見てないけど)で、イギリスお屋敷モノというか、執事モノというかつながりで、そうだ、今こそ「日の名残り」を再読しよう、と。

    で、お屋敷とか貴族とかの話はあんまり関係なかったんだな、と。執事の話で。
    執事という自分の仕事、生き方に誇りを持っている主人公が短い旅をしながらこれまでのことを思い出し、特に事件が起きるわけでもなく。かつて同じお屋敷で女中頭だった女性を訪ねた結末に、わたし、少しはドラマティックな展開があったかな、と、執事の心のうちだけでもなにか変化があったかな、と、思っていたんだけど、あれ、そうでもなかったか、と。
    不思議になるくらい淡々とした感じ。もの足りない気もするんだけど、これがいいのかも、と。ひどく静かで淡々としているところがまた人生を思わせるというか、ラストはなんだか感動したり。
    映画ももう一度見たくなった。

  • すごく綺麗で切ない恋愛が見れてよかったと思う。階級意識の終わりが切ない語り口調から感じられた。歴史はもう少し勉強しなければいけない

  • これは第2次世界大戦後からスエズ危機があった頃までに、ある大貴族に仕えていた英国の執事の視点で書かれた、戦争の敗者側のストーリー。

    読みながら、大まかに2つのことが気になっていた。スティーブンスの母親が全く登場しないことと、歴史に弱い私が絶対に見逃しているであろう伏線だ。特にダーリントン卿の友人であるドイツ人や、屋敷を訪れたフランス人やアメリカ人等は、実在した人物に由来しているのかな?と気になった。

    誇り高い執事で尊敬する存在として描かれている父親に反して、一切触れられなかった母親。それはあえてなのだろうと推測できた。
    スティーブンスは父のように仕事人間で、"できる執事"である彼も、恋愛となるとどこか一線を引くような姿勢で不器用になることから、おそらく生涯独身であろうことも、父親の最後の言葉が「自分はいい父親だったか」といった問いかけだったことも、何か父親側に原因があって別れることになったのかもしれないと思わせた。

    歴史に関しては… とにかく時代背景を知った上で読んだほうがいいのは間違いない。
    私は読了後、他の人の考察なんかを調べねばならなかった。(上手く解説してくれている方がたくさんいるので、ここには書かないけれど^^;)
    訳者のあとがきの「スティーブンスが自慢話の中でスエズ危機に一言も触れていないのはなぜなのか… 」という問いかけに、さらにもう一度読まねば…!という気になった。
    同じタイトルで映画化しているようなので、一先ずそれを見て、もう少し勉強してから、再読しようと思う。

    ここ数年、いろいろあって卑屈になり、人生諦めモードになっていたが、この作品に出会ってよかった。(正直もう少し早く読んでおきたかったけど。笑)
    作中で「夕方こそ一日でいちばんいい時間だ」とあるが、スティーブンスも比喩であろうと言っているように、それは人生の夕方ともいえる、老後こそ一番いい時なのだと言っているようで。
    スティーブンス達に比べると私はまだまだこれからという年代なのに、何も悲観的になる必要はないなと思わされた。

    いつかイギリス旅行に行って、スティーブンスが目にしたような景色を見ることを、老後の楽しみにでもしてみよう。

  • 2回目読了。
    1度目同様、とてもいい本だと心から思える。他人に本を薦めることは、ほとんどないが、これは読むべきだと、そう思う。

  • ノーベル文学賞受賞をきっかけに読む。もともとの題名「The Remains of the Day」の方が中身をよく表している。最後はそのremainsから飛び出そうとする主人公を描いており、綺麗な終わり方だった。

  • はじめてイシグロカズオを読んだ。日本人ちゃうな、イギリス文学って感じがしたわ、知らんけど。執事ってどんな仕事なんか初めて知った。なるほど、召使いの親分やったんや。

    「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい」

    ほんまほんま。僕も肩の力抜いて、人生の夕方を楽しまんとあかんな!

  • 今と回顧を織り交ぜながらの展開が良い。
    スティーブンスの淡い恋…真面目すぎる、堅すぎる。もっと自分の気持ちに素直になれなかったのだろうか…

  • 誰しも「あのようにしておけば良かった」と後悔をすることは少なからずあると思います。ですが過去を振り返るだけではなく、未来に後悔をしないように今を生きることも大切だとこの本から学びました。 作中で「夕方が一日で一番良い時間」と言っているように、夕方は落ち着いたり、ちょっと悲しくなったり、そこからまた頑張ろうと思える時間帯で、そこがこの本の指す人生と似ているので【日の名残り】というタイトルにしたのかなと個人的に思いました。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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